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消耗品OEMを通じて販路拡大を実現した企業の事例分析

目次
はじめに ― 消耗品OEMが生み出す製造業の新たな可能性
現代の製造業界は、かつてないほどの変革期を迎えています。
特に消耗品分野は、従来の大量生産・大量消費モデルから、より付加価値の高い製品開発や多様な販路拡大、外部とのパートナーシップによる創造的な商流の確立が求められるようになっています。
その中で注目されているのが、「消耗品OEM(Original Equipment Manufacturer)」を活用した販路拡大の取り組みです。
本記事では、長らく大手製造業で現場と管理の双方を経験した立場から、消耗品OEMに取り組んだ企業のリアルな事例分析と、そこから見える成功の本質を解説します。
「消耗品OEMって何がメリットなの?」「市場はレッドオーシャンじゃないの?」といった疑問に答えながら、現場目線のヒントやバイヤー視点の考え方も交えて紹介します。
消耗品OEMを取り巻く現状と業界動向
消耗品OEMとは ― パッケージの裏側で起きていること
消耗品OEMとは、自社名義ではなく、他社ブランド(バイヤー)の製品として消耗品を受託製造するビジネスモデルです。
例えばケミカル製品、フィルター、ウエス、潤滑剤、工具、メンテナンス部品、パッキンなどが対象となります。
仕様やパッケージはバイヤー側の要望に合わせ、自社の製造ノウハウや品質管理力を強みとして提供します。
この仕組みにより、販売先は自社ブランド(いわゆるPB=プライベートブランド品)を市場に流通させられる一方、製造側は技術資源を有効活用しながら、販路・売上を拡大できます。
昭和アナログからの脱却 ― OEMで変わる販売戦略
かつての製造業界は「自社ブランド至上主義」の傾向が強く、OEM提供を“下請”用語の文脈で捉える企業も多くありました。
しかし、近年はデジタル化のうねりや多様化する顧客ニーズ、購買プロセスの変容により、相互補完的な商流構築が重要視されています。
メーカー同士、バイヤー(商社、小売り、エンドユーザー企業)との垣根を越え、OEMによる共存共栄型のパートナーシップが新たな業界潮流となっています。
まさに「昭和アナログ」からのマインドチェンジが、生き残りと成長のカギを握っているのです。
消耗品OEMを活用した販路拡大の実例
事例① 工場用ケミカルメーカーA社 ― OEM受託で年間売上1.8倍に成長
A社は工場向けの洗浄剤や防錆剤を主力とする中堅化学メーカーです。
自社ブランド商品は品質に定評があったものの、新規販路開拓には壁がありました。
特に既存ディーラー網やカタログ販売だけでは、大手エンドユーザー企業への直接採用が進みませんでした。
そこでA社は、工場向け消耗品の専門商社と協議を開始。
商社のPB製品ラインナップ強化を目的に、OEM提供を決断しました。
この際、商社バイヤーの要望を徹底ヒアリングし、「コスト優先型(スタンダード仕様)」「環境配慮型(ノンVOC)」など、用途ごとに新規製品を開発。
専用パッケージやラベル供給、物流面の統合(受注・出荷のEDI連携)まで踏み込み、OEMを通じて商社の販路(Web販売、エンドユーザー提案営業、グループ全体への拡大)に組み込まれるようにしました。
結果、OEM経由で準大手~中堅製造業だけで年間20件を超える新規取引を獲得。
量産効果で原価低減も実現し、主力消耗品の売上は1.8倍に伸長しました。
この取り組みのポイントは、自社ブランドに固執せず、バイヤーの事業戦略を深く理解してOEM専用商品を積極的にカスタマイズした点です。
事例② 工業用フィルターメーカーB社 ― 得意技術を応用し異業界進出
B社は工場設備や自動車部品向けのフィルターを高精度で製造するニッチメーカーです。
国内市場の成熟化により競合が激化し、自社ブランドの拡販に限界を感じていました。
そこで営業チームは、業務用家電や医療衛生用品市場の大手代理店(バイヤー)との協業を打診。
「フィルター部材のOEM供給」という新ルートを確立しました。
異業界バイヤーのニーズを徹底的に探り、「既存の仕様をベースに消耗性能・異物捕集効率・コスト管理」について共同開発を推進。
