黒もち米粉の栄養価を保持する製粉方法

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黒もち米粉の特徴と栄養価

黒もち米は外皮にアントシアニン系色素を多く含むため、強い抗酸化作用が期待できます。
さらに胚芽部分にはビタミンE、B群、亜鉛・鉄などのミネラル、そして食物繊維が豊富です。
しかし一般的な精米や高温製粉の工程で外皮や胚芽が削られると、こうした栄養素は著しく減少します。
そこで重要になるのが、栄養価を保持したまま粉に仕上げる製粉方法です。

栄養を失う主な要因

熱による酸化と分解

アントシアニンやビタミンEは60℃を超える環境で急速に劣化します。
回転数の高い金属ミルでは局所的に100℃近くまで温度が上昇するため、黒もち米の色調が褪せるだけでなく抗酸化力も低下します。

外皮・胚芽の除去

精米を行うと口当たりは良くなりますが、栄養価の大半が取り除かれます。
完全玄米のまま粉砕する「全粒製粉」が必須です。

酸素・光への曝露

微粉にするほど表面積が増え、空気中の酸素や光と接触しやすくなります。
製粉後の酸化を抑える工程管理もポイントになります。

栄養価を保持する前処理

選別と洗浄

割れ粒や異物を取り除くことで粉砕ムラが減り、余分な摩擦熱を防ぎます。
洗浄後は表面水分を20%以下まで乾燥させ、カビ発生と粉砕抵抗の増加を抑えます。

低温乾燥

遠赤外線乾燥や送風乾燥で40℃以下を維持すると、ビタミンとポリフェノールの損失を最小化できます。
急速高温乾燥はひび割れを引き起こし、粉砕時の熱発生量も増えるため避けます。

低温石臼製粉

石臼は回転数が1分間に90回前後と低速で、摩擦熱が40℃以下に抑えられます。
粒子が潰されるように粉砕されるため、でんぷんの損傷率も低く、もち米特有の粘性が保たれます。
ただし処理能力は金属ミルに比べて劣るため、歩留まりを確保するには複数台並列運転が望まれます。

石臼製粉のポイント

・臼の溝深さを定期調整し、外皮を均一に削らず残す。
・投入量を増やしすぎると摩擦熱が上がるため1時間あたり5kg以下を目安に設定。
・臼の表面温度を赤外線センサーで監視し、45℃に達したら即休止する。

冷却機構付きハンマーミル

産業用途で処理量を確保したい場合は、ハンマーミルに冷却ジャケットや窒素スプレーを組み込みます。
入口温度を0~5℃に維持すると、出口でも40℃を超えません。
粉砕速度が速いため粒子径40~80μmの微粉に仕上がり、菓子やパンへの練り込み性が向上します。

窒素スプレーの利点

・酸素濃度を1%以下に下げ、アントシアニンの酸化を防止。
・水分を急速凍結させ、脆性破砕を促進して均一な粒径になる。

超低温(クライオ)粉砕

液体窒素を用いて‐196℃まで急冷し、ガラス化した米粒を衝撃破砕します。
熱の発生がほぼゼロで、アントシアニン保持率は95%前後と報告されています。
コストが高い反面、機能性食品や化粧品原料など高付加価値用途に適します。

湿式製粉とスプレードライ

玄米を水に浸漬後、ウェットミルでペースト状にし、そのままスプレードライで瞬間乾燥させる方法です。
粒子内まで均一に水分が含まれているため摩擦熱が低く、乾燥時間も数秒と短いので栄養劣化が最小です。
得られた粉は球状顆粒になり流動性が高く、大規模生産向きです。

湿式工程の注意点

・浸漬は8時間以内、28℃以下で行い雑菌繁殖を抑える。
・pHを5.5~6.0に調整するとアントシアニンが安定。
・スプレードライ時の出口温度を70℃以下に設定。

製粉後の酸化防止策

不活性ガス置換包装

窒素または炭酸ガスでパッケージ内酸素濃度を0.5%以下にすると、12ヶ月間の保存でも色調変化は2%以内に収まります。

遮光性フィルム

アントシアニンは紫外線だけでなく可視光にも反応します。
アルミ蒸着や黒色フィルムを使い、透過率0.1%以下の袋に充填します。

水分管理

含水率12%以下であればカビ発生と酵素反応が抑えられます。
シリカゲルを同封し、温度25℃・湿度60%以下の倉庫で保管することが推奨されます。

品質評価とモニタリング

・DPPHラジカル消去能試験で抗酸化力を定期測定し、10%以上の低下でロット再検査。
・色差計でL*a*b*値を追跡し、a*値(赤み)の減少率を指標にする。
・粒度分布をレーザー回折で管理し、粗粉と微粉のブレンド比率を調整する。

小規模製粉所向け実践モデル

1. 玄米洗浄後に35℃・8時間の送風乾燥。
2. 低速石臼で一次粉砕し、ふるいで200μm以上を再投入。
3. 粉砕室に冷風を導入し、臼温度を40℃以下で維持。
4. 完成粉を直ちに真空パックし、冷暗所で保管。
このプロセスでアントシアニン保持率80%、歩留まり90%を確保できます。

産業規模での最適プロセス例

1. 遠赤外線40℃乾燥→含水率13%
2. 窒素冷却ハンマーミルで一次粉砕
3. 液体窒素クライオミルで微粉化(平均粒径40μm)
4. 窒素置換アルミパウチ充填
コストは上がるものの、保持率95%、生産能力500kg/時を実現できます。

粉末利用の広がりと展望

黒もち米粉は色調と栄養価を兼ね備えており、グルテンフリー製菓や機能性ドリンクの原料として注目されています。
製粉技術の向上により、従来は難しかった鮮やかな黒紫色と高い抗酸化力を維持したまま量産が可能になりました。
今後はAI制御の温度管理やCO₂排出を抑える電動石臼など、サステナブルな製粉システムの開発が鍵になります。

まとめ

黒もち米粉の栄養価を保持するためには、玄米のまま低温かつ酸素を遮断した状態で粉砕し、速やかに不活性ガス包装を行うことが不可欠です。
石臼、冷却ハンマーミル、クライオミル、湿式製粉とそれぞれに長所があり、目的・規模・コストに応じて最適なプロセスを選択することで、アントシアニンをはじめとする貴重な栄養素を最大限残した高品質な黒もち米粉を生産できます。

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