新任担当者必見！VOCフリー塗料と従来の塗料との違いと選び方

VOCフリー塗料とは？基礎知識から押さえよう

VOCフリー塗料とは、揮発性有機化合物（Volatile Organic Compounds, 略称VOC）を含まない塗料のことを指します。
VOCは、塗料や接着剤、洗浄剤など多くの製品に含まれてきましたが、大気汚染や人体への健康被害のリスクが指摘されてきました。
それに伴い、環境や健康への配慮が高まる中、VOCフリー塗料のニーズは年々増加しています。

従来の塗料にはさまざまなVOCが使われていますが、VOCフリー塗料はこれらの物質を含まない、もしくは極めて少量に抑えた製品です。
特にオフィスや学校、病院など室内の空気環境が重要視される場所での採用が広まっています。

VOCの問題点を理解しよう

VOCは塗布後に揮発し、室内外の空気中に放出されます。
これがいわゆる “シックハウス症候群” の原因物質の一つです。
長期間にわたりVOCを吸引すると、頭痛、めまい、呼吸器障害、アレルギー反応などを引き起こすことがあります。
また、VOCは大気中で他の物質と化学反応を起こし、光化学スモッグの原因ともなります。

これらのリスクから、国や自治体ではVOC排出規制が導入されており、今後もさらに厳しくなることが予想されます。
企業担当者としては、早めにVOCフリー塗料への切り替え検討が求められる時代となっています。

従来の塗料とVOCフリー塗料の主な違い

成分構成の違い

従来の塗料は、有機溶剤を使った油性塗料がメインでした。
この有機溶剤こそがVOCの主な発生源です。
一方、VOCフリー塗料は水性塗料が多く、溶剤の代わりに水が使用されています。
これにより、VOCの発生を大幅に抑えることが可能です。

最近では、高性能な水性塗料や、完全にVOCを含まない無溶剤型塗料なども登場しています。

安全性・環境性能の違い

VOCフリー塗料は、人体への影響が少なく、作業時のにおいや刺激も軽減できます。
また、施工現場周辺や完成後の室内空気質向上にも寄与します。
環境負荷を低減できるため、企業のCSR活動やSDGsへの取り組みとしても評価されます。

作業性・乾燥時間の違い

従来の油性塗料は、乾燥時間が長く、においが強い傾向がありました。
VOCフリー塗料の水性タイプは、乾燥が比較的早く、においも弱いため、近隣への影響も小さいです。
ただし、低温や湿度が高いと乾燥時間が伸びることがあるので、施工スケジュールには注意が必要です。

価格帯の違い

一昔前はVOCフリー塗料が高価でしたが、最近は生産量増加や技術革新により、価格が従来塗料と同等レベルまで下がっています。
長期的には、環境法規制への対応コストや健康被害のリスク低減分を考慮すると、VOCフリー塗料が経済的にも有利となるケースが増えています。

