投稿日:2025年10月11日

ペットフードの風味を保つ酸化防止剤と真空包装の工程連携

ペットフードの風味保持の重要性と業界動向

ペットフード業界において、風味や鮮度をいかに保つかは非常に重要なテーマです。

現代のペットオーナーは、「ペットは家族」と考え、与える食事にも安全性と品質を求めます。

そのため、ペットフードメーカーは商品の開発・製造過程において、酸化防止や腐敗防止、食感や香りの維持に必要な工夫を絶えず模索しています。

このニーズは、直近のペットフード市場の成長や、多様化する製品ラインナップの流れと結びついています。

特に、ナチュラル志向の原材料を活かしながら、商品としての保存性と風味保持を両立する工夫が求められています。

本記事では、風味を守るために用いられる代表的な「酸化防止剤」と、近年導入が進む「真空包装」の工程連携について、現場の実態もふまえて掘り下げていきます。

最後には、購買部門・生産現場・サプライヤー、それぞれの立場で押さえるべきポイントも考察していきます。

酸化防止剤とは?ペットフード製造現場での役割

ペットフード製造では、油脂やたんぱく質の酸化が進むことで、風味や栄養価が劣化し、場合によっては有害物質が発生するリスクもあります。

この酸化を抑制するために用いられるのが「酸化防止剤」です。

特に、ドライタイプやセミモイストタイプのペットフードは含油量が高く、空気に触れることで劣化が進行しやすいため、酸化防止剤の役割は極めて大きいです。

主な酸化防止剤の種類

一般的に使われる酸化防止剤は大きく「合成タイプ」と「天然タイプ」に分かれます。

合成酸化防止剤として広く知られているのはBHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、エトキシキンなどです。

天然酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物などが主流となっています。

昨今は消費者の「ナチュラル志向」の高まりから、メーカーも天然由来の酸化防止剤の使用を拡大しています。

ただし、天然系は合成系と比べて効果の持続期間が短かったり、コストが高かったりする場合も多いため、現場レベルではバランスを取った設計が求められます。

酸化防止剤の添加工程

酸化防止剤をどのタイミングで添加するかも品質に大きく関わります。

油脂原料を調製する段階で、もしくは最終工程でコーティングする際に添加することで、ペットフード全体の酸化進行を最小限に抑えます。

ここで品質管理の目線が重要です。

添加量が過剰であったり、タイミングが不適切だと逆に味や香りに悪影響を与える、あるいは規制値を超えるなど品質・法規対応の面から問題となるケースもあります。

製造現場では工程管理シートや自動計量・混合システムなどアナログからデジタルへの転換も進んでおり、「人的ミスの防止」や「リアルタイムな記録管理」が求められています。

真空包装の仕組みと、ペットフードでの普及動向

酸化防止剤だけでなく、パッケージングによっても酸化を防ぐ工夫が盛んです。

近年、ペットフードで普及が進むのが「真空包装」や「脱酸素包装」といった技術です。

これらは内容物を酸素から守り、風味や栄養を長く維持します。

真空包装のメリット

真空包装は、袋詰めした内容物から空気(酸素)を抜き、内部を真空もしくは低酸素状態にします。

この工程によって、

・油脂やたんぱく質の酸化スピードを劇的に遅くできる 
・保存期間が伸び、輸送や在庫管理がしやすくなる 
・腐敗やカビ発生も抑制される

といった恩恵があります。

また、酸素を吸収する「脱酸素剤」を併用するケースも多く見られるようになってきました。

消費者には「開封時の香りの良さ」や「湿気りにくさ」で分かりやすいメリットがあります。

真空包装の現場運用と課題

真空包装機は、従来の横ピロー包装機や充填包装機と比較して、ラインの設計やワークフローに工夫が必要です。

汎用の包装機では対応できない場合が多いため、導入時には設備投資やワーカーのオペレーショントレーニングが不可欠です。

また、包装材にも高いバリア性が求められるため、単価アップやサステナブルな選択肢とのバランスが新たな課題となっています。

工場現場では、既存工程(例えばエクストルーダーからの連続搬送)との接続や、充填量の自動計量・異物検知・金属検出など、QC工程とのシームレスな連携が必要です。

この分野では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せており、IoTによる包装機のリアルタイムモニタリングや、異常発生時の自動停止・ログ記録・トレーサビリティの確立に大きな注目が集まっています。

