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リグニンはセルロース、ヘミセルロースと並ぶ木質バイオマスの主要構成成分です。
芳香族高分子であり、メトキシフェニルプロパンユニットが複雑に架橋しています。
木質組織に硬さと耐水性を与え、植物が立体構造を維持するために不可欠です。
年間約5,000万トンがパルプ産業などで副生成されますが、そのほとんどが低付加価値の燃料として焼却されています。
リグニンは芳香環を豊富に含むため、従来は高機能な化学品原料として期待されてきました。
しかし、芳香環は高い熱安定性を持ち、燃焼過程ではすすやタールを生じやすく、バイオ燃料として利用する際の障壁となります。
脱アロマ化技術によって芳香環を飽和炭化水素や脂肪族化合物へ転換できれば、燃料としての発熱量や着火性が向上し、排出ガスの浄化も容易になります。
これにより木質バイオ燃料の高効率化と低環境負荷化が同時に達成できると期待されています。
HDOは水素ガスと触媒を用いて芳香環の水素化と酸素除去を同時に進めるプロセスです。
リグニンはフェノール性水酸基やエーテル結合を多数有し、これらを還元的に切断することで脱アロマ化が進行します。
高温高圧条件(200–350℃、5–10 MPa H₂)が一般的ですが、近年は常圧または低圧で駆動可能な触媒も報告されています。
イソプロパノールやギ酸など水素供与性溶媒を反応場に用いることで、外部水素を削減しつつ脱アロマ化が可能です。
溶媒自身が脱水素化されて水素を提供し、同時に副生物として有用なアセトンやCO₂が得られるケースもあります。
リグニン分解菌が生成するラッカーゼやペルオキシダーゼを利用してリグニンを低分子化し、その後脱アロマ化還元酵素で芳香環を開環・水素化する研究が進んでいます。
温和な条件で進行するためエネルギーコストが低い一方、反応速度や酵素耐久性が課題です。
Ru/C, Ru/Al₂O₃は高い芳香環水素化能と脱酸素選択性を示します。
特にRu/Cは芳香環→シクロヘキサン骨格への完全水素化を短時間で達成でき、C–O結合の選択的切断にも優れています。
非貴金属で価格が安く、工業規模へのスケールアップに有利です。
Ni/SiO₂やNi-Mo系触媒は水素化能を維持しつつ脱酸素反応も促進しますが、コーク生成を抑えるための担体改質が不可欠です。
イオン液体は高い溶解能でリグニンを分散・可溶化し、触媒へのアクセス性を向上させます。
さらにプロトン性イオン液体はBrønsted酸としてC–O結合の開裂を助け、低温での脱アロマ化効率を高めます。
1. 触媒の長寿命化
リグニン由来の不飽和化合物や硫黄分による触媒被毒が問題です。
コアシェル構造や自己再生型触媒が提案されています。
2. 反応エネルギーの削減
水素圧縮や加熱に要するエネルギーコストが依然高く、プロセス全体のCO₂削減効果を相殺する恐れがあります。
3. 収率と選択性の最適化
完全脱アロマ化を狙うと過剰水素化で軽質ガスへ分解する損失が増えます。
部分脱アロマ化と分子量制御のバランスが重要です。
リグニンリッチな熱分解油は粘性と酸素含有率が高いことが課題です。
脱アロマ化処理により酸価が低下し、流動性が向上するため、直接燃焼時の霧化性能が改善します。
ディーゼル燃料との混合限界が10 vol%から30 vol%へ拡大した事例も報告されています。
脱アロマ化リグニンは高密度のシクロヘキサン系化合物を含み、可逆的脱水素化によって水素を放出できます。
再生可能水素の貯蔵輸送媒体として設計すれば、木質バイオマスと水素エネルギーの統合システムが実現可能です。
乾留炭化処理後に選択的脱アロマ化を施すことで、酸素官能基が除去され、C/H比が化石燃料に近づきます。
これによりペレット化しても着火性と燃焼効率が向上し、ボイラーの燃料転換が容易になります。
触媒コストと水素供給コストが経済性の鍵を握ります。
ニッケル系触媒とオンサイト水電解によるグリーン水素を組み合わせた場合、原油換算で60–70 USD/bblの競争力が試算されています。
ライフサイクルCO₂排出は従来の木質燃料比で20–30%削減、化石軽油比で70%以上削減できるとの報告があります。
1. バイオリファイナリー統合
セルロース由来のエタノール製造工程に脱アロマ化リグニン処理を組み込み、副産水素の有効活用が検討されています。
2. AI駆動触媒設計
機械学習による触媒スクリーニングで、高活性かつ低貴金属量の触媒候補が急速に見つかりつつあります。
3. カーボンニュートラル政策との連携
欧州のRED IIIや日本のGXロードマップで、バイオ燃料由来の化学品にもクレジットを付与する動きがあり、市場拡大が期待されます。
リグニンの脱アロマ化技術は、木質バイオ燃料の発熱量向上、着火性改善、環境負荷低減を同時に実現する鍵技術です。
水素化脱酸素反応を中心に触媒開発が進展し、経済性の面でも化石燃料に迫るポテンシャルが示されています。
今後は触媒耐久性の向上とプロセス省エネルギー化を両立させ、バイオリファイナリー全体の資源循環効率を高める取り組みが求められます。
政策支援と技術革新が連動すれば、リグニン資源はカーボンニュートラル社会を支える新たなエネルギー・化学原料として確立されるでしょう。

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