- お役立ち記事
- OEMアウターの防寒試験に使える標準化データと計測手法
OEMアウターの防寒試験に使える標準化データと計測手法

目次
はじめに:OEMアウターの防寒試験の重要性
OEMアウターの開発や調達において、防寒性能の試験はますます重要になっています。
昨今、アウトドアやワークウェア市場の拡大により、防寒機能がユーザーの購買選定の最優先事項になるケースが増えています。
一方で、OEMでアウターを開発する場合、多様なサプライヤーや生産拠点が絡み、社内外で「防寒性」という曖昧な指標をいかに数値化・標準化するかが難しい課題となっています。
本記事では、現場で使える防寒性の標準データや有効な計測手法、アナログな現場でも使いこなせる工夫、グローバルサプライチェーンとも連携できるノウハウを、30年近い現場経験をもとに深掘りしていきます。
防寒試験の基本:なぜ「標準化」が鍵となるのか
防寒試験は、ただ保温性が高ければ良いわけではありません。
素材やデザイン、着用環境によって必要な性能は変わります。
OEM開発や調達では、とくに以下の3つの観点から標準化が必須です。
- 各工場やサプライヤーで「同じ物差し」を持つ(測定環境や手法のばらつきを防ぐ)
- 誰が見ても分かるデータで品質保証・商品説明を行う
- バイヤー・サプライヤー間で仕様詰めに余分な工数と齟齬を発生させない
市場評価の根拠や、社内報告における透明性にも大きく貢献します。
工場の「長年の勘」や「先輩からの口伝」に頼るのではなく、 世界標準から逆算したデータ整合性が要求される時代です。
防寒性能を「見える化」する代表的な指標・標準データ
防寒性の評価には、次のような国際規格や業界標準が用いられています。
1. CLO値(clo value、クロー値)
防寒着性能の国際共通単位です。
「CLO値1.0」とは、安静状態の人間(20℃、湿度50%)が快適に感じる衣服の保温力を1単位とした指標です。
アウターのラベルや取説などにCLO値の記載があれば、バイヤーやユーザーが客観的に商品の保温効果を選びやすくなります。
2. 保温率・熱伝導率
サンプル布をサーモラボなどで測定することで、定量的なデータが得られます。
単なる数字だけでなく、「表地+中綿+裏地」の組み合わせをパターンごとに測っておくと、工場の生産現場でも製品設計時の目安として重宝されます。
3. ASTM F2732(最低着用温度の推定範囲表示)
北米のアウトドア業界では、「このウェアなら何℃まで快適か?」を数値化するためのガイドラインが整備されています。
欧米アパレルメーカーや小売にOEM提案・輸出する際は、「ISO11092(衣服の熱的特性試験)」などとの連動も必須です。
4. 実着評価:サーマルダミー法、着用テスター法
人型マネキン(サーマルダミー)を用いて、実環境に近い状態で熱流束や体表温度の変化を測定する方法です。
または、現場スタッフやテストパネルにアンケートやパッチサーモグラフィーで着用体感評価を行います。
これらは定量化が難しいものの、「実用性の可視化」に欠かせないです。
現場ですぐに応用できる主な計測手法と工夫
防寒試験の分野で最も多い現場課題は、「高価な試験装置や設備がない」「経験則偏重でデータ化が弱い」「人の主観に流されやすい」などです。
特に中小工場、海外サプライヤー、昭和型の現場に根強い悩みがあります。
そこで、設備投資を小さく抑えつつ、標準化されたデータを得る現実的なノウハウを紹介します。
1. 簡易サーモグラフィ計測
スマートフォン用のサーモグラフィカメラ(2-3万円程度)を使い、着用前後の体表温度分布を視覚化できます。
直感的なヒートマップで「どこから熱が逃げやすいか」を一目で確認でき、パターン・素材ごとの差異も比較しやすいです。
2. 加熱パッド・お湯ボトル法
人体マネキンの代用として、一定温度に保ったお湯入りボトルを袋状のサンプルに包み、その表面温度降下や熱損失を測定します。
温度ロガー(2千~1万円程度)と組み合わせれば、簡易的でも一貫性のある数値を取得できます。
3. 布地単体の熱伝導率試験
ASTM D1518などに準じ、専用パッドやヒートプレートを使った布地の熱抵抗測定が可能です。
素材メーカーとの協業で、ロットごとデータを管理し、OEM条件出しの共通言語にもなります。
4. 実着環境下での体感アンケート+体温変化記録
