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投稿日:2025年6月11日

プラスチックの劣化機構と添加剤による適切な安定化・高機能化技術

はじめに:なぜ今、プラスチックの劣化機構と高機能化技術が重要なのか

プラスチックは現代の製造業において、欠かせない素材となっています。

自動車部品、家電製品、包装資材、医療機器など、私たちの周囲のさまざまな製品はプラスチックなくして成立しません。

その一方で、プラスチックの劣化や環境問題、新素材の登場といった課題も浮き彫りになっています。

特に製品の品質保証やコスト競争が激化する中で、調達部門やバイヤー、現場担当者は「どのようにプラスチックの寿命を延ばし、高機能化を図っていくか」というテーマに直面しています。

本記事では、昭和時代から根強く残るアナログ的思考や現場力の重要性を交えつつ、最新のプラスチック劣化機構と添加剤による安定化・高機能化技術について解説します。

工場の管理職、バイヤー志望者、そしてサプライヤーの皆さまにとって、実践的かつ現場で使える知見を共有します。

プラスチックの劣化とは?— 基礎知識と現場での体験

劣化の本質:「見た目」変化が全てではない

プラスチックの劣化と聞くと、「色あせ」や「割れ」といった目に見える変化を思い浮かべる方が多いかもしれません。

ですが、本質的には「物性の低下=設計された機能を果たせなくなること」が劣化の核です。

私がかつて管理職として工場長を務めていた際、納品済み製品が現場で急に脆くなったというトラブルがありました。

原因を徹底調査したところ、紫外線による劣化が進行していたにもかかわらず、表面は健全に見えていました。

これこそ、プラスチックの「内部から進む劣化」の典型的な事例です。

代表的な劣化機構

プラスチック劣化にはさまざまな要因がありますが、主なものは次の4つです。

  1. 酸化劣化(熱・空気によるもの)
  2. 紫外線劣化(日光・紫外線ランプなどの照射によるもの)
  3. 加水分解(水分による分解反応)
  4. 物理的ダメージ(摩耗・衝撃)

当然ながら、すべての現場でこれらが複合して劣化進行するため、「想定外の早期劣化」が発生しやすくなっています。

特に調達購買部門としては、コスト削減の圧力のなかで「安価な樹脂選定→短寿命化→リスク増大」という悪循環に陥りがちです。

添加剤による「適切な安定化」の原理と代表例

添加剤の基礎:見えない“守り人”の役割

添加剤とは、プラスチック本来の性質を補強・強化するために意図的に加えられる微量成分です。

材質開発や査定の現場では、「どうせコスト増につながる」と敬遠されがちですが、逆に適切な添加剤による安定化は“信頼性”や“寿命”で製品価値を数段階押し上げてくれます。

私自身の現場経験でも、金型ごとに同じポリプロピレンを使っても、添加剤設計だけで性能が劇的に変わることを実感しています。

主な安定化添加剤とその効果

添加剤の役割は多岐にわたりますが、ここでは「安定化」目的の代表的なものを紹介します。

  • 酸化防止剤:熱や空気による酸化(=劣化進行)を抑制。
  • 紫外線吸収剤・光安定剤:紫外線による分子鎖切断を防ぐ。
  • 難燃剤:火災リスクを低減し、異常時にも機能維持。
  • 酸化防止剤:成形加熱や後加工時の分解を抑制。
  • 帯電防止剤:静電気トラブルの低減と異物付着防止。

これらは単独で使うこともあれば、複数組み合わせて多段階の防御を構築することも一般的です。

現場では、用途やコスト、歩留まりや品質管理など多様なファクターを見定め、最適なバランスを追求する必要があります。

プラスチックの「高機能化」— 昭和的発想から一歩先へ

単なる劣化防止から「攻め」の性能強化へ

従来のアナログ的製造現場では「劣化しなければよい、既定通りに作ればよい」という受け身の姿勢が強く残っていました。

しかし、いま求められるのは「機能性添加剤を積極活用し、新たな価値を創出する」攻めのものづくりです。

たとえば、下記のような高機能化を目指した添加剤の応用も現場で期待されています。

  • 抗菌剤の配合による衛生管理機能
  • 自己修復機能を付与するシステム
  • 二酸化炭素吸収型プラスチックによる環境機能
  • シールド性能(電磁波対策など)を持つ複合材料

実際の例として、筆者が携わった自動車内装部品の開発において、「帯電防止+UVカット+難燃化」の三位一体設計を行い、ライバル企業との製品差別化に成功したことがあります。

これこそが、単なる昭和的ものづくりから抜け出し、付加価値で勝負する令和の製造現場の実践例です。

現場で実践する「適材適所」の添加剤選定手法

現場起点の失敗事例と学び

意外に思われるかもしれませんが、添加剤は「入れすぎ」も大きなリスクです。

過去にはコスト削減のため、着色剤を減らして出荷した結果、紫外線による表面クラックが大量発生し、リコール寸前となった事例もありました。

逆に「安全マージン」を求めて添加剤を過剰投与したところ、成形性が悪化し、パーツ同士の勘合不良や金型詰まりが多発したことも記憶に新しいです。

このような事例から、「現場データを基に、用途ごとに必要最小限かつ最適量を選定・組み合わせる」ことの重要性を痛感しました。

信頼できるサプライヤーとのパートナーシップ

昭和型と令和型の大きな違いがここにあります。

従来は「できるだけ安く、早く」を押し付けていましたが、これからは“専門サプライヤーと共に開発する”というパートナーシップ発想が欠かせません。

信頼できるサプライヤーは、「御社の用途なら、この組成が最適」「短納期でも性能保証できます」といった提案型の支援をしてくれます。

実際に筆者の現場でも、サプライヤーの添加剤技術者と定期的に現場改善会議を行い、トライ&エラーの繰り返しで歩留まりや品質向上に直結させてきました。

調達購買・バイヤー・サプライヤー視点での「あるべき姿」

バイヤーを目指す人が知っておくべきこと

バイヤー志望者にとって、樹脂・添加剤知識は欠かせません。

コスト低減やサプライヤー交渉力だけでなく、「現場の困りごと」「使いたい機能」を肌で感じ取り、技術担当と共通言語で話せることが最大の武器になります。

たとえば、「可塑剤の種類によっては海外で規制対象になる」「難燃剤も時代によってトレンドが変わる」といったマニアックな知識も、他社との差別化ポイントとなります。

サプライヤーの立場からバイヤーの考えを読むには

逆にサプライヤーの皆さんは、バイヤーが「品質」「価格」「納期」以外のどこに付加価値や安心(リスク管理)を求めているかを先読みすることが不可欠です。

「うちの添加剤、この点で市場標準より長寿命です」「安全性データの提供や現場支援もできます」といった付加提案が、長期的な信頼獲得につながります。

大手メーカー現場では、たった一つの失敗が「数十億円規模のリコールや訴訟」に直結するため、サプライヤー提案の質が取引継続の鍵となります。

まとめ:ラテラルシンキングで未来の競争力をつくる

プラスチックの劣化機構と添加剤による安定化・高機能化技術は、単なる「材料知識」にとどまりません。

現場データと技術進化を掛け合わせた“ラテラルシンキング(水平思考)”が、今後の製造業で生き抜くための新たな地平線を切り開きます。

バイヤーもサプライヤーも、固定観念にとらわれず、時に現場に足を運び、時に研究・技術者と膝を突き合わせて課題に向き合うこと。

その積み重ねが、企業としての競争力、ひいては日本の製造業全体の発展につながる時代です。

本記事が、皆さまのものづくり現場に新しい気づきとヒントをもたらすことを願ってやみません。

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