黒ごまシロップの甘味と風味を均一化する糖度管理技術

黒ごまシロップにおける甘味と風味のばらつきの原因

黒ごまシロップは黒ごま特有のコクと香ばしさを活かした調味素材として、アイスや和菓子、ドリンクなど幅広く利用されています。
しかし原料由来の油分やタンパク質が多く含まれるため、糖と成分が複雑に絡み合い、製造ロットごとに甘味と風味が変動しやすいという課題があります。
特に砂糖の溶解度や温度変化による粘度差、黒ごまペーストが持つ粒径分布の違いが、最終製品の糖度を均一にするうえで大きく影響します。
糖度が不安定だと、甘味だけでなく香り立ちや後味のバランスも崩れ、ブランドイメージの低下につながります。
したがって糖度を緻密に管理し、甘味と風味を均一化する技術が不可欠です。

糖度管理の基本概念

糖度は一般的にBrix値で表現され、水溶液中の可溶性固形分濃度を示します。
黒ごまシロップでは砂糖濃度に加え、黒ごま由来の可溶性成分や微粒子もBrix計測に影響するため、通常の果汁やシロップより精度の高い測定が求められます。
糖度管理の流れは「計測」「分析」「制御」に大別され、各段階で適切な機器選定とパラメータ設定を行うことで、製品のばらつきを大幅に低減できます。

リアルタイム計測の重要性

従来はバッチごとにサンプリングし、卓上屈折計で糖度を測定していました。
しかし黒ごまシロップは粘度が高く、撹拌や加熱中に分離が起こるため、製造途中での糖度変化を見落としやすい点が問題でした。
そこで近年はインライン屈折計や振動式濃度センサーを配管ラインに組み込み、リアルタイムにBrix値を監視する方式が普及し始めています。

サンプル調整技術

黒ごまの粒子が多い状態で直接屈折計に流すと、レンズ面に付着して誤差を招く可能性があります。
そのため自動フィルタリングユニットを併設し、100ミクロン程度のメッシュで粗粒子を除去した後に測定セルへ送り込む設計が推奨されます。
これにより、粒子の多い原液でも安定した信号が得られ、オンライン自動制御の精度が飛躍的に向上します。

甘味と風味を均一化する制御パラメータ

黒ごまシロップの糖度管理では、温度、加熱時間、撹拌速度、糖投入タイミングの4要素が主要な制御パラメータです。

温度プロファイルの最適化

糖の溶解速度は温度に大きく依存します。
80℃以上で急速溶解させると短時間で均一な甘味を得られますが、黒ごまの焙煎香が揮散しやすくなる問題があります。
一方60〜70℃で緩やかに加熱すると香気成分は保持できますが、糖が溶け残り粘度ばらつきを招きます。
そこで段階的昇温制御を行い、前半で70℃、後半で85℃の二段プロファイルを採用すると、香ばしさと甘味の両立が可能になります。

撹拌とせん断制御

黒ごまペーストは油相が多く、砂糖と分離しやすいため、撹拌速度も重要です。
低せん断で長時間撹拌するとペースト粒子が浮上し、測定部に油膜を形成して糖度計が誤作動する恐れがあります。
インバータ制御モーターにより、初期は高せん断、中盤以降は低せん断へと自動調整するプログラムが推奨されます。

糖投入タイミング

一般的に黒ごまペーストを先に加熱し、その後グラニュー糖を一括投入する方法が多いですが、最近はフィードフォワード制御により少量ずつ連続投入する方式が注目されています。
リアルタイム糖度を監視しつつ予測アルゴリズムで投入量を微調整するため、目標Brix±0.2以内に収めることが可能となりました。

高精度糖度計測機器と校正

高精度な糖度管理には機器自体の校正も欠かせません。
黒ごまシロップのような高粘度サンプルでは、一般的なSucrose溶液標準液だけでなく、粘質基準液を用いた二点校正が望ましいとされています。

インライン屈折計

測定範囲は0〜90 Brix、精度±0.1。
サファイアプリズムと耐熱Oリングで高温高粘度耐性を確保し、CIP洗浄にも対応。
デジタル信号をPLCに送り、表示パネルでリアルタイム値を確認できます。

振動式濃度センサー

ねじり振動の周波数変化から濃度を算出する仕組みで、粒子や気泡の影響を受けにくい点が特長です。
ただし油分が多い黒ごまシロップでは、温度補正係数を個別に設定する必要があります。

データ駆動型のプロセス最適化

リアルタイムで収集した糖度、温度、撹拌トルクのデータをクラウドに送信し、機械学習モデルで最適パラメータを算出する動きも進んでいます。
例えばXGBoostを用いてBrix値の変動要因を解析した結果、黒ごま原料の含油率と投入順序が糖度ばらつきの6割以上を占めることが判明しました。
AIが導き出した最適レシピをライン制御にフィードバックすることで、試作段階では標準偏差1.2から0.3まで改善した事例があります。

品質保証とHACCPとの連携

糖度が基準内で安定することは、微生物制御や保存性の確保にも直結します。
糖度が高すぎると結晶化、低すぎると微生物リスクが上昇するため、HACCPプランではCCPとして糖度チェックポイントを設定し、連続監視データを記録する仕組みが推奨されます。
異常検知アラームを設定し、設定値を外れた場合には自動的に原料投入停止、バイパス排出などのフェイルセーフを組み込むと、品質事故を未然に防止できます。

設備投資コストとROI

インライン屈折計の導入コストは1台あたり150万円前後ですが、糖度ばらつきによるロット廃棄や再加熱作業の削減効果を加味すると、年間20トン生産規模で約9カ月で償却できる試算が出ています。
さらに甘味と風味が均一化することで、顧客満足度向上によるリピート率アップも期待でき、総合的なROIは非常に高いといえます。

まとめ

黒ごまシロップの甘味と風味を均一化するには、リアルタイム糖度計測と高度なプロセス制御が鍵となります。
温度プロファイル、撹拌せん断、糖投入タイミングを精密にコントロールし、AIによるデータ解析を組み合わせることで、目標Brix±0.2という高い再現性が実現可能です。
これにより製品の品質安定とブランド価値向上を同時に達成でき、製造現場のコスト削減にも大きく貢献します。
今後はIoTセンサーの高性能化やクラウド連携が進み、さらなる自動化と最適化が期待されます。