ポリウレタンの熱安定性と射出成形における特性比較【技術者向け】

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ポリウレタンとは何か

ポリウレタンはイソシアネートとポリオールの反応で得られる高分子であり、硬質フォームから軟質エラストマーまで幅広い形態を取ることが特徴です。
射出成形向けには主に熱可塑性ポリウレタン(TPU)が用いられ、分子内にハードセグメントとソフトセグメントを併せ持つ相分離構造により、高い弾性率と優れた耐摩耗性を両立します。
この相分離構造が熱履歴と機械的荷重に対する応答を決定づけ、熱安定性や成形加工性に強く影響します。

ポリウレタンの熱安定性

熱安定性を規定する分子構造

ポリウレタンの主鎖にはウレタン結合(–NH–CO–O–)が連続して存在し、加熱によりまず水素結合が切断され、ついでウレタン結合自体が分解します。
ハードセグメントが多いほど結晶性が高まり熱変形温度が上昇しますが、同時に内部応力も増え、過度の熱負荷で応力割れが生じやすくなります。
ソフトセグメント由来のポリオールの種類(ポリエステル系かポリエーテル系か)も耐加水分解性と熱酸化安定性を左右する重要な要素です。

熱分解温度とガラス転移点

TPUの初期熱分解温度は一般に220〜250℃の範囲にあります。
ガラス転移温度(Tg)はソフトセグメント側で−50〜0℃、ハードセグメント側で70〜120℃に二重に現れ、二つのTg間の相分離度合いが長期耐熱性の指標になります。
射出成形時はシリンダー温度が180〜220℃付近となるため、加工窓が熱分解温度に近接し、熱劣化リスクが常に伴います。

劣化メカニズムと添加剤の役割

熱劣化はウレタン結合の開裂、分子鎖の脱CO₂、フリーイソシアネートの再反応など複合的に進行します。
酸化劣化はポリオール骨格上のα-水素が抽出されてペルオキシラジカルが発生し、連鎖的に分子量が低下します。
これらを抑制するため、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤が用いられます。
またカルボジイミド系安定剤を添加すると脱CO₂による発泡を抑えられ、射出成形品の寸法安定性が向上します。

射出成形におけるポリウレタンの特性

流動性と成形窓

TPUは分子間力が強く、溶融粘度がポリアミドよりも高い傾向にあります。
そのため射出速度が遅いとキャビティー内で急冷し、ウェルドライン強度が低下します。
一方で高せん断域では発熱が進みやすく、樹脂温度が不均一になるため、背圧とスクリュー回転数を低めに設定し、安定した溶融を確保することが重要です。

成形不良を防ぐ温度管理

シリンダー温度は材料グレードごとに推奨値が存在しますが、実務では前後30℃のレンジで細かく調整します。
ノズル先端で190℃を超えると糸引きが発生し、180℃を下回ると充填不足となりやすいため、ホットランナーを併用する場合でもノズルヒーターのPID制御は必須です。
金型温度は40〜60℃が標準ですが、肉厚品では60〜80℃に設定すると内部残留応力が大幅に低減し、後工程での反りを抑制できます。

他材料(ABS・PBT・PA6)との比較

ABSは90℃付近で熱変形するため、高温環境ではTPUが優位です。
PBTは結晶性が高く熱変形温度が200℃近くある一方、低温衝撃に弱いという欠点があります。
PA6は機械強度と耐熱性に優れますが吸水膨張が課題であり、耐水性の面ではエーテル系TPUが勝ります。
以上より、高温多湿環境でのフレキシブル部品にはTPUが最適解となるケースが多いです。

実際の成形条件とトラブルシューティング

代表的な温度プロファイル

シリンダー後部 175℃、中央 185℃、前部 195℃、ノズル 190℃とするプロファイルが汎用グレードで採用例の多い設定です。
背圧は0.3〜0.5 MPa、スクリュー回転数は50 rpm程度に抑え、樹脂の滞留時間を3分以内に制御すると熱劣化が最小化できます。

焼けや気泡の対策

ゲート周辺に黒い焼けが生じる場合は、空気抜きの不足か樹脂温度の過昇が原因です。
ベント溝を深さ0.02 mm、長さ5 mm以上に延長し、同時に射出速度を段階制御して樹脂前端の圧縮熱を逃がします。
気泡は吸湿による発泡が多いため、80℃で4時間以上の予備乾燥が推奨されます。
カルボジイミド系安定剤を用いる場合でも、乾燥不足は焼けと気泡を同時に誘発するため注意が必要です。

用途事例と材料選定ガイド

自動車のCVJブーツや燃料系シールは、−40℃から120℃までの温度サイクルに耐えるエーテル系TPUが標準採用されています。
医療用途では生体適合性と耐薬品性が求められ、ポリカーボネートブレンドのTPUがカテーテル被覆材として用いられます。
スポーツシューズのミッドソールには微発泡TPUが使われ、高い復元弾性と耐寒性により歩行時のエネルギーリターンを向上させます。
材料選定では硬度、耐摩耗性、耐油性、燃焼性規格(UL94 HB〜V‑0)など多軸評価を行い、最終製品のライフサイクル条件に合わせて分子設計を最適化します。

まとめ

ポリウレタンは相分離構造に起因する独自の熱安定性を持ちますが、射出成形温度が熱分解温度に近接するため、加工条件の最適化が不可欠です。
シリンダー温度、背圧、滞留時間を緻密に管理し、適切な乾燥と添加剤を組み合わせることで、焼けや気泡を防ぎつつ高い機械特性を確保できます。
ABSやPBT、PA6と比較しても、耐摩耗性や低温衝撃性、耐水性で優位性があり、高温多湿かつ可動部品の用途で特に性能を発揮します。
技術者は分子設計と成形工程を一体で捉え、要求性能に応じたグレード選定とプロセス制御を行うことで、ポリウレタンの潜在能力を最大化できます。

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