VOCフリー塗料のメリットを詳しく解説

健康被害リスクの低減

施工従事者や居住者への健康被害リスクが大幅に減少します。
とくに学校や病院、福祉施設といった衛生基準が厳しい現場でのメリットは大きいです。

環境規制への対応の容易さ

環境規制は年々強化されており、今後もVOC排出管理は重要な課題です。
VOCフリー塗料を選ぶことで、最新の規制にも柔軟に対応が可能です。

企業イメージやCSR向上

「環境にやさしい塗料を採用しています」とアピールすることで、企業イメージUPやSDGsへの取り組み強化につながります。

扱いやすさ・においの軽減

溶剤臭が少なく、現場作業員のストレス要因が軽減されます。
施工現場の近隣への配慮や、店舗・テナントの営業継続にも有利です。

VOCフリー塗料のデメリットもきちんと把握しよう

耐久性の違い

一部の用途や塗料種類によっては、従来の溶剤型塗料より耐久性がやや劣る商品も存在します。
特に、屋外や過酷な環境下では、製品選びに注意が必要です。

色やツヤの選択肢

VOCフリー塗料も進化していますが、一部の特殊な色や仕上がりが選びにくい場合があります。
事前にカタログやサンプルで確認することが大切です。

施工条件への影響

水性塗料では気温や湿度の影響を受けやすく、季節や現場の条件次第で作業計画に工夫が求められます。

メーカー・製品による性能差

VOCフリー塗料はメーカーごとに性能に差があります。
必ずメーカーの技術資料や実績をチェックしましょう。

VOCフリー塗料の選び方・チェックポイント

用途にあった塗料を選ぶ

内装・外装、木部・コンクリート・金属など、塗装対象や立地条件によって最適な塗料は異なります。
「VOCフリー＝万能」ではありませんので、使用目的を明確にして選定しましょう。

製品のVOC含有量を確認する

“VOCフリー” と表記される製品であっても、完全にゼロでない場合もあります。
国内外の環境基準（たとえばF☆☆☆☆やEPA規格など）を参考に、含有量データをチェックすることが重要です。

環境ラベルや認証の有無

「エコマーク」や「グリーン購入法適合」等の環境ラベル取得製品は、品質保証や選定の参考になります。
第三者認証があるかも、安心できるポイントです。

施工会社へのヒアリングも大切

塗装現場の経験が豊富なプロの意見も参考になります。
実際の施工性や過去のトラブル事例についても相談して、適切な塗料選びに役立ててください。

新任担当者が押さえるべきVOCフリー塗料導入の手順

1. 現状の塗料使用状況を棚卸し

現場ごとに現在利用している塗料の種類、総量、用途をリストアップしましょう。
VOCの排出量も簡易的に把握しておくと比較しやすくなります。

2. VOCフリー化した場合のコスト・工程を試算

塗料費、施工費、乾燥時間、塗り重ね回数など、従来塗料との違いを見積ります。
必要に応じてサンプル施工や小規模テスト塗装も実施しましょう。

3. サプライヤーや施工業者との協議

VOCフリー塗料導入に積極的なサプライヤー・施工会社と協議し、ご要望や懸念点を相談しましょう。
万が一の不具合時の対応窓口も明示してもらうと安心です。

4. 環境・安全部門とも連携を

工事部門や施設管理部門だけでなく、環境管理部門や安全衛生管理部門とも情報を共有しましょう。
法令遵守や社内ガイドライン策定にも役立ちます。

事例で見るVOCフリー塗料導入のポイント

オフィスビルの内装更新ケース

従来は油性塗料使用で塗布後の臭気残留や揮発成分により、入居テナントから苦情が出ていました。
VOCフリー塗料に切替後は、施工後すぐに入居可能となり、作業効率もアップ。
環境報告書でも削減効果を明記でき、顧客・地元行政からも高評価を獲得しました。

小学校の校舎リニューアル事例

児童の健康被害リスクを減らす目的で、校舎内壁をVOCフリー塗料に全て変更。
工事期間中も授業を継続でき、校長やPTAからも好評を得ました。

製造工場の設備メンテナンス実践例

工場の安全・衛生基準順守のためにVOCフリー塗料を導入。
換気設備の負荷や排気設備管理コストも削減できたため、トータルコストでの優位性が認められる結果となりました。

まとめ：VOCフリー塗料は選択肢の一つから新常識へ

VOCフリー塗料は、従来の塗料と比較して環境負荷や健康リスクを大幅に低減できるだけでなく、持続可能な社会実現や企業価値向上の観点からも、今後の塗装現場において主流になっていくでしょう。

また、製品バリエーションが拡大し、コストや性能面でも大きく進化しています。
新任担当者の方はまず現行の塗料利用状況を見直し、最新のVOCフリー塗料製品と従来塗料の違いをしっかり比較検討することが肝要です。

環境・社会・健康への配慮、そして技術進化を踏まえた最適な塗料選定を進め、新しい時代の塗装現場をリードしていきましょう。