リサイクルできる紙とできない紙―紙ごみ分別のポイント

紙ごみ分別が求められる背景

日本では年間約2,500万トンの紙・板紙が消費されています。
そのうち古紙として回収できた量はおよそ2,000万トンで、回収率は80％を超えています。
しかし、リサイクルできるはずの紙が可燃ごみに混入し、資源として生かされず焼却されるケースが依然として多いです。
適切な分別が進めば、資源の循環だけでなく、CO₂排出量や自治体のごみ処理コスト削減にもつながります。

リサイクルできる紙の代表例

新聞紙・チラシ

印刷インキが脱墨しやすいため、古紙原料として最も再生効率が高いです。

雑誌・書籍

本や週刊誌、カタログなどは「雑誌類」に分類され、繊維が長く品質も安定しています。
ホチキスやビニールカバーは事前に取り除きましょう。

段ボール

波形の中芯が再生紙の主力原料になります。
テープやラベルを剥がし、折りたたんで出すのが基本です。

コピー用紙・オフィス紙

上質で白色度が高いため、ティッシュやトイレットペーパーなど衛生用品に再生しやすいです。
感熱紙が混ざると品質が落ちるので、分けて排出します。

紙パック（牛乳パック）

内側がアルミなしの「紙容器包装リサイクルマーク」付きは再資源化可能です。
水洗いして乾かし、開封して平らにしてから出しましょう。

リサイクルできない紙の代表例

防水・撥水加工紙

紙コップやアイスクリームの紙容器にはポリエチレンコーティングが施されており、繊維と樹脂を分離しにくいためリサイクルに向きません。

感熱紙・カーボン紙

レシートやファクス用紙は、熱や圧力で発色する薬剤が再生工程で黒ずみの原因になることがあります。

臭い・油が付着した紙

ピザの箱やお菓子の包み紙など油染みがあると、製紙工程で紙繊維に油分が残り、品質劣化や機械トラブルにつながるため不可です。

写真・インクジェットフォト紙

銀などの化学薬品や樹脂層が多く含まれ、繊維率が低いのでリサイクル用の原料になりません。

紙以外の素材が強く貼り合わされた紙

アルミ蒸着袋、プラスチック窓付き封筒、ラミネート台紙などは、異物除去コストが高く、焼却するほうが効率的と判断されます。

リサイクル可否を見分ける3つのポイント

1. 繊維の純度

紙の主成分はセルロース繊維です。
異素材の混入が少ないほど再生しやすいため、「純粋な紙」かどうかを確認します。

2. 水に溶けるか

製紙工場では水に溶かして繊維を分散させます。
防水・耐水加工は溶解を妨げるため、不可の指標となります。

3. 汚れの有無

インク、油、食べ残し、薬品などの汚れが多い紙は再利用工程で大きな負荷を与えます。
きれいな状態で排出されているかが鍵です。

自治体・事業所で異なる分別ルール

自治体によって「雑紙」と「資源紙」の境目や、紙パック回収の有無が異なります。
ホームページや配布パンフレットで分別区分を確認し、ルールに従うことが基本です。
事業者の場合は古紙回収業者と契約し、オフィス紙・機密文書・段ボールなどを種類ごとに分けて保管することで、リサイクル率を高められます。

家庭でできる紙ごみ分別のコツ

ペーパーバッグ・空き箱の活用

新聞、雑誌、雑紙を紙袋や空き箱にまとめておけば、出し忘れを防げます。

ホチキス・金具の除去

小さな金属片でも異物扱いになるため、リムーバーで外しておきます。

紙ひもで十字に縛る

ビニールひもは焼却時にダイオキシン発生の要因になる場合があるため、紙ひも使用が推奨されます。

干渉材やエアキャップは別袋へ

段ボール解体時に出るプチプチ、緩衝材は可燃ごみに分けましょう。

紙リサイクルの流れ

1. 回収・選別
2. 裁断・圧縮
3. 製紙工場での溶解（パルピング）
4. 異物除去・脱墨
5. シート形成・乾燥
6. 製品化（段ボール原紙、トイレットペーパー、コピー用紙など）
各工程で異物が多いと歩留まりが下がり、コスト増となります。
家庭での分別精度が高まれば、製紙会社の負担軽減と品質向上に直結します。

よくある質問（FAQ）

Q. お菓子の紙箱はリサイクルできますか？

A. 食品粉や油が付いていなければ可能です。
プラスチック窓は切り取ってください。

Q. 使用済みティッシュペーパーはどう処理すべきですか？

A. 衛生面の問題と短繊維である点から、可燃ごみに出してください。

Q. 封筒の糊付き部分は剥がさないとダメですか？

A. 少量の糊は選別ラインで除去できますが、プラ窓や金属製留め具は外しましょう。

Q. シュレッダーくずは古紙回収に出せますか？

A. 短く裁断されているため繊維が再利用しにくく、一般家庭では可燃ごみ指定が多いです。
事業所向けの回収ルートがあれば対応できる場合もあります。

分別を習慣化するためのアイデア

・ キッチンと書斎に「雑紙ボックス」を置き、一定量たまったらひもで縛る。
・ 家族で「新聞」「雑誌」「段ボール」「紙パック」の4分類を色分けし、子どもでも分かる表示を付ける。
・ 回収日をスマホのリマインダーやカレンダーアプリで通知設定しておく。

まとめ

紙は身近な資源でありながら、加工方法や汚れの有無によってリサイクル可否が分かれます。
「繊維の純度」「水に溶けるか」「汚れがないか」の3点を意識すれば、多くの紙を正しく分別できます。
自治体ルールを確認し、家庭でも事業所でも日頃から分別を習慣化することが、資源循環社会への第一歩です。