酸化防止剤と真空包装工程の連携ポイント

それでは、これらふたつの技術「酸化防止剤」と「真空包装」をどのように組み合わせるべきでしょうか。

現場でのベストプラクティスや、バイヤー目線から押さえるべきポイントを整理します。

工程間連携の重要性

酸化防止において最も大切なのは「全体最適化」です。

つまり、酸化防止剤の添加設計と、最適な包装仕様、この2つを「どちらも最大効率で効果を発揮できるようプロセスを合わせる」ことです。

具体的には以下のような点が考えられます。

・油脂に対する酸化防止剤の最適添加量を設計し、包装のバリア性能や脱酸素剤の性能と重複がないようにする
・酸化防止剤のコストと効能、包装材料・方式とのコストバランスを加味して、全体コストと安全性・品質のKPIを設定する
・生産計画や在庫サイクルに合わせて、保存性評価(加速試験による風味評価など)を定期的に見直す

近年のIoT活用では、「包装時の酸素濃度計測」や「添加タイミング・量の自動記録」を組み合わせ、定量的な評価・改善が実現しています。

サプライヤーから見た調達・バイヤー視点

酸化防止剤や真空包装材を納入するサプライヤーにとっては、単なるスペックや価格勝負だけではなく、

・相手先メーカーの生産ラインにあわせた提案力 
・統合的な品質データや検証ノウハウの提供
・QRコードによる部材・工程履歴の見える化対応

といった「バイヤー目線」での付加価値提供が競争力のカギになります。

購買部門では、「コスト低減」だけではなく、「市場トレンド(ナチュラル志向・持続可能性)」「物流効率(コンパクト包装・長期保存)」など多角的に評価する姿勢が求められます。

特に昭和世代が色濃いアナログ業界では、書類中心・経験則中心の調達が根強く残っていますが、現場の実態を事前に深くヒアリングしてくれるサプライヤーは高く評価されやすい傾向です。

今後の展望とラテラルシンキング的な切り口

最後に、製造業全体の視点でこれからの酸化防止・包装工程における新たな地平線について、「横断的に・新しい発想」でどのような可能性が開けるかを考えてみましょう。

デジタル化・データ駆動の新・品質管理体制

IoTやAI技術を活用し、「製造工程から包装、流通、消費段階に至るまで」の風味や酸化劣化データを一元的に管理し、製品仕様改善にフィードバックする流れが本格化していきます。

これにより、「どの添加剤を・どのタイミングで・どこまで添加するか」「パッケージ形状・材質と内容物のベストバランスは何か」を、経験則だけでなく根拠データで判断可能になるはずです。

また、消費者と連動した「リアルタイムQR追跡」やフードロス低減への応用、工場間での水平連携も進行しています。

サステナブル志向への転換

一方、プラスチックごみ問題・リサイクル志向も加速しています。

酸化防止剤や包装材も「環境安全性」を満たして初めて選ばれる時代が到来しています。

バージン素材から再生素材への転換、脱炭素社会での取り組み、植物由来の添加剤・包装材開発などが業界標準となります。

総じて、ペットフード業界は「風味保持技術」から「現場全体の最適化」「データ駆動型のプロセス改革」「サステナブル意識」といった多角的な成長路線が今後ますます顕著になるでしょう。

まとめ

ペットフードの風味保持には、酸化防止剤の最適活用と真空包装の効率的な工程連携が不可欠です。

業界をリードするには、単なる技術やコスト提案にとどまらず、現場目線での工程改善・品質管理、そして次世代のデジタル技術やサステナビリティ志向といった視点を融合させていく必要があります。

購買部門・生産管理・サプライヤー、それぞれの立場で「部分最適ではない全体最適」を意識し、現場からものづくり変革を推進していきましょう。

そして今こそ、昭和から令和へと続く製造業の新しい地平線を共に切り拓いていきたいと考えます。

You cannot copy content of this page