- お役立ち記事
- 危険物クラス9(電池等)の誤分類で起こる積載拒否の事前防止
危険物クラス9(電池等)の誤分類で起こる積載拒否の事前防止

目次
危険物クラス9(電池等)の誤分類で起こる積載拒否の事前防止
はじめに
製造業の現場では、日々さまざまな製品や部品が世界中へと出荷されています。
特に近年、電池などの危険物クラス9に分類される製品の取引が加速するにつれ、物流や輸送における「積載拒否」という問題が表面化しています。
積載拒否とは、貨物が適正な分類・表示・梱包をされていない、または必要な書類が揃っていないことで、運送会社や船会社が貨物の引き受けを拒否する事態を指します。
これはサプライチェーン全体の停滞はもちろん、企業ブランドの毀損や重大な損失へとつながるリスクを孕んでいます。
本記事では、現場目線に立ち、危険物クラス9の誤分類による積載拒否がなぜ起こるのか、そしてどうすれば事前に防ぐことができるのかを解説します。
危険物クラス9(Miscellaneous Dangerous Substances)とは
クラス9に該当する主な製品
危険物クラス9は、国連の「危険物分類(UN分類)」でMiscellaneous Dangerous Substances and Articles(その他の雑危険物)と定義されています。
リチウムイオン電池、リチウム金属電池、大型バッテリー、エアバッグ、ドライアイスなど、多岐に渡る物品が分類されます。
とりわけリチウム電池は、モバイルデバイス、医療機器、それに産業用ロボットや電動工具など幅広い用途で使用されているため、製造業における調達購買担当者やバイヤー、サプライヤーは、その適正な取り扱いが求められます。
なぜクラス9が厄介なのか?
クラス9は一見「その他」に整理されがちですが、輸送に際しては危険性(火災、爆発、有毒ガスなど)の観点から厳格な規制と書類整備が要求されます。
法律、国際条約(IATA、IMDG、ADR等)、国毎の独自ルールといった複雑なレイヤーが入り混じり、通例通りの出荷手順では通用しない点も多く、現場の負担や理解不足が誤分類の温床となっています。
積載拒否の主な原因
1. 危険物分類ミス
代表的なのは「該当品なのに危険物として申告していなかった」または「本来該当しないのに危険物として申告してしまった」という二極パターンです。
前者は物流業者側の書類チェック時点で発覚することが多く、後者は不必要な書類や追加費用の発生を招きます。
2. 必要書類の不足・誤記載
SDS(Safety Data Sheet)、輸送用の適合証明書(Test Summary)、危険物申告書(DGD)などの不足、形式ミス、内容の矛盾などは積載拒否を引き起こす大きな要因です。
特にSDSとDGDの記載内容が齟齬をきたしているケースはよくあります。
3. 表示・ラベリング不備
梱包箱に貼付する危険物ラベルやマークの貼り間違い、必要なマークの未添付も「拒否」案件につながります。
電池の場合はUN番号や容量表示も細かく義務付けられており、その都度運用を最新の規定に合わせて見直す必要があります。
4. 梱包仕様の不適合
規定外のダンボール、誤った仕切り材、不十分な絶縁など、梱包仕様がルールに満たないため積載拒否となる例があります。
特に輸出案件の場合は、国際基準(例:UN規格箱やDrop Test通過証明)をきちんと担保する必要があります。
昭和的“現場任せ”が生む落とし穴
「慣習」の罠と属人化リスク
日本の製造業、とりわけ老舗企業や下請けを抱える工場では、「このやり方でずっとやってきた」という昭和的発想がいまだ根強く残っています。
前任者が手書きで作った申告書のコピーや、口頭伝承だけで承認が下りているといった企業風土が、気づかぬうちに致命的なミスへとつながります。
また、危険物に精通したベテラン担当者が退職、異動となった場合、知見の共有がうまくされず、現場力が一気に低下する“属人化リスク”も大きな問題です。
アナログ現場に今も残る「申告書の二重管理」
現場ではいまだに、手書きの書類でリスト管理を行い、それをPCで再度入力し直しているケースも多く見かけます。
このような二重管理は、転記ミスや申告内容の不統一を生み、積載拒否のリスクが上がるだけでなく、社員の働き方改革とも逆行しています。
