牛革と羊革の選定基準とその加工法による品質向上【製品設計者向け】

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牛革と羊革の基礎知識

牛革の構造と特性

牛革は真皮層が厚く繊維束が緻密に絡み合っているため、引張強度と耐摩耗性に優れます。
重量感がある一方で、部位によって繊維配向が異なるため、部位取りで物性を調整しやすい点も魅力です。
銀面は粒度が細かくコーティング仕上げと相性が良く、型押しや顔料仕上げによる意匠自由度が高いです。
経年変化では深い艶と質量感が増し、長期使用を想定した製品に適しています。

羊革の構造と特性

羊革は真皮層が薄く繊維束が細いため、軽量でしなやかです。
銀面のキメが非常に細かく、日本市場で求められるソフトタッチや高級感を演出しやすいです。
通気性と吸放湿性に優れるため、体温調節が求められる衣料や手袋用途で高評価を得ています。
ただし摩耗や引裂きへの耐性は牛革より劣るため、補強材や裏地の設計に配慮が必要です。

用途別の選定基準

耐久性を重視する場合

荷重を受ける履物底部や大型バッグのハンドル部には、厚さ2.0mm以上のフルグレインカウハイドが推奨されます。
植物タンニンなめしとワックス仕上げを組み合わせることで、繊維間摩擦が増し、形崩れを抑制できます。
さらに撥水加工を施すことで、アウトドア環境でも寸法安定性を維持できます。

触感と軽量性を重視する場合

衣料ジャケットや高級手袋には、0.7〜1.0mmのラムスキンが最適です。
クロムなめしとセミアニリン仕上げを採用すると、柔軟性を確保しつつ色ブレを抑えられます。
裏地にトリコットやストレッチニットを合わせると、羊革の伸縮特性を損なわずに耐久性を補完できます。

加工法による品質向上のメカニズム

なめし工程の選択

クロムなめしは三価クロム主体で行うと、環境負荷を抑えながら耐熱収縮温度が100℃近くまで向上します。
植物タンニンなめしは硬質で成形保持力が高く、光や熱での色変化が味わいとして評価されます。
最近はクロムフリーアルデヒドフリーの合成樹脂系なめし剤が注目され、リサイクル工程での化学物質管理が容易です。

表面仕上げ技術

アニリン仕上げは染料が繊維の奥まで浸透するため、自然な透明感が得られますが、傷が目立ちやすいデメリットがあります。
セミアニリンは極薄顔料と透明樹脂の併用で耐摩耗性を補完し、歩留まり向上にも寄与します。
型押し加工では高周波プレスを用いることで、立体的なパターン付与と同時に銀面の平滑化が可能です。

機械加工による物性調整

ドラムミリングは革を温風と回転衝撃で揉み解し、柔軟性とふくらみを付与します。
エンボスロールカリンダーでは一定温度で圧縮し、表面光沢を均一化するとともに厚み公差を0.05mm以内に制御できます。
スプリット工程で二層に分割し、表革は高意匠用途、床革は裏材や再結合革に活用することで材料ロスを削減できます。

具体的な製品設計への活用例

履物設計

アッパーにはフルグレインカウハイドを0.9〜1.2mmで選定し、オイル仕上げによる撥水性を付与します。
ライニングには0.6mmのラムスキンを貼り合わせ、足当たりと吸湿性を改善します。
屈曲部にはフラワーカットを施して応力集中を回避し、ステッチピッチを3.0mm以上に設定すると破断寿命が20%向上します。

バッグ・小物設計

ボディにはトップグレイン牛革を使用し、表面にUV硬化型クリアコートを塗布して色褪せを抑制します。
ハンドルには植物タンニン鞣し牛革を芯材にし、外装にラムスキンを巻く二層構造で触感と強度を両立できます。
カードケースなど薄物には0.5mmのシープナッパとナイロン生地をラミネートし、総厚1.2mmでRFID遮断シートを内蔵するといった機能拡張も可能です。

品質評価とテスト方法

JIS K6550の引張試験で最小破断強度を牛革では18N/mm²以上、羊革では12N/mm²以上を目安にします。
摩耗試験はTABER 1000回転で質量減少0.2g以下を合格基準とし、仕上げ層の耐久性を確認します。
透湿性試験ではASTM E96を適用し、羊革は800g/m²·24h以上、牛革は500g/m²·24h以上で快適性を担保できます。

サステナビリティと調達の留意点

原皮調達ではLWG認証タンナーを選択し、排水処理や労働安全基準を担保することで企業リスクを低減できます。
副産物利用率を高めるために、床革をボンデッドレザーやコラーゲンペレットに再加工する循環モデルが注目されています。
製品寿命後の回収スキームを設計段階から考慮し、再鞣し再成形によるアップサイクルを提案すると環境価値を訴求できます。

まとめ

牛革は高い耐久性と加工自由度が強みで、負荷の大きい部位や長期使用を前提とした製品に適しています。
羊革は軽さとソフトタッチが魅力で、密着性や快適性が求められる衣料・小物に適しています。
なめしや仕上げ、機械加工を適切に組み合わせることで、素材特性を最大化し製品性能を高めることが可能です。
製品設計者は使用環境やターゲットユーザーのニーズを踏まえ、物性試験とサステナビリティ要件を同時に満たす素材選定を行うことが重要です。

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