地域素材を使うときに考えるべき環境対応・サステナブル認証の取得方法

はじめに：製造業と地域素材、サステナビリティの必要性

近年、製造業においてはサステナビリティが最重要課題として取り上げられています。

特に、地元で採れる素材や、伝統的な工法を活用したものづくりには、地域社会や環境への配慮がますます求められるようになりました。

一方で、昭和時代から根強く存在する“現場の常識”や、紙の伝票といったアナログ運用が根付く製造業界では、最新のグローバル潮流や認証制度へのキャッチアップが難しいのが現実です。

本記事では、地域素材を活用したものづくりを行う上で欠かせない環境対応、そしてサステナブル認証の取得方法について、現場目線で実践的に解説します。

未来志向で経営や現場を改革していきたい方に、明日から役立つ情報をお届けします。

サステナビリティへの対応、なぜ今求められるのか？

時代の変化と製造業への影響

SDGs（持続可能な開発目標）が国連で採択されてから、世界的にサステナブル経営が加速度的に進んでいます。

大手企業はサプライチェーン全体で「環境への責任」を問われ、下請やサプライヤーにも、環境負荷・エネルギー効率・リサイクル性に関する報告やデータ提供が求められています。

地場素材の選定や利用方法にも、CO₂排出の削減、有害物質の管理、再生可能資源の活用といった課題が浮上しています。

バイヤーやエンドユーザーのニーズ変化

現代の消費者やビジネスバイヤーは、製品の性能やコストのみならず、「どんな素材が使われ、どう生産されたか」「環境や地域社会に貢献しているか」という観点で購買の意思決定をする傾向が高まっています。

とくに、住宅や家具、伝統工芸、食品パッケージなど生活に密着した分野では、「地産地消×環境配慮」がブランド価値の大きな武器になります。

地域素材を活用する際の市場トレンド

原材料確保のリスクと機会

地域素材には、地場での調達ゆえの輸送コスト削減や、ダウンサイクル品・端材の活用などの利点があります。

一方で、供給量の変動や品質のばらつき、認証取得の難しさがリスクとなります。

素材サプライヤーも、これまでの「安定大量供給」の概念から、「付加価値のある素材を提供する」「トレーサビリティを強化する」といった視点転換が必要です。

“昭和の常識”からの脱却

昔は「とにかく安ければ良い」「とりあえず使えるものを」という調達が主流でした。

しかし今、持続可能な経営を本気で考えるなら、「持続的に・公平に・高品質な素材」を目指し、地域資源の掘り起こしや認証取得、そしてサプライヤー・バイヤー一体となった価値創造が必須となります。

サステナブル認証とは何か？取得のメリット

代表的なサステナブル認証制度

地域素材を活用する事業者にとって主な認証制度は次のとおりです。

• FSC認証：森林資源の持続可能性に関する国際認証
• PEFC認証：森林認証の国際的チェーン
• 有機JAS：農産物のオーガニック管理規格
• MSC認証：水産物の持続可能な漁業管理
• Fair Trade認証：適正価格や労働環境に配慮した商取引

特定分野では、ISO 14001（環境マネジメント）、カーボンフットプリント、エコマークなども活用されます。

認証取得のビジネス的メリット

• 大手取引先へのアピール力アップ（新規案件獲得、サプライチェーン維持）
• ブランド力強化によるエンドユーザーの信頼獲得
• CO2削減やリサイクルなど環境報告の客観的裏付け
• 市場参入時の差別化・国際競争力の強化

