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DRBFMの進め方と不具合未然防止実践のポイント

目次
はじめに:現場で求められる真の「未然防止」とは
製造業、とりわけ日本のものづくりの現場では、長年にわたり「不具合の未然防止」が強く叫ばれてきました。
しかし、昭和の時代から続くアナログな体質や、個人の経験値頼みのやり方からなかなか抜け出せず、「本当の未然防止」が実現できていない現場が少なくありません。
そんな中、近年改めて脚光を浴びているのがDRBFM(Design Review Based on Failure Mode:故障モードに基づく設計レビュー)というアプローチです。
欧米では自動車産業を中心に根付いていますが、日本の製造現場もグローバル競争の波やサプライチェーンの多様化で、より「論理的な設計レビュー」の重要度が増してきました。
本記事では、20年以上もの現場経験から得た知見をもとに、DRBFMの具体的な進め方や、不具合を本質的に未然防止するための実践ポイントを、現場目線で解説します。
「未然防止の本質とは何か」を俯瞰しつつ、デジタル化の遅れがちな業界ならではの課題にも目を向け、ラテラルシンキングで新しい地平を切り拓くヒントも提示します。
DRBFMの基本と従来型レビューとの違い
DRBFMとは何か
DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、その名の通り「故障モード(FMEA的視点)」を切り口にした設計レビュー手法です。
設計変更や新規設計が既存構造・工程・システムに影響を及ぼす際、「どこが変わって、どんな潜在リスクが生まれやすいのか」を深掘りします。
従来のチェックリスト消化型や、カタログスペックの確認だけでは見逃しやすい”現場の暗黙知”を形式知化することが特長です。
従来レビューとの根本的な違い
従来型の設計レビューは、施工図面や仕様書の「確認」「承認」がゴールになりがちです。
往々にして「この手順で進めればOK」「〇〇さんが言うなら大丈夫」といった雰囲気が先行し、広範囲のリスク洗い出しが不十分になりやすい。
ISOやIATF要求の形式だけ満たして終わり…そんな光景は今でも多くの現場に残っています。
一方、DRBFMでは設計者、品質、現場、生産技術、調達担当など多職種が集い、「何がどう変わって、何が潜在的なリスクなのか」「どんな『気になる』点があるか」を徹底的に議論します。
知識や感覚のズレを表面化させ、リスクを言語化・整理する点が非常に現場実践的です。
DRBFMの進め方
1. 変更点の明確化
まず、「今回の設計・工程の何が従来と変わったのか」を明確に洗い出します。
たとえば、寸法公差の微調整、使用部品メーカーの変更、新規材料の採用、設備設定値のシフトなど、「この程度なら大丈夫だろう」という小変更ほど、思わぬトラブルの温床になるケースがあります。
ここでは設計者の「現場での経験値」や「ローカルなノウハウ」を共有させ、現物や現場写真も使いながら、具体的な変更点をリスト化しましょう。
2. 変更点が波及しうるリスクの洗い出し(故障モード分析)
洗い出した変更点ごとに、どんな故障・不具合・不良発生のリスクがありうるかを考えます。
FMEA(故障モード影響解析)と似ていますが、大切なのは
– 過去事例の本質的な原因
– 現場で見つかった「ちょっとした違和感」
– ベテラン作業者が持つ肌感覚
までをテーブルに載せ、徹底的に「なぜ?なぜ?」を突き詰めることです。
DRBFMの場は、「言いづらいこと」「今更なこと」「形式的な指摘」に遠慮せず発言できる空気づくりが不可欠です。
3. 変更点ごとの対策案の議論・設定
繰り返しになりますが、「起こりうるリスク」ごとに「どこまでやれば安心か」の基準を明確に示すことが重要です。
現場でできる具体的な条件設定、測定方法、管理手順、作業指示などを確定させましょう。
調達・購買部門であれば、サプライヤーとの情報共有内容や認証フローのあり方まで議論の視野を広げるべきです。
不具合未然防止の現場実践ポイント
「既存知」「現場の当たり前」の再点検
多くの不具合は「この程度は大丈夫だろう」「今までもこうだったから」という思い込みに起因しています。