温度センサー付きのウェアラブルデバイスや市販の体温計を使い、テスター着用時の体温推移と体感快適度を記録します。
書式を統一することで、主観評価のバラつきや属人化を軽減できます。
業界が「昭和型アナログ」から脱却できずにいる理由と、その打開策
なぜ多くのアパレルOEMや国内メーカーの現場では、いまだに「着てみて温かければOK」というアナログ判断が根強いのでしょうか。
その背景には下記のような業界固有の事情と現場の本音があります。
職人肌・経験則が優先されやすい文化
長年の現場リーダーや職長による「俺の勘」文化があるため、定量データよりも、手触り・重さ・長年の経験値が重視されます。
これは決して悪いことではありませんが、グローバル展開や新規取引先の増加により、客観的データの必要性が高まっています。
検査コスト・時間への忌避感
高価な検査機の導入コスト、検査担当の追加工数、試験工程のサイクルタイムへの影響を嫌い、社内承認が進みにくい現実があります。
そこで前述の「簡易手法」や、工場内で回せる人材教育とデータ化の自動化ソリューション(安価なIoTツール等)を組み合わせて、段階的に現場を巻き込むことが重要です。
合意形成の不足・サプライヤーとの温度差
バイヤー(購買)主導で「標準化」「見える化」の話が進むものの、現場現実や海外サプライヤーの基準との乖離も多発します。
よって両者が納得する「最低限共通の指標」&「説明できるデータセット」から着手し、徐々にレベルアップを図るのが賢明です。
OEM調達の現場で役立つ「攻め」と「守り」のノウハウ
バイヤー視点:効率的な試験プロセスの組み立て
コスト・納期・性能の三立を意識し、以下のポイントがポイントとなります。
- 最初は「CLO値」や「ASTM」など国際的に通用する指標をOEM仕様書に盛り込み、サプライヤー選定段階から条件設定を明確化
- 新規素材や量産前サンプルには簡易的な温度ロガー手法やサーモグラフィを併用し、工数やコストを抑制
- 予算や納期に余裕がある場合、外部認証ラボに『確定値』を取得することで、顧客や管理部門へのサプライズを未然に防ぐ
サプライヤー視点:現場実施の工夫&データの活かし方
ローカル工場でも最低限「この試験だけは出来る」「きれいなデータでバイヤーと話せる」という基礎体制が必要です。
- 毎ロットの素材物性・基本的な熱抵抗データはExcel等で管理し、現場の誰でもアクセス可能にする
- アナログ気味な試験記録も Digital化(スマホ撮影、センサー連動)し、画像や数値データで保管
- バイヤーから新たな性能要求が来た際は、社内テストと並行し、外部ラボの試験結果との突き合わせを行う(自己流だけにならない)
「たまたまそのサンプルだけ温かい・冷たい」ではなく、安定して合格ラインを示せること、これがビジネスの信頼を生みます。
今後の展望:デジタル化とグローバル標準の融合へ
これからのOEM防寒着市場は、AIやIoTを活用したリアルタイムな品質追跡、リモート監査、ユーザー使用時のフィードバックデータとの連動が加速すると見られます。
現場実装の第一歩は小さくとも、デジタルデータを意識して溜めていくことで、将来的なサプライチェーン全体の最適化が現実味を帯びてきます。
OEMアウターの防寒試験は、現場とバイヤー・サプライヤーの良質な対話から始まり、現実解と理想をうまく融合させていく営みです。
標準化データと地に足のついた計測手法、アナログとデジタルのバランスが、これからの製造業の地平線を切り拓いていくのです。
まとめ:OEMアウター開発の現場が明日からできること
1. 防寒性を「CLO値」「熱伝導率」「ASTM/ISO」などの標準化データで評価する
2. 簡易サーモグラフィや温度ロガー等、現場に導入しやすい計測手法を活用する
3. スキル・文化・コストの壁を乗り越えるために、段階的にデジタルデータ化する
4. バイヤー・サプライヤー間で共通言語となる「基礎指標」の合意形成から始める
防寒着のOEM開発と調達現場は、今日も現場の工夫と科学的な裏付けの両輪で進化しています。
「温かさ」を正しく伝えるデータと、現場目線を活かした手法で、ぜひ業界の新たなスタンダードを共に作っていきましょう。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。