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投稿日:2025年9月11日

製造業の国際調達における現地通貨決済のリスク管理

はじめに:製造業のグローバル化と現地通貨決済の現実

国際的な競争が激化し続ける現在、製造業も部材や生産設備の調達を世界規模で行うのが当たり前の時代に移り変わっています。

かつて昭和の時代には国内調達が大半を占めていた日本の製造業も、今やアジア・欧米・アフリカと、調達先が多様化しています。

このような動きの中で、バイヤーや調達担当者に新たな課題として突き付けられているのが「現地通貨決済」のリスク管理です。

円決済やドル決済に加え、現地パートナーの利便性や要望に応じて、現地通貨での支払いを求められるケースが急増しています。

本記事では、実際に現場で調達業務を担ってきた立場から、現地通貨決済における具体的なリスクや課題、そして管理・対応策をできる限り実践的に掘り下げていきます。

現地通貨決済の基本的なリスクとは何か

海外調達で現地通貨決済を選択した場合、必ず向き合うリスクがいくつか存在します。

為替変動リスク


最も分かりやすいのが「為替変動リスク」です。

発注から支払い、実際の商品納入までに為替レートが大きく変動する可能性があり、それによって日本円で考えた際のコストが想定を大きく上回る場合があります。

昨今の円安や金融市場の変動を一度でも経験した方であれば、このリスクがいかに現実的な脅威であるかは無視できません。

決済・送金リスク


現地通貨決済には、国や地域特有の送金制限や資金移動の難しさもついて回ります。

例えば発展途上国では、中央銀行の規制や外貨管理法規の変更によって、当初想定していたスムーズな送金ができなくなるケースも多々あります。

取引先の信用リスク


社会情勢の不安定な国の場合、取引先が突如倒産したり、納入や返金に応じてくれないリスクも増します。

現地通貨で支払いを完了した後にトラブルが発生すると、法的な回収も難しくなります。

通貨の信頼性・流動性リスク


世界では安定した通貨ばかりとは限りません。

マイナー通貨や流通量が少ない通貨の場合、資金の持ち出しや換金に想定外のコストや時間がかかることもあり得ます。

現場でよくあるリアルな課題

ここからは、海外調達の現場で実際によく見かける「想定外の落し穴」について紹介します。

見積書・契約段階の通貨表記ミス


バイヤー側とサプライヤー側で最初の見積金額の通貨表記を見誤ることで、最終的に大きな損失につながった例は後を絶ちません。

契約書の中で通貨が明確に確認されていなかったため、後から「米ドルと思っていたら現地通貨だった」という事態が発生することもあります。

細かい手数料やネットワーク遅延の影響


銀行の送金手数料、現地受取手数料、中継銀行手数料など、見積書には含まれていない諸経費が後から加算されて実質コストがかさむケースも多いです。

また、送金システム自体が想定よりも遅延し、その間に為替レートが逆方向に動いてしまうことも珍しくありません。

税制・法改正による急な調達難易度の変化


国によっては年度ごとに輸入規制や関税、送金規制がコロコロ変わることがあり、突然「現地通貨決済でないと輸入認可を出さない」といった政策転換が起こる場合もあります。

そうすると、急遽調達ルートの再編成やリスクヘッジが求められます。

日本の製造業に根付く「昭和的視点」が招くリスク

長く国内中心のビジネス構造が続いた日本の製造業では、今も昔も「できれば円決済」や「海外業者はドル建てで」という発想が根強く残っています。

しかし、現地サプライヤーとの信頼関係やコスト競争力を高めるには、柔軟な現地通貨決済が欠かせなくなっています。

ここに昭和的な「前例主義」「責任回避」の風土が混じると、「外為は経理に丸投げ」「細かな手続きは現場任せ」となり、大きなリスクが見過ごされる傾向もあります。

現実的なリスク管理術とその実践的ノウハウ

それでは、現地通貨決済にともなう各種リスクを現場でどのように実務として管理していけばよいのでしょうか。

20年以上の現場経験から、実用性を重視したノウハウを紹介します。

為替予約(ヘッジ)の徹底活用


為替変動のリスクを最小限に抑えるためには、為替予約を積極的に利用することが鉄則です。

多くの地方銀行やメガバンクが輸入為替予約サービスを提供しており、契約金額全体または必要部分を事前ロックできます。

調達部門単独で抱え込まず、必ず経理・財務との連携を強化しましょう。

定期的な為替情報のキャッチアップ


経営層や購買担当者が為替相場のニュースに敏感になるだけでも、リスク管理意識が高まります。

週次・月次の為替変動レポートを社内で共有し、全体のコスト構造を定期的に見直す仕組みを持ちましょう。

適切な契約書管理・交渉力強化


通貨、支払い条件、納期、遅延時のペナルティなど、契約書に日本語・英語両方で明記するルールを徹底させましょう。

現地の商習慣や法令も踏まえ、取引契約書に有事対応の条項(為替急変時の見直し条件など)を入れておくことが理想的です。

経理・財務・調達部門の“3点管理”


調達現場での支払い条件決定だけでなく、経理・財務部門も含めた三者のトライアングル体制が実効性のあるリスク管理を生み出します。

通貨別の支払い実績や損益・費用明細の共有化など、情報を細かく連携することが基本です。

サプライヤーとの信頼構築と情報交換


現地通貨決済は取引先との信頼感も大きく影響します。

サプライヤー側の現地事情や資金繰り状況など、密なコミュニケーションで小さな変化も早期に察知できる体制を構築しておきましょう。

デジタル化が切り拓く次世代リスク管理の可能性

昭和時代に根強かった「伝票主義」「FAX確認」などのアナログスタイルも、今やデジタル化によって着実に変わりつつあります。

オンライン決済プラットフォームの活用


グローバルバンキングの進化により、海外の現地口座間送金やクロスボーダー送金もオンラインで手軽に確認・実行できる時代です。

決済時レートの即時反映や、メールベースでの送金ステータス共有など、効率化も図れます。

ERPや調達管理システムへの通貨管理機能搭載


多通貨取引への対応が進んだ最新のERPシステムや調達管理クラウドの利用で、契約時の通貨、為替予約の状況、業者ごとのリスクランク管理まで一元的に行えます。

ペーパーベースからの脱却が、リスク回避の精度向上につながります。

まとめ:国際調達の現場で「最適な通貨決済戦略」を持つ時代へ

製造業の国際調達は、今後ますます多様性とスピードが求められる時代に突入しています。

現地通貨決済のリスクは避けるだけでなく、リスクへの具体的な対処法と管理体制、そのノウハウを現場レベルで積み重ねていくことが重要です。

購買・調達バイヤー、そしてこれから国際ビジネスの最前線を目指す方々は、単なるコスト削減にとどまらず、「リスクを制することで競争力を持つ」マインドセットをぜひ持っていただきたいです。

アナログを脱しながらも、現場のリアルな声・業界の現実をしっかり踏まえた上で、自社に最適な通貨決済戦略を設計し、進化させていきましょう。

最後に、各現場で「現地通貨決済が怖い」「ややこしい」と感じている方にも、この記事が一歩踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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