食品の粉末化技術と吸湿性の最適化

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粉末化技術の基礎

食品を粉末化する目的は、保存性の向上、輸送コストの削減、機能性成分の付加、調理の簡便さなど多岐にわたる。
最適な粉末を得るには、原料特性と用途を踏まえて乾燥方式と粉砕方式を選択する必要がある。

スプレードライ

液状原料を微細な霧状に噴霧し、熱風と接触させ瞬時に乾燥させる手法。
熱履歴が短く酸化酵素の失活や香気の保持に優れる。
粒子は中空球状となり、流動性が高く再溶解も速い。
一方で、低分子糖が多い配合ではガラス転移温度(Tg)が低下し、吸湿によるベタつきが生じやすい。

フリーズドライ

凍結した原料を真空下で昇華乾燥させる。
熱変性を最小限に抑えられ、ビタミンや香気成分の保持率が高い。
多孔質構造のため吸湿速度が速く、一度湿気を吸うと崩れやすいという課題がある。

真空ドラムドライ

円筒ドラムを低圧下で加熱し、原料を薄膜で乾燥させる。
糖度の高いシロップや粘性の高いペーストに適用でき、スプレードライよりエネルギー効率が高い。
薄片状の粉末は再水和性に優れるが、形状が不均一で吸湿による層間凝集が起こりやすい。

粉末の吸湿性とは

吸湿性とは、粉末が周囲の水蒸気を取り込み、内部水分量が増加する性質を指す。
食品粉末の場合、水分活性が0.3〜0.6を超えると微生物増殖こそ起こりにくいものの、物理的・化学的劣化が加速する。

吸湿がもたらす品質劣化

1. 粒子間の毛管力が増大し、ダマ化・固結が発生する。
2. 酸化反応が進み、脂質の風味劣化や色調変化が生じる。
3. ビタミンCなど水溶性成分が加水分解し、有効性が低下する。
4. 粒子表面が水で覆われることで静電気が減少し、粉体ハンドリング性が低下する。

水分活性と物性変化

水分活性(Aw)は自由水の割合を示し、0.6付近でガラス転移点を迎える粉末が多い。
Tgを下回るとアモルファス相がラバー状へ移行し、粘性が増して付着・固結が起こる。
このためTgを引き上げる配合設計が吸湿性の最適化に直結する。

吸湿性を最適化する方法

キャリアエージェントの利用

マルトデキストリンやデキストリン化デンプンは高Tgの多糖類であり、低分子糖を包み込んで全粉末のTgを底上げする。
使用量は固形分に対して20〜40%が一般的で、スプレードライでは粘度上昇を抑えつつガラス転移温度を25〜30℃程度押し上げられる。

粒子設計と粒度分布制御

平均粒径が小さすぎると比表面積が増え吸湿が加速する。
二流体ノズルよりも三流体ノズルを用い、粒径を100〜200μmに調整すると吸湿速度を約30%低減できるとの報告がある。
さらに、造粒(アグロメレーション)により多孔質内部に空気層を設けると、湿気の拡散が遅延し固結抑制に効果的である。

表面改質とコーティング

疎水性オイルでマイクロエンカプセル化すると、水蒸気透過率を下げられる。
例えばシクロデキストリン包接によりコーヒー香料粉末の吸湿量を40%削減できた事例がある。
シェラックやエチルセルロースを5%程度スプレーコーティングすると、親水粒子を物理的に隔離し吸湿を抑える。

包装と保管での対策

低湿度環境の維持

製造後すぐに脱気し、相対湿度40%以下のクリーンルームで包装する。
乾式脱酸素剤ではなくシリカゲル系乾燥剤を併用すると、水分活性上昇を抑えつつ酸化も防止できる。

バリア性包装材の選択

アルミ蒸着フィルムは水蒸気透過率、酸素透過率ともに最小で、長期保存向き。
一方、リサイクル性を重視する場合は、EVOH層を含む高バリア多層フィルムが選択肢となる。
開封後はチャック付きで短時間に再封できる設計が推奨される。

まとめ

食品粉末の品質を左右する最大要因の一つが吸湿性である。
粉末化技術ごとの特性を理解し、キャリアエージェントや粒子設計、表面コーティングを組み合わせることで、Tgを高め吸湿を抑制できる。
さらに、低湿度環境での包装と高バリア材の採用により、製品寿命を延ばしフードロス削減にも寄与する。
粉末化と吸湿性最適化を体系的に捉えることで、安全・便利・おいしい粉末食品の開発が加速すると期待される。

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