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電子たばこ用のリキッドは、香料やニコチンなどを溶解させる「キャリア液体」が主体です。
従来は植物性グリセリン(VG)とプロピレングリコール(PG)が主流でしたが、近年はより安全かつ快適な吸引体験を実現するために、新規キャリア液体の開発が進んでいます。
なかでも粘度は、蒸気発生効率や味の再現性、デバイスの寿命を左右する重要パラメータです。
本記事では、粘度制御の技術的ポイントと蒸気特性の評価方法を詳しく解説します。
キャリア液体は、加熱コイルで瞬時に気化し、香料成分やニコチンをエアロゾルに載せて気道へ届ける媒体です。
VGは高粘度で甘みがあり、大量の蒸気を生み出します。
一方PGは低粘度で喉にキック感を与え、香料の拡散性も高めます。
しかしPGは乾燥感を引き起こしやすく、VGは冬場に固化して供給不良を招くなど、それぞれ課題があります。
コイルが液体を加熱すると、液膜表面で気化が起こります。
粘度が高すぎると液体の再補給が遅れ、ドライヒットを誘発します。
逆に粘度が低すぎると、液漏れやスピットバックを引き起こします。
適正粘度を保つことで、蒸気量・味・安全性のバランスが取れます。
粘度は吸い込み抵抗にも直結します。
重い液体は気化にエネルギーを要し、吸う力を強めなければなりません。
軽い液体は吸引が楽ですが、香料が揮発しやすく滞留香が短くなる傾向があります。
喫煙感の再現やクラウドチェイスなど、用途に応じた粘度設計が求められます。
VGとPGは食品添加物として長年利用されてきましたが、加熱吸入という特殊な摂取経路では未知のリスクもあります。
そこで医薬品グレードの多価アルコールや糖アルコール、イオン液体を応用した新規フォーミュレーションが検討されています。
欧州TPDや米国PMTAでは、発生エアロゾル中の有害物質を厳格に評価する必要があります。
新規キャリア液体は、既存物質よりも分解生成物が少なく、呼吸器刺激性を低減できることが期待されています。
グリセリンはパーム油に依存するため、プランテーション開発による環境破壊が問題視されています。
生分解性が高く、再生可能資源から得られる代替溶媒の探索が進んでいます。
粘度は分子間相互作用、分子量、温度で決まります。
新規キャリア液体では、疎水基と親水基を適度に配置し、温度変化による粘度勾配を小さくすることが鍵です。
電子たばこは200〜300℃に瞬間的に到達するため、-10〜300℃の広温度域で粘度プロファイルを取得します。
回転式粘度計とマイクロレオメーターを組み合わせ、5℃刻みで測定する手法が一般的です。
得られたデータをアレニウスプロットに投影し、起動エネルギーを算定すると、加熱時の流動性予測が容易になります。
多価アルコールにエーテル結合を導入すると、分子間水素結合が減少し粘度が低下します。
逆にカルボキシル基を付加すると粘度が増し、揮発抑制効果が期待できます。
目的の蒸気量とフレーバー保持力に合わせ、官能基の数と位置を制御する手法が注目されています。
ポリペプチドやセルロースナノファイバーを微量添加し、シアーシンニング特性を持たせる研究も進んでいます。
高剪断(吸引時)では粘度が低下し、低剪断(静置時)では高い粘度を保つため、液漏れ防止と供給性を両立できます。
粘度調整の結果を確認するには、エアロゾルの質と量を多角的に測定する必要があります。
カスケードインパクターを用いて0.1〜10µmの粒径分布を測定し、気道沈着シミュレーションを行います。
1〜3µmが肺到達に適し、3〜5µmは咽頭留まりやすいとされます。
粘度が高いと粒子が粗くなり、低いと微粒化が進む傾向が観察されています。
質量流量計と不揮発残渣センサーを組み合わせることで、パフ毎の蒸気質量収率をリアルタイムで計測できます。
これにより、コイル温度プロファイルと蒸気生成効率の相関を高精度で把握できます。
研究チームは、VG/PG/新規多価アルコールを50/30/20体積比で配合した試料Aと、VG/PGを70/30とした従来試料Bを比較しました。
25℃での粘度は試料Aが56mPa·s、試料Bが82mPa·sでした。
-5℃ではそれぞれ140mPa·sと260mPa·sとなり、試料Aは低温流動性に優れました。
エアロゾル質量収率は、1.0Ωコイル・30Wで1パフ当たり試料Aが12.3mg、試料Bが11.1mgとなり、約11%増加しました。
カスケードインパクター解析では、MMAD(空気力学的質量平均径)が試料Aで2.4µm、試料Bで3.1µmとなり、肺到達性が向上しました。
さらに加熱10連続パフ後のコイル抵抗変化を測定したところ、試料Aは+2.1%、試料Bは+5.8%でした。
析出物の低減によりコイル劣化が抑えられ、デバイス寿命延長が期待できます。
香料保持試験では、フルーツ系フレーバーについて揮発性モノテルペン残存率をガスクロマトグラフィーで評価しました。
試料Aは85%、試料Bは78%と、より高い香料保持力を示しました。
これは多価アルコールの疎水性ポケットが香料分子を保持し、高温でのロスを抑えたためと推察されます。
新規キャリア液体は医薬品グレード原料を使用するため、コストが上昇する可能性があります。
また長期吸入時の安全性データが不足しており、ラット90日吸入毒性試験やヒト臨床研究が求められます。
成分分析では未知の分解生成物を網羅的に検出する非ターゲット型LC/MS解析が必須です。
規格統一も重要課題です。
粘度の測定温度、せん断速度、試料前処理を国際規格ISO20768に組み合わせて標準化する提案がなされています。
これによりメーカー間で再現性の高いデータ共有が可能となり、市場全体の品質向上が期待されます。
今後は、AIを用いた分子設計プラットフォームで安全性・粘度・揮発性を同時最適化する試みが加速するでしょう。
また、生体適合性ポリマーをミセル状に分散させ、香料とニコチンをカプセル化する技術も台頭しています。
これにより、低温でも高い蒸気生成効率と味の安定性を両立できる次世代リキッドが誕生する可能性があります。
電子たばこ用新規キャリア液体の粘度制御は、ユーザー体験と安全性を左右する決定的要素です。
温度依存性を考慮した分子設計と、添加剤による流動性チューニングにより、従来VG/PG系を上回る性能が実証されています。
蒸気特性の詳細な評価には、粒径分布解析やリアルタイム収率測定が欠かせません。
今後は規格化と長期安全性データの蓄積を進め、持続可能かつ高品質な電子たばこ市場の形成が期待されます。

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