“証明されたサステナビリティ”は、今後の市場でビジネスを拡大するためのパスポートです。

実践ポイント：地域素材の環境対応＆認証取得ステップ

現場では、何から着手すれば良いのか？

1. 素材情報の見える化（トレーサビリティ強化）

まずは、原材料が「どこから」「どんな管理で」調達されているのかを明確にしましょう。

産地や生産者、加工履歴を整理し、現場の帳票やデータベースで追跡できる体制づくりを進めます。

ここでのポイントは従来のアナログから脱却し、デジタル管理（エクセル、クラウド管理など）を導入することです。

2. サステナブル調達方針を策定・社内浸透

会社としての調達方針を「法令順守」「環境・社会への配慮」そして「持続可能性重視」と明文化します。

併せて、取引先評価時に「環境面の取組み」を必須項目とし、仕組みを全社・グループ全体に展開するのが理想です。

往年の現場ベテランにも「なぜ必要か」根気強く説明し、納得感を持ってもらいながら進めることが大切です。

3. 認証取得のための予備調査＋事前準備

FSCやPEFCなど関係する認証団体のガイドラインを入手しましょう。

必要書類や現場管理の仕組み、ラベルの貼り方などをチェックリスト化し、不足する部分を洗い出します。

現場が極端に忙しい場合は、外部の認証コンサルタントや業界組合のサポートも積極的に活用することをお勧めします。

4. サプライヤーとの連携強化

地域素材を提供する側（農家、林業者、副資材業者など）にも「環境配慮」に関する理解と協力を求める時代です。

協力会や業界団体などで共通目標を設け、一緒になってCO2削減・生態系保全・リサイクル率向上などに取り組むことで、長期的な関係性と共通認識が構築されます。

認証取得プロセスの現場あるある―失敗と対策

認証取得の壁とその乗り越え方

多くの現場で、以下のような苦労や“失敗あるある”が出てきます。

・「帳票や証明書がバラバラ、手書きでミスや漏れ」
→現場用の標準フォーマットを用意し、事務担当が定期確認でミスを未然防止。

・「現場の意識改革に時間がかかる」
→トップ自らがサステナブル経営の意義を宣言し、表彰やインセンティブで現場の関心を高める。

・「一度認証取っても、更新や現場維持が面倒」
→毎月1回のチェックや改善会議を習慣化、仕組みとして持続可能にする。

・「サプライヤーが非協力的で前に進まない」
→“認証なしなら取引継続困難”という実態・危機感をしっかり伝え、Win-Winになる共同プロジェクトを提案する。

大切なのは、小さな成功体験を積み重ね、現場に「やれば意味がある」と実感をもたせることです。

サプライヤー・バイヤーの立場で知っておきたいこと

サプライヤー側からみた“バイヤーの本音”

バイヤーは「価格」や「納期」だけでなく、「今後取引を継続できるか」「グローバル展開に参入できるか」を見極めています。

認証取得・環境対応に消極的なサプライヤーは、今後、大手バイヤーから選ばれなくなるリスクが高まります。

また、サステナブル認証は「単なるコストアップ」ではなく、「新たな商機・付加価値創出手段」と捉え、積極的に情報収集・改善策を打ち出すことが求められます。

バイヤー側からみた“サプライヤーに期待すること”

・素材や生産方法の情報開示、データ提供（現場での写真やレポートなども有効です）
・自主的な環境改善活動や、リサイクル推進の姿勢
・トラブル発生時の誠実な説明や早期対応

「一緒に課題解決したい」という姿勢が、長く信頼されるパートナーの条件となります。

まとめ：昭和から飛躍する新しい現場のスタンダードをめざして

環境対応やサステナブル認証は、製造業の現場思考と地元密着型ビジネスにとって、決して机上の空論ではありません。

むしろ、これからの商取引や人材育成、事業拡大の武器となり、地域や顧客からの信頼を勝ち取る絶好のチャンスです。

アナログ運用の現場だからこそ、「まずはできることから」「社内一丸での小さな一歩」からスタートしてください。

そして、現場で得た知恵や経験を外部発信することで、業界全体に新たな地平線を切り拓くきっかけにしていきましょう。

これからも、進化し続ける製造業の現場で、皆さんの挑戦と成長を心から応援しています。