紙袋とプラスチック袋の環境負荷比較―実際のエコな選択肢とは？

紙袋とプラスチック袋が抱える共通の課題

レジ袋有料化によって、多くの人が紙袋とプラスチック袋のどちらが環境に優しいかを考えるようになりました。
どちらの素材も資源を消費し、製造から廃棄までで温室効果ガスを排出します。
さらにリサイクル・分解・廃棄方法に課題がある点は共通しています。
よって単純に「紙＝エコ」「プラ＝悪」と結論づけるのは早計です。
両者のライフサイクル全体を検証した上で、実際に環境負荷を減らせる使い方を探ることが重要になります。

紙袋の環境負荷

製造時に大量の水とエネルギーを消費

紙袋は木材パルプを原料にしており、漂白・成形・乾燥の工程で多くの水と熱エネルギーを必要とします。
国際製紙協会の報告では、同じ容量のプラスチック袋に比べ、紙袋製造時のエネルギー消費は約4倍、水使用量は最大50倍に達します。

CO2排出量は一概に少ないと言えない

紙は植物由来でカーボンニュートラルと認識されがちですが、化石燃料で回す製造設備の割合が大きい工場ではCO2排出量が増加します。
国際的なLCAデータでは、紙袋1枚あたりのCO2排出量はプラスチック袋の約3倍という算定もあります。

リサイクルと生分解性のメリット

紙袋は古紙回収ルートが整備されていれば再資源化率が高い点が強みです。
土壌や海洋に流出した場合も、数か月から数年で生分解されやすく、マイクロプラスチックのように残存し続けない利点があります。
ただし耐水性を高めるためのラミネート加工が施されている紙袋はリサイクル工程で分離が難しくなるため注意が必要です。

プラスチック袋の環境負荷

製造時の資源効率が高い

高密度ポリエチレン（HDPE）製のレジ袋は、薄く軽いため原料使用量が紙袋よりはるかに少なく済みます。
IEAのデータでは、同容量の紙袋と比較するとプラスチック袋の製造に必要なエネルギーは約1/4、CO2排出量も1/3程度に抑えられます。

輸送時の温室効果ガスを低減

軽量で圧縮性が高いプラスチック袋は、輸送時に積載効率が良く、物流段階での燃料消費を削減できます。
紙袋は重量があり、同じ枚数を運ぶのにトラック台数が増え、ここでもCO2排出量が増加します。

リサイクル率の低さと海洋汚染

プラスチック袋は薄膜で汚れやすく、分別工程で破れやすいことからマテリアルリサイクル率が低くなりがちです。
回収されずに流出した袋は、紫外線で劣化しながらマイクロプラスチック化し、海洋生態系に長期的な影響を与えます。
これが「プラごみ＝悪」のイメージを強める主因となっています。

ライフサイクルアセスメント（LCA）で見る比較ポイント

使用回数がカギを握る

紙袋は厚手で丈夫な製品が多く、3～5回程度再利用するとプラスチック袋と同等のCO2排出量になると報告されています。
逆にプラスチック袋でも、ごみ袋など二次利用を重ねれば資源効率は大きく改善します。
重要なのは「1回使って捨てる」使い捨て習慣を改めることです。

地域のエネルギーミックスと廃棄インフラ

製造エネルギーが再生可能比率の高い地域では紙袋の優位性が増します。
一方、焼却施設で高効率エネルギー回収を行っている自治体では、プラスチック袋焼却時の熱回収がCO2排出を相殺するケースもあります。
その地域の電源構成と廃棄インフラを踏まえて評価を行わなければ、正確な比較はできません。

実際のエコな選択肢

繰り返し使えるマイバッグが最優先

コットンや再生ポリエステルのエコバッグは、使用回数を50回以上重ねることでレジ袋の総環境負荷を大幅に下回ります。
持ち歩きを忘れない工夫として、折りたたみ式の小型バッグを鍵に取り付けたり、車や職場に常備する方法が有効です。

紙袋とプラスチック袋は「適材適所」で選択

濡れた食品や生ゴミを入れる用途では防湿性が高いプラスチック袋を使い、そのままごみ袋として活用する。
衣類や雑貨の持ち帰りなど乾いた品物には紙袋を使用し、古紙回収へ回す。
このように内容物や再利用方法を考慮した上で、両素材を賢く使い分けることが環境負荷を減らす近道になります。

リサイクル表示と自治体ルールを確認

「紙マーク」「プラマーク」など素材表示に従い、自治体ごとの分別ルールを守ることがリサイクル率向上の第一歩です。
紙袋の持ち手や底板にプラスチックや金属が使われている場合は取り外して分別する。
プラスチック袋は汚れを軽くすすいで乾かすことでリサイクル工程の歩留まりが上がります。

まとめ

紙袋は再生紙利用や生分解性でメリットがある一方、製造時のエネルギーと水消費が大きいデメリットがあります。
プラスチック袋は軽量・低エネルギー製造が強みですが、リサイクル率の低さと海洋汚染が課題となります。
LCAの観点では、使用回数と地域のインフラ条件によって優劣が逆転するため、「どちらが絶対的にエコ」ではありません。
最も環境負荷を下げる行動は、繰り返し使えるマイバッグを活用し、必要に応じて紙袋とプラスチック袋を適材適所で再利用することです。
その上で正しい分別とリサイクルを実践すれば、両素材の環境負荷を最小限に抑えられます。
消費者一人ひとりが使用習慣を見直すことで、持続可能な資源循環社会に近づけると言えるでしょう。