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輸入税関でのロイヤルティ加算漏れによる追徴リスクの予防策

目次
はじめに:製造現場に潜む「ロイヤルティ加算漏れ」リスク
製造業の調達購買部門やバイヤーが直面する課題のひとつに、輸入税関におけるロイヤルティ加算漏れ問題があります。
この問題は単に関税の支払い漏れのリスクにとどまらず、長期的なサプライチェーンマネジメントに深刻なダメージを及ぼすこともあります。
昭和の時代から続く“見えない経費”や“口約束”文化が根強く残る中で、企業の成長を阻害しないためにも、このリスクへの理解と対策は必須です。
本記事では、現場目線を重視しつつ、具体的なリスクと実践的な予防策について深掘りします。
また、バイヤーだけでなくサプライヤーの立場で「バイヤーは何を見ているのか」という観点も紹介します。
ロイヤルティとは何か?輸入税関における課税の仕組み
ロイヤルティ(Royalty)の定義と課税対象
ロイヤルティとは、一般的に「知的財産権」の使用料を指します。
製造業であれば、製品の特許権や意匠権、ブランド使用料、技術指導料などがこれに該当します。
海外サプライヤーからの物品輸入時に、輸入商品に紐付くこれらの権利料を支払った場合、原則としてそのロイヤルティも「関税評価額」に加算しなければなりません。
税関法、WTOバリューコード、通達などにより定義されています。
ロイヤルティ加算漏れが起こる典型パターン
・知財使用契約が購買契約と別書面のため、調達担当が見落とす
・ロイヤルティが「技術指導料」や「コンサルティング費用」など別名称になっている
・サプライヤーとは日本法人を介さず親会社―子会社で直接的な支払いになる
・中国・東南アジアなどでのアフターサービス契約の中に実は知財利用の対価が含まれている
・昭和的な業界慣行で「申告しなくてもバレない」の意識が残っている
これらのパターンは、往々にして現場の申告担当やバイヤーが気付きにくく、後日税関から指摘を受け多額の追徴を課せられる原因となります。
追徴リスクの正体:現場の“無自覚”が招く経営ダメージ
過去事例に学ぶ「加算漏れ」トラブル
実際に過去、大手自動車メーカーや電機メーカーなど多くの企業で、ロイヤルティ加算漏れにより数億円単位の追徴課税が課されたケースが報道されています。
経営上のインパクトは数字だけではありません。
・監査対応で管理部門や現場が長期間通常業務に従事できなくなる
・サプライヤー・顧客関係の信頼崩壊
・社内稟議プロセスや調達BPRの全面見直し
・担当者個人への懲戒や異動
昭和から抜け出せていないアナログな業務プロセスや「先輩のやり方をそのまま踏襲」の文化も根底にあり、このリスクは全ての製造業企業にとって他人事ではありません。
なぜロイヤルティの取り扱いは難しいのか?
・契約が多岐にわたり、条項ごとに税関解釈が異なる
・技術移転や知財利用と、単なる一般的サービスが区別しづらい
・グループ会社間取引で複雑な価格設定
・「これは非加算でよい」という過去通例に頼ってしまいがち
これらの理由から、加算漏れリスクへの組織的なアプローチがますます重要となっています。
知らなかったでは済まない!ロイヤルティ加算の判定ポイント
バイヤーが押さえるべき3つの基準
1. **「商品に紐付く知財であるか?」**
輸入商品を日本で製造・販売・使用する際に特定のロイヤルティ・技術を使わなければ成立しない場合は、原則課税対象となります。
2. **「支払い相手と契約関係」**
サプライヤー本人またはその利害関係者等への支払いは、加算対象になることが多いです。
3. **「支払い方法・名目」**
支払い時期が納入時でなく分割でも、名目が実際の商品価値とかけ離れる“大きなコスト”になっていれば税関から疑念を持たれやすいです。
判定がグレーなケースの扱い
複数商品への一括ロイヤルティ、大量購入による“無償技術付与”、商流が複雑なグループ内取引などはとくに要注意です。
バイヤー・調達・税務部門が連携し、書面・証憑の整理が大切です。
加算漏れを予防する、現場目線の具体的アクション
1.契約書レビュー体制の整備
購買契約、技術契約、各種覚書・協定書はすべて「税関評価」の観点で再レビューしましょう。
法務部・税務部・経理部の関与をルーチン化し、「この契約の中にロイヤルティ要素がないか?」というチェック項目を必ず入れます。
また、形式だけでなく実際の金途の流れも棚卸しが必要です。
2.社内教育とナレッジ共有の徹底
ロイヤルティ加算漏れのトラブルは、担当者の世代交代・異動時にリスクが増大します。
定期的なeラーニングや研修、社内マニュアルの整備を推進しましょう。
特に「なぜこれが問題なのか」現場目線の具体事例を交えて伝えることが有効です。
3.国内外サプライヤーとの情報連携
サプライヤーにも、日本の税関評価の考え方を説明した上で、
・支払先
・支払時期
・名称(英語、中国語など他言語も含む)
について透明性を高めます。
サプライヤー側も、バイヤーが取り組んでいるリスク回避策を「自社も実践できているか?」見直す良い機会になります。
4.社内監査・サンプルチェックの実施
プロジェクト単位、商品ラインナップ単位などで“抜き打ち”での証憑・契約の巡回監査を実施し、加算漏れにつながる契約の“芽”を積みましょう。
とくに昭和時代から代々残るアナログな契約書を掘り起こすことが肝要です。
5.外部専門家との連携
税関解釈にグレーが多い部分は、積極的に専門弁護士や税理士へ相談することを推奨します。
外部コンサルの診断を定期的に受けることで、社内にナレッジ・安心感を蓄積できます。
サプライヤー視点:バイヤーの「ロイヤルティ・リスク感度」が高まる理由
海外・国内サプライヤーの立場から見ると、「なんで最近バイヤーはロイヤルティや契約管理に細かく口を出すのか?」と感じる場面も増えています。
その背景には
・企業ガバナンス向上への潮流
・国際監査の厳格化
・社会的責任(CSR、透明性、SDGs等)重視への流れ
があり、もはや“見逃して済ませる”雰囲気は消えています。
サプライヤー自身も、想定外の追徴や販売契約の見直しリスク回避のため、バイヤーと一体となった制度理解と開示が求められます。
デジタル化・標準化:昭和アナログ体質から脱却を
電子契約・文書管理の導入
紙ベース・非統一書式の契約書や覚書保管は、加算漏れリスクの一大温床です。
電子契約、クラウドドキュメント管理など、真正性・追跡性の高いシステム導入が急務です。
税関等監督機関への提出もしやすくなります。
ERP・調達システムとの連携活用
最新のERP・SRMでは、「ロイヤルティ項目」「支払契約情報」をマスター管理でき、アラートやワークフローで抜け漏れリスクを減らします。
現場担当者の負担軽減と同時に、ガバナンスの高度化も推進できます。
おわりに:現場で積み上げる「加算漏れゼロ」のカルチャー
ロイヤルティ加算漏れへの対策は、
・調達・経理・法務・製造の横断的連携、
・現場からのボトムアップ型の気付き、
・デジタルシステムによる仕組み化
この三位一体が肝です。
古き良き昭和の現場力も活かしつつ、グローバル水準の法令遵守と業務可視化を進めていきましょう。
まずは、自社の契約や支払い実態を見直すことから始めましょう。
業界全体で“安心して輸入ビジネスに集中できる”風土を築き、製造業の発展へと繋げていきたいと思います。
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