DRBFMを有効活用するには、昭和期からの「現場慣れ」との決別が不可欠です。
たとえば、「部品の仕入先を変えたが、寸法公差は同じだから問題なし」と思い込む前に、そのメーカー独自の製造習慣や材料特性差など、「発生源の違い」に注目してください。
設計や調達の現場こそ、「本当に大丈夫か」「なぜ変更が必要だったか」「過去に発生したトラブルの本質は何だったか」を徹底的に棚卸ししましょう。
小さな違和感・暗黙知の形式知化
現場やベテラン作業者が感じる「なんとなく気になる」「いつもと何か違う」などの感覚は、一見取るに足らないようでいて、重大な不具合の兆候であることが珍しくありません。
DRBFMの議論では、こうした微細な違和感やヒヤリハット、設備の動きの鈍さ、現場指示の解釈ばらつき、といった情報を決して軽視しないことがポイントです。
「形式知化することで誰もが気づける」
これが、属人的になりがちな日本型ものづくりからの脱却につながります。
社内外での情報共有体制のアップデート
調達・購買の立場では、サプライヤーとの意思疎通がしばしば壁になります。
たとえば、「図面が読めていても、その意図までは伝わっていない」あるいは「不具合情報の伝達が遅れがち」といった現象です。
DRBFMの内容は、バイヤーだけでなくサプライヤー側でも共有してこそ初めて威力を発揮します。
「調達部門の一存ではなく、設計・現場も巻き込んだ会議体で、DRBFMの観点を随時すり合わせる」
これが、今後のものづくりサプライチェーンの新常識となります。
昭和的アナログ現場への適用課題と打開策
なぜDRBFMが根付きにくいのか
現場のリアルな悩みとして、「DRBFMをやっても結局通常のレビューに戻ってしまう」「形式だけで終わる」「忙しい現場に負担感」という声は非常に多いです。
背景には
– 現場主導文化(上が決めた方針が浸透しづらい)
– IT化の遅れ(資料や情報の一元管理ができていない)
– ベテラン頼りの現場(暗黙知のまま属人的運用)
といった根強い課題があります。
実践現場での突破口
これを打開するには「ラテラルシンキング(多面的視点)」が不可欠です。
– DRBFM実施を「会議」とせず、日常の朝礼や工程内ミーティングのアジェンダに組み込んでいく
– 過去不具合の発生個所に現場メンバーが自分で付箋を貼るワークを取り入れる
– 設計・生産現場・調達の壁を破って「プロジェクト型」でメンバーをアサインする
– 自動化やIoTの知見も取り入れ、現場にデータが自動で集まる仕組みからリスク分析につなげる
このように「DRBFM=特別な会議」から「現場感覚とデータを融合した未然防止活動」へと発想を転換させなければなりません。
バイヤー・バイヤー志望者・サプライヤーへのメッセージ
バイヤーは単なる「仕入担当」ではなく、「設計・現場の暗黙知」をサプライチェーン全体に橋渡しするキーパーソンです。
DRBFMを現場視点で具体化し、サプライヤーにも粘り強く落とし込める人が、今後ますます重用されます。
サプライヤーの立ち位置でも、「バイヤーがなぜそこまで気にするのか」「なぜ設計変更時に何度も意見を求められるのか」の背景思想を理解することで、上流工程で信頼を勝ち取ることができます。
ものづくりの発展には「みんなで気付いて、みんなで未然防止」。
DRBFMをただの形式業務にせず、「現場の気づきを形式知に」「違和感を大切に育て、言語化して共有」する文化を、一歩ずつ積み上げていきましょう。
まとめ:現場発「ラテラルDRBFM」で未来を切り拓く
製造業における不具合未然防止の本質は、「小さな違和感から未来の大事故を防ぐ」ことにあります。
DRBFMはそのための優れたツールですが、使いこなすには「現場の感性」「部門を超えた横断力」「サプライヤーとの真の共生関係」が不可欠です。
デジタル化・自動化が急速に進む中、「昭和型アナログ文化」の経験知も大切にしつつ、その知見を組織全体の価値へアップロードする。
これこそが、これからの日本のものづくりが世界と伍していくための「ラテラルシンキング型DRBFM」の第一歩です。
今日から、現場での小さな発見を、誰もが気軽に発言し合える土壌を作っていきましょう。
それが、未来の不具合ゼロ社会、ひいてはものづくり産業の底力となります。
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