ポリオレフィンとエンプラ(エンジニアリングプラスチック)の選定ガイド

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ポリオレフィンとエンプラの基礎知識

ポリオレフィンとはエチレンやプロピレンを重合して得られる汎用樹脂の総称で、PE(ポリエチレン)とPP(ポリプロピレン)が代表例です。
エンプラとは「エンジニアリングプラスチック」の略称で、耐熱・耐薬品性など機能面で汎用樹脂より優れた高機能樹脂を指します。
代表的な品種にはPA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などがあります。
一般的にポリオレフィンは大量生産による低コストが魅力で、エンプラは高機能ゆえに単価が高くなる傾向にあります。

物性比較のポイント

耐熱性

ポリオレフィンはPEでおおむね80℃、PPで100〜120℃程度が連続使用温度の上限です。
一方エンプラはPA66で約120〜150℃、PBTで120〜140℃、PCは125〜135℃、PPSなどスーパーエンプラでは200℃以上に達します。
高温環境での長期使用が想定される場合はエンプラが優位となります。

機械的強度

ポリオレフィンは衝撃強度に優れる反面、剛性と耐クリープ性が課題です。
ガラス繊維で強化したPP(GFPP)を選べば剛性を改善できますが、エンプラの強化材入りグレード(GFPA、GFPBTなど)はさらに高い強度と耐熱性を実現します。
ギアやベアリングなど荷重が集中する部品にはエンプラが採用されるケースが多くなります。

耐薬品性

PE・PPは酸・アルカリ・極性溶剤などに対して広範な耐薬品性を持ちます。
エンプラはグレードにより差が大きく、PAは吸水による寸法変化、PCは酸・アルカリで加水分解しやすいといった制限があります。
薬品接触が主要求であればポリオレフィンが第一候補になります。

寸法安定性

エンプラは結晶性が高いものでも成形収縮率が比較的小さく、精密成形に適しています。
ポリオレフィンは収縮が大きく、温度変化による膨張係数も高めです。
公差管理が厳しい部品ではガラス繊維入りエンプラなどが採用されやすいです。

用途別の選定ガイド

包装・容器

食品容器やフィルム包装は軽量で加工しやすいポリオレフィンが主流です。
耐熱レンジ加熱用途では耐熱PP、レトルト対応なら耐熱グレードPP+特殊添加剤といった選択肢があります。

自動車部品

外装や内装の大面積部品には低コストで成形性に優れたPPが使用されます。
エンジン周りの高温部品にはPA66、PPS、PBTなどのエンプラが適しており、金属代替としてガラス繊維強化グレードが用いられます。

電気・電子機器

絶縁性能と難燃性が重要なため、難燃PC、難燃PBT、難燃PAなどエンプラが中心です。
低電圧機器のケーブル被覆やハウジングには難燃PEや難燃PPも使用されますが、耐熱クラス向上が必要な場合はエンプラが選択されます。

医療・ライフサイエンス

滅菌対応のため134℃オートクレーブ耐性やγ線耐性が求められます。
PPはオートクレーブ滅菌向けグレードが豊富で、ディスポーザブル製品に広く採用されています。
再使用機器ではPC、PPSU、PEEKなど高耐熱エンプラが主流となります。

加工方法と歩留まり

ポリオレフィンは射出成形、押出、ブロー成形、フィルム成形など多岐に利用でき、融点が低いためエネルギーコストも抑えられます。
エンプラは溶融粘度が高く、ガラス繊維強化品では摩耗粉が金型を傷めるため、金型材質やメンテナンスコストを考慮する必要があります。
歩留まり向上には乾燥工程、金型温調、離型剤選定が重要で、特に吸水性の高いPA系は前乾燥が必須です。

コスト試算の考え方

材料価格はポリオレフィンが1kgあたり200〜400円程度、エンプラは500〜2000円程度が相場です。
しかしトータルコストは材料原価だけでなく加工時間、金型寿命、歩留まり、部品点数削減効果などを加味する必要があります。
金属代替で軽量化し組立を簡素化できれば、エンプラの高単価を相殺あるいは逆転するケースも珍しくありません。

環境・リサイクル性

ポリオレフィンはモノマテリアル化が容易でメカニカルリサイクル実績が豊富です。
エンプラは各種添加剤やガラス繊維が混在し、分別・回収コストが高いことが課題です。
ただしPCやPETなどはケミカルリサイクル技術が進展しており、将来的にはエンプラでも循環型スキームが広がる見込みです。
環境認証(UL、RoHS、REACH)の対応可否も素材選定段階で必ず確認する必要があります。

チェックリストで整理する選定フロー

1. 使用温度と負荷を確定し、連続使用温度と機械的強度の必要値を設定する。
2. 薬品、紫外線、摩耗など外的因子を洗い出し、優先度順に耐性を評価する。
3. 成形方法と年間生産量から金型投資、加工サイクル、歩留まりを予測する。
4. 材料単価だけでなくトータルコスト(LCC)を試算し、削減効果を数値化する。
5. 環境規制への適合可否とリサイクルフローの整備状況を確認する。
この5ステップを踏むことで、ポリオレフィンかエンプラか、あるいは複合材料かを合理的に判断できます。

まとめ

ポリオレフィンは低コスト・優れた耐薬品性・加工性が強みで、大量生産や使い捨て用途に最適です。
エンプラは高耐熱・高強度・寸法安定性が求められる高付加価値部品で真価を発揮します。
最適な素材を選定するには、要求性能、加工条件、コスト、リサイクル性を定量的に比較することが鍵です。
本ガイドを参考に、用途に合わせた最適な樹脂選定を実現してください。

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