また、一時的な物不足や災害時のサプライチェーン対応でも、OEM供給を柔軟化しバイヤーに安心を提供しました。
この事例のポイントは、B社の“得意技術”をベースに異業界へ横展開(ラテラルシンキング)したこと。
OEMという接点を活用して、多様な顧客価値の実現に踏み込めた点が成長のドライバーとなりました。
OEMを通じた販路拡大の成功要因分析
バイヤーとの信頼構築 ― 提案型OEMの必要性
OEM供給は単なる「受託生産」ではなく、最終的にバイヤーの販売戦略や顧客価値にどれだけ“寄り添えるか”が重要です。
発注側であるバイヤーの立場では、「売りたい商品像」「社内PB構想」「調達安定性」「コストバリュー訴求」等、多面的なミッションがあります。
サプライヤー(OEM製造側)は、これらのビジョンを汲み取り、以下のような提案型アプローチが求められます。
– コスト/品質/納期のバランスモデルの提示
– 「社内標準化」「グループ展開」などバイヤーの戦略に合わせた特注仕様
– ロゴ/パッケージ/カスタマイズ対応
– 小ロットから大ロットまで営利調整の柔軟性
– 新製品開発やSDGs・脱炭素対応
このように単なるモノづくり・コトづくりではなく、「顧客課題をどうソリューションに変えるか」という視点が、販路拡大や長期的なパートナーシップ構築には不可欠です。
“現場知見”の活用 ― 競合と差別化する具体策
消耗品OEM分野は、価格競争になりやすい側面もありますが、現場で培った知見や改善提案力が付加価値に直結します。
例えば、
– 工場現場での運用実績やトラブル事例を製品改良・新提案へ反映
– エンドユーザー現場の「本音」を吸い上げたカスタマイズ
– 異分野(食品工場・医薬・自動車等)と連動した技術展開
– 受注・物流EDI連携、在庫削減・納期短縮ノウハウ
– 環境規制や各種認証への調達対応
こうした「現場や工程に深く根ざしたアプローチ」が、ブランド力のないOEM供給でも高評価につながります。
サプライヤー側からの“ラテラル”な提案力が、レッドオーシャン市場でも選ばれる理由となるのです。
サプライヤー・バイヤー双方の目線で考えるOEMの今後
サプライヤー:OEMは「自社ブランド」から卒業するチャンス
これまでOEMは、「自社名が表に出ないから利幅も低いし、下請っぽい…」というイメージを持っている方も多いはずです。
しかしOEMの真の価値は「自社の生産技術を最大限に市場で生かせること」「他業界バイヤーとの協業で、技術進化・量産化の加速が狙えること」にあります。
“誰のために・どんな付加価値を作れるか?”というパートナー発想こそが、次世代の製造業には欠かせないと言えます。
バイヤー:OEM戦略は「コストだけの時代」からユーザー価値重視へ
消耗品バイヤーの立場で重要なのは、安定調達とコストだけでなく、自社ブランド(PB)を通じてエンドユーザーにどんな独自価値を届けられるか、という点です。
サプライチェーンの多様化・リスク分散、サステナビリティへの配慮など、複数観点からOEM先を選定することが一般化しつつあります。
サプライヤーと“共創型”の関係へシフトすることで、競合との差別化や中長期的な信頼関係も築くことが可能です。
まとめ ― OEMは「商流イノベーション」への第一歩
消耗品OEMを通じた販路拡大の成功事例は、単なる下請仕事の延長線上にはありません。
それぞれの企業が、現場で積み重ねた独自技術や組織力を生かし、バイヤー・顧客へ独自価値を提案し続けることで、従来の商流構造そのものが進化しています。
昭和アナログの「我が社が表に出るべし」の時代は終わり。
今やOEMパートナーシップは、サプライヤー・バイヤーともに“自分達になかった武器”を獲得し、次の成長を切り開く起点となっています。
皆さまも、今日からOEMというフィールドに「自社ならではの価値をどう乗せるか」を考えてみてはいかがでしょうか。
製造現場、それを支えるバイヤー・サプライヤーの双方にとって、未来を共創するきっかけとして、OEMの可能性をぜひ再認識していただきたいと思います。
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