バイオプラスチックと従来プラスチックの物性の違いと適用分野【業界技術者】

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バイオプラスチックとは

バイオプラスチックは、再生可能資源を原料とする、もしくは生分解性を備えるプラスチックの総称です。
バイオマス由来であっても生分解性を持たないもの、生分解性であっても石油由来のものなど、複数の軸で定義されます。

定義と分類

国際標準化機構ISOの定義では、原料の起源と生分解性の有無を二軸で整理します。
1. バイオマス由来・非生分解性
2. バイオマス由来・生分解性
3. 石油由来・生分解性
4. 石油由来・非生分解性(従来プラスチック)
このうち1〜3がバイオプラスチックに該当します。

代表的な樹脂

バイオPE、バイオPET、バイオPAなどはバイオマス由来で従来材と同等の物性を持つグレードです。
一方、ポリ乳酸PLA、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンサクシネートPBSなどは生分解性グレードとして食品包装用途を中心に採用が進んでいます。

従来プラスチックの特徴

従来プラスチックは石油由来モノマーを重合した非生分解性樹脂です。
ポリプロピレンPP、ポリエチレンPE、ポリスチレンPS、ポリエチレンテレフタレートPETなどが大量生産され、コスト、物性、加工技術が確立しています。
長年の実績があるため、設計者はデータベースと加工ガイドラインを容易に入手できます。

物性比較

機械的強度

従来プラスチックは高分子量制御や添加剤により、高靱性、耐衝撃性を実現しています。
PLAは引張強度や剛性はPPやPETに匹敵しますが、衝撃強度が低く脆性破壊しやすいです。
バイオPEやバイオPETはベースポリマーが同じため、機械的強度は従来材と同等です。

熱特性

ガラス転移温度Tgが低いPLAは60℃程度で軟化し始めるため、高温域での寸法安定性が課題です。
一方、バイオPAは耐熱グレードが多く、140℃以上での連続使用が可能です。
従来プラスチックはPPで100℃付近、PETで120℃付近が目安となり、実績に基づいた耐熱設計が容易です。

バリア性

PLAは酸素透過度がPETより高く、食品包装での酸化防止性能が不足しやすいです。
バイオPETは従来PETと同様のガスバリア性を示し、炭酸飲料ボトルに利用されています。
バイオPAは水分バリアが課題ですが、共重合やMXD6ブレンドにより改善事例があります。

加工性とリサイクル

射出成形ではPLAは結晶化速度が遅く、成形サイクルが延びがちです。
押出成形やブロー成形は樹脂の熱安定性や溶融粘度が課題で、専用スクリューや温調が求められます。
従来プラスチックはインフラが成熟し、マテリアルリサイクルのガイドラインも整備されています。
バイオプラスチックのリサイクルは混入判別が難しく、ケミカルリサイクル技術開発が進行中です。

適用分野の最新動向

包装材

市場規模が最も大きい分野です。
単層フィルムではPLAやPBSが伸長し、ストローやカトラリー向けに成形グレードが投入されています。
多層フィルムではPBATをシーラント層に、バイオPETをバリア層に組み合わせた構成が採用されています。

自動車部品

内装パネルやシートファブリックにバイオPET繊維が使用され、CO2排出削減クレジットの算定対象となっています。
バイオPAは金属代替のエンジン周辺部品に展開され、耐薬品性と高温強度を確保しています。
衝撃強度が課題のPLAは自然繊維強化複合材としてボンネットインシュレーターに実用化されました。

電子機器

ハウジング部材としてバイオPCやバイオABSが登場し、UL認証を取得するグレードも増えています。
難燃性はホスファー系添加剤で確保しつつ、リサイクル時の臭素系難燃剤混在を回避できる点が評価されています。

導入時の設計・評価ポイント

1. 長期信頼性試験の実施
生分解性材料は高温高湿環境で加水分解が進行するため、従来JIS試験に加えて熱水浸漬試験を推奨します。
2. 二酸化炭素排出量LCA
単にバイオマス含有であっても、遠隔地輸送や副生成物処理でCO2排出が増える場合があります。
設計段階で製品単位のLCAを行い、カーボンフットプリントを可視化することが重要です。
3. 成形ラインの改修コスト
低熱安定性グレードは樹脂滞留で分解が進むため、スクリュー洗浄工程を増設する必要があります。
投資額と製品単価を総合判断することが必須です。

今後の展望と課題

化石資源依存からの脱却という社会要請を背景に、市場は年率20%近い成長が予測されています。
しかし、高価格、リサイクルインフラ、物性ギャップという三つの壁が残ります。
糖資源以外の非可食バイオマスやCO2直接利用モノマーの実用化がコスト低減鍵になる見通しです。
また、赤外分光や蛍光トレーサーによる樹脂判別技術が普及すれば、マテリアルリサイクル率が向上します。
業界技術者は、既存材料とのハイブリッド設計や機能性添加剤の最適化を通じて、バイオプラスチックの弱点を補完しながらポートフォリオを拡充する姿勢が求められます。
物性データの公開と共通規格の整備が進むことで、バイオプラスチックは単なる環境対応材料から、性能と持続可能性を両立する主流材料へ移行していくと考えられます。

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