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働きがいのある職場づくりが製造業のSDGs目標に与える影響

目次
はじめに:製造業とSDGs、そして「働きがい」
近年、製造業を取り巻く環境は急速に変化しています。
グローバル化、IT化、人材不足、サプライチェーンの多様化──。
多くの現場担当者やバイヤー、サプライヤーがこうした波に直面し、従来以上に企業の「持続可能性」が問われる時代となりました。
国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)は、企業活動の新たな物差しです。
その目標の一つである「働きがいも経済成長も(目標8)」は、特に製造現場において重要性を増しています。
現場のベテランが培った習慣や価値観が根強く残る一方、時代の変化に向き合う柔軟な発想も必要です。
この記事では「働きがいのある職場づくり」がなぜ製造業のSDGs推進に不可欠なのか、現場目線で深く掘り下げていきます。
バイヤー志望者やサプライヤー担当者にも役立つ、最前線の知見を盛り込みます。
昭和から変われない現場が与える「働きがい」への影響
なぜ日本の製造現場はアナログから抜け出せないのか
製造業の現場にはいまだ紙帳票や「伝票ハンコ文化」が根強く残っています。
これらの習慣には理由があります。
たとえば、不正を防ぎやすい、担当者の責任範囲が明確になる、工程ごとの仕事の「区切り」を明示できる、などの利点です。
しかし現実には、「前例踏襲=安心安全」から外へ出るのが怖い、もしくは変化に対応するためのリソースやインセンティブがない、といった消極的要素のほうが大きいように感じます。
属人化と多重チェックに潜む“働きがい”の阻害要因
現場が属人化していると、新しいことにチャレンジする余力が生まれにくくなります。
熟練担当者の技の継承、品質維持への真摯な姿勢は立派な伝統ですが、一人の担当者が全責任を抱え込む体制は、実は「働きがい」の低下につながります。
若手や中途入社者は自分らしさを発揮しづらく、ポジションチェンジも難しくなり、やがて現場に閉塞感が漂い始めます。
こうした職場では、「与えられた作業だけをこなす」意識が蔓延し、本来の生産性を高める工夫や現場改善の提案が出にくくなってしまうのです。
「働きがいのある職場」がSDGs達成に貢献する理由
SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の現場的解釈
SDGsの目標8は、単なる人員確保や経済的発展だけでなく、ひとりひとりの生きがいやキャリアの成長といった「働きがい」そのものに重きを置いています。
現場で働く一人ひとりが役割を持ち、評価され、成長を実感できる環境を用意することが、持続的な発展につながるのです。
定着率・生産性への影響
働きがいのある職場では、従業員のエンゲージメントが高まり、離職率が大幅に減少します。
離職・採用のコストは直接的な経費だけでなく、ノウハウや技能の消失という大きな負債を生みます。
「育てた人材が辞める=最大の損失」なのです。
また、エンゲージメントが高い現場ほど、自発的な改善活動や品質向上のアイデアが生まれやすくなります。
結果として、現場に根付いた改善文化が生産性を底上げし、競争力となっていきます。
トレーサビリティとコンプライアンスの強化にも直結
サプライチェーン全体で「持続可能性」が求められる時代。
不祥事や不正発覚が重大な企業リスクになるなか、現場で働く人々が「自発的に・誠実に」法令順守を徹底する文化はSDGs実現の基礎となります。
これを支えるのが、納得感のある人事制度、意見が言いやすい職場風土──すなわち「働きがいのある」環境そのものです。
ダイバーシティ推進とイノベーション
多様な人材が活躍できる現場では、慣習や常識にとらわれない新しい発想が生まれます。
これは製造業におけるイノベーションの土壌となり、SDGsの他の目標(産業と技術革新、ジェンダー平等など)にも波及的な効果を与えます。
製造現場の「働きがい」を高める具体的アクション
現場改善活動(KAIZEN)の本質を見直す
日本の製造業には改善活動(KAIZEN)が根付いていますが、ともすれば「形だけ」の活動に終わる場合もあります。
現場から自発的に上がる「困りごと」「やりたいこと」を掘り起こし、一緒に解決していくことが重要です。
たとえば、小集団活動や提案制度を活性化させるためには、部門横断での壁打ちやメンタリングを定期的に実施し、成果をきちんとフィードバックすることが鍵となります。
改善提案が上層部によって即却下されることが続けば、現場はすぐに冷え込みます。
DX推進とアナログ慣習の共存
IoTやAI導入などDX(デジタルトランスフォーメーション)は大きな潮流です。
しかし一朝一夕にすべてをデジタル化するのは現実的ではありません。
紙台帳や伝票チェックが根付いた現場では、まず「何をデジタル化すれば最も楽になるのか」を現場目線で洗い出す活動から始めることを推奨します。
パートタイムやベテラン層への丁寧な説明も絶対に欠かせません。
DX導入で生じる「ジェネレーションギャップ」を埋めるためには、「昔のやり方も大切にしながら、未来に投資する」という姿勢が社内に必要です。
現場の声を無視したIT導入失敗例は山ほどあります。
人事制度と現場評価の見直し
「年功序列」や「現業職冷遇」といった昭和的評価軸から脱却し、役割や貢献、成果を適切に評価する人事制度の再構築が急務です。
特にラインリーダーや班長層の重要性を再認識し、OJT指導や現場改善への貢献度を人事考課に反映させることが、全体のモチベーションを底上げします。
また、現場スタッフから管理職へのキャリアパスも明確にし、多様な生き方・働き方を認める姿勢が「働きがい」につながります。
メンタルヘルスと心理的安全性の確保
工場は身体的な安全対策には力を入れがちですが、「心理的安全性」の確保はまだ発展途上です。
意見を自由に言える風土づくり、失敗を咎め合わない文化の醸成には、現場リーダー層のコミュニケーション能力が問われます。
定期的な1on1面談や、現場リーダー向けの傾聴・対話トレーニングなど、小さなアクションの積み重ねが効果を生みます。
バイヤーやサプライヤーが押さえておくべき「働きがい」視点
サプライチェーン全体での人権・労働環境対応
今や大手メーカーの調達部門では、自社だけでなくサプライヤー各社の「働きがい」「労働環境」「人権対応」まで問われる時代です。
CSR調査や現地監査で「従業員の定着率」「改善提案制度の有無」「女性や高齢者の活躍状況」など幅広い項目を求められます。
下請け企業が「うちはこんな小規模だから…」と言い訳で済ませてしまう時代は終わりつつあります。
バイヤーが求める“安心できるパートナー像”
調達責任者の視点では、価格だけでなく「現場が生き生き働き、能動的に改善している」サプライヤーのほうが長期的に安定供給できる、という安心感があります。
納期遅延、不良品流出、情報漏洩などのリスクヘッジとなるのは、現場文化や人材育成がしっかりしているサプライヤーです。
これは単なる「書面対応」の問題ではなく、現場の“空気”や従業員の表情、現場ヒヤリハットの量などからも如実に見て取れます。
まとめ:昭和から令和へ、現場主導で未来を切り拓く
製造業のSDGs実現において、「働きがいのある職場づくり」は避けて通れないテーマです。
現場を知り尽くした人材こそが、その価値を一番理解しているはずです。
変化に臆することなく、足元の職場から一歩ずつ改善を進めること。
現場の多様な声・価値観を受け入れ、「働いてよかった」と思える環境を、お互いにつくり出していくこと。
これこそが持続可能な製造業の成長につながり、SDGs時代を生き抜く“現場力”の本質です。
今このときも、現場には未来のヒントが眠っています。
まずは自分の「働きがい」を問い直し、現場をより良くする一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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