低VOC塗料の選び方とその市場への適用方法【新人担当者必見】

低VOC塗料とは？基礎知識を押さえよう

低VOC塗料とは、揮発性有機化合物(VOC：Volatile Organic Compounds)の含有量を大幅に抑えた塗料を指します。
VOCは塗料において溶剤や添加剤として利用されてきましたが、大気中に揮発して人体や環境に悪影響を与えることから、その使用を制限する動きが世界的に強まっています。
低VOC塗料の登場は、塗料業界の環境配慮と技術革新の証であり、今や多くの現場で採用されています。

VOC規制と市場の動向

日本でもVOC排出規制が進んでおり、工場ごとにVOC排出量が管理されています。
建築や自動車分野では、これに対応した低VOC塗料への切り替え需要が急拡大しています。
顧客からの環境配慮の要望、SDGsといった大きな潮流の中、低VOC塗料は今後さらに需要が高まることが予測されています。

さらに、低VOC塗料は資格試験の出題範囲にも組み込まれたり、公共工事の入札条件とされるケースも増え、社会全体が低VOC塗料を基準とする方向に進んでいます。

低VOC塗料の主な種類

低VOC塗料にはいくつかのタイプがあります。

水性塗料

水性塗料は、水を主成分としVOCの含有量が極めて低いのが特長です。
屋内外の建築現場で幅広く採用されており、臭いが少なく作業者にも優しい点が魅力です。
一方で、乾燥時間や塗膜の耐久性で従来の溶剤系塗料とは異なる注意点もあります。

高固形分塗料

高固形分塗料は、塗料中の溶剤比率を極力抑え、固形成分を最大限増やすことでVOC排出を抑えています。
とくに金属部品や車体への工業用途で多く採用されています。

粉体塗料

粉体塗料は溶剤を一切使用せず、塗料を粉末状で施工する方式です。
塗装後に焼き付けて塗膜を形成します。
VOCがゼロに近いため、もっとも環境負荷が小さい塗装方法として注目されています。

選び方のポイント：失敗しないためのチェックリスト

新人担当者として、低VOC塗料を選ぶ際に見落としがちなポイントを押さえておきましょう。

1. 適用現場・用途を明確にする

屋外か屋内か、金属、木材、コンクリートなど下地の素材により最適な塗料が異なります。
用途ごとの製品仕様を必ず確認しましょう。

2. VOC含有量のチェック

塗料のカタログや仕様書には必ずVOC含有量が明記されています。
「低VOC」「超低VOC」などの基準を数字で比較し、発注先の求める規制値を満たしているか確認しましょう。

3. 仕上がりや耐久性、施工性

低VOCでも期待する仕上がり（光沢、色の鮮やかさ、手触り）や塗膜の強度が満たされているか、実際のサンプルや試験片で確認すると安心です。
また、現場での乾燥時間やローラー・スプレーでの塗りやすさも、作業効率に大きく関わります。

4. コストパフォーマンス

低VOC塗料は一般的に従来品よりコストが高めです。
しかし、省力化や廃棄コストの低減、現場環境の改善などのメリットと、初期コストをトータルで比較する視点が重要です。

5. 環境マーク・証明書の有無

エコマークやグリーン購入法適合商品など、第三者認証マークの有無も注目ポイントです。
公共工事や大手ゼネコンなどの場合、認証品指定が増えています。

低VOC塗料の市場への適用方法

導入が初めての場合、どう現場展開すれば失敗が少ないかを考えましょう。

施主やクライアントへの提案

顧客向けには「環境負荷低減」「SDGs対応」「作業者や近隣の健康配慮」という観点で説明しましょう。
また低臭気や安全性、作業現場の快適性向上まで具体的なメリットを示すと、理解が得やすいです。

社内スタッフへの教育と共有

塗装工程や材料選定に関わる現場担当者へ、新しい材料や施工方法について研修会やOJTを実施しましょう。
実際のデモ施工やメーカー担当者によるフォローアップが効果的です。

実地試験と適合性確認

いきなり本番導入するのではなく、小規模に試し塗り・模擬現場でのテストを行い、仕上がりや施工性、安全性など十分に検証します。
また、顧客立ち会いのもとで説明や質疑応答の機会を設けると信頼度が向上します。

記録と報告書作成

導入経緯や材料選定理由、実地試験の結果などを記録として残し、クライアントへの報告書を作成すると、次回以降の提案や社内転用にも役立ちます。

低VOC塗料でよくある疑問とその解決方法

低VOC塗料導入にあたって、よくある疑問をまとめておきます。

耐久性や仕上がりは従来品と遜色ないのか？

最新の水性や高固形分型は、技術進歩により溶剤型とほぼ遜色ない性能となっています。
ただし全体の塗装仕様や下地処理、塗装工程を守ることが大前提です。

コストが高いので予算が心配

導入初期はコスト高ですが、現場環境改善によるトラブル減や廃液処理コスト削減、労働災害のリスク低減など中長期でのコストダウン効果にも着目しましょう。

特別な機材や管理が必要か？

基本的には従来の塗装工程・管理体制の応用で対応可能です。
ただし水性塗料の場合、洗浄や管理に水を多く使う、粉体塗料は専用機器が必要など適材適所の対応が求められます。

低VOC塗料導入を成功させるための提案書サンプル

実務で提案書を作成する際のポイントを簡単に示します。

1. 現状課題の整理

現場で発生している「においがきつい」「シックハウス対策」「廃液処理の手間」などの課題を一覧化しましょう。

2. 低VOC塗料による効果・メリットの提示

VOC排出量の定量的削減、作業者・近隣への健康配慮、工程短縮や廃棄コスト削減といった点を、実績データや試験結果のグラフなどを添えて提示します。

3. 導入スケジュールとサポート体制の明記

小規模試験→本採用というステップや、メーカーサポート体制、施工教育プログラムなどを具体的に記載しましょう。

4. コストと投資対効果の比較

従来塗料と低VOC塗料で数値比較し、イニシャルコストだけでなく廃棄物処理や再作業の低減などトータルコストでの優位性を示しましょう。

まとめ：新人担当者こそ「低VOC塗料の実践者」に！

低VOC塗料は、単なる「環境配慮型材料」にとどまらず、安全・健康・現場効率・企業価値すべての向上につながります。
新人担当者は、「なぜ、今低VOCが必要か」「どんな材料があるのか」「どう現場で成功させるか」の３つをしっかり押さえ、積極的に提案・導入を進めていくことが成長の近道です。
今後の塗料・建設業界において、低VOCの知識と経験は必ずあなたの強い武器となります。

低VOC塗料の導入で疑問や不安があれば、躊躇せずにメーカーや先輩担当者へ相談しましょう。
一歩踏み出し、安心・安全で価値ある現場を実現してください。