積載拒否を防ぐための現場起点のプロセス見直し
1. 最新ルールの定期確認と人材教育
国際的な危険物輸送規則は毎年のように更新されます。
「去年と同じで大丈夫」は通用しません。
調達部門、生産管理部門、物流担当者、さらには営業・設計部門までを巻き込み、毎年のアップデート内容を必ず共有する体制を作りましょう。
また、危険物に関するeラーニングや外部専門家による研修を年1回以上実施し、誤分類リスクを知識と現場力とで最小化してください。
2. SDS(安全データシート)の一元管理・電子化
現場では複数メーカーの電池を扱うため、SDSをフォルダで物理管理しているケースがあります。
これでは最新版かどうかの判定が困難です。
クラウドツールや文書管理システムでSDSを一元管理し、誰でも最新版を参照できる環境を作るべきです。
さらに、外国語での提出が必要な輸送先向けには、公式翻訳やメーカー発行の多言語SDSの入手も怠らないことが重要です。
3. 書類作成プロセスのデジタル化・標準化
危険物申告書(DGD)やTest Summary等、書類作成時はテンプレート化とデジタル入力を徹底し、手書きやコピー貼り付けを極力減らします。
抜け漏れ防止や書式自体の誤りを抑制できるだけでなく、後工程(物流業者や通関先)との電子データ連携もスムーズに行えます。
加えて、書類作成時は必ず第二者チェックや「クロスチェックのルール化」でヒューマンエラーの芽を摘むこともポイントです。
4. 技術部門・開発部門との連携強化
新商品投入時や電池スペックの変更時は、速やかに危険物分類の再判定を行い、SDSや梱包仕様書への反映までをワンストップで連携できる体制を構築しましょう。
生産現場・物流現場と、設計・技術側がバラバラの組織内で動いていると、情報共有が間に合わず、旧仕様で出荷してしまい積載拒否に繋がることもあります。
5. 現場視点での仕組み化と仕掛け作り
たとえば、「出荷前チェックリストの活用」や「新規該当品出現時の必須申告フロー登録」など、現場で日々運用できる仕組みや見える化、PDCAサイクルの導入が重要です。
これにより、経験則だけに頼らない“仕組みで守る製造現場”を目指すことができます。
サプライヤー、バイヤー双方のWin-Winの実現へ
「買う側」のバイヤーの本音
バイヤーとしては、安定供給とコスト競争力が最優先となりますが、危険物対応に弱いサプライヤーに依存すると、納期遅延のリスクが増大します。
また、一度でも法令違反や積載拒否で「荷物が止まった」事例があると、今後の付き合い方に大きな影響が出ます。
サプライヤー側は、「うちの商品は問題なく輸送できる・積載拒否されない」という信頼性を定量的に伝える工夫が必要です。
納入仕様書や提案書に、「危険物対応体制」「主要書類の最新版整備」「積載拒否ゼロ実績」などの項目を記載し、購買部門の選定材料となるようアピールしましょう。
「売る側」サプライヤーの本音
サプライヤーとしては、バイヤーから求められる危険物関連対応が煩雑に感じることも多く、「追加コストの説明」と「安全・安定供給の信頼打ち出し」が課題になります。
しかし、一度積載拒否や法令違反事例が発生すれば、取引自体が停止となり、信用回復には相当な時間と労力がかかります。
慎重な対応と社内啓蒙の両立が最も重要です。
最終的なまとめ 〜 自社の競争力につながる危険物管理〜
危険物クラス9(電池等)の誤分類による積載拒否は、単なる現場トラブルにとどまらず、企業の信用・サプライチェーン強化・コスト競争力といった経営の根幹に直結します。
昭和的なやり方や属人的な現場力ではなく、「知識のアップデート」「プロセスの見える化」「仕組みによる統制」の観点で、日々の業務プロセスを見直すことが欠かせません。
高度な専門知識を持つ人財の育成、ITと現場力を融合したデジタル管理、
そしてメーカー・サプライヤー・バイヤーの立場を横断的に理解することこそが、これからの製造業に不可欠な「実務力」と「競争力」になります。
致命的なトラブルが起きてから気づくのではなく、積載拒否を“ゼロ”にする体制整備に今すぐ着手しましょう。
それが製造業の現場を未来につなげる新たな地平線となるはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)