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投稿日:2025年12月2日

製造部門と物流部門の温度差が生む“終わらないすれ違い”

はじめに――なぜ製造部門と物流部門はすれ違うのか

製造業の現場では、製造部門と物流部門が密接に連携しなければならない場面が日常的に存在します。

資材の受け入れから製品の出荷まで、多くの工程で両部門は接点を持ちますが、その中には意思疎通の不一致や価値観の違いによって、「温度差」が生まれ、それが“終わらないすれ違い”となって現れることが少なくありません。

このすれ違いは生産効率や顧客満足度に重大な影響を及ぼし、ときに会社全体の業績に波及することもあります。

本記事では、なぜこのような状況が生まれやすいのか、そしてそれをどう乗り越えればよいのか、現場目線の具体的な課題と解決策を掘り下げていきます。

製造部門と物流部門、それぞれの責任と役割とは

製造部門の立場と考え方

製造部門は「ものづくり」の最前線です。

生産計画通りに品質を担保しながら的確な数量を納期までに仕上げることが最大の使命です。

このため、製造現場では「いかに安定して生産を回すか」「不良を出さずに効率よく作るか」に価値観が集中します。

生産性や安全性の向上はもちろん、時には設備や人員の最適化など、現場ならではの工夫が求められます。

つまり、製造部門は“安定した流れ”を最優先に考えて行動しています。

物流部門の立場と考え方

一方で、物流部門は原材料や部品の受け入れから、最終製品の出荷、配送までを担います。

短納期化や在庫削減の要求、納品先との調整、運送の手配、さらには物流コストの抑制と、マルチタスクな業務が求められます。

物流部門は、“いかに効率的にモノを動かし、時にはトラブルを最小化しながらスムーズにつなぐか”という観点で全体最適を常に意識しています。

このように、それぞれの部門が現場の事情を優先しがちになることが、温度差の根本的要因となっているのです。

昭和的アナログ文化が生み出す壁

アナログ工程の根強い現場

日本の製造業は「現場力」が強い反面、今も多くの現場でアナログな業務フローや属人的な判断が色濃く残っています。

帳票の手書き、電話や口頭での指示、現物確認など、デジタル化が遅れている現場では、情報の伝達ロスや認識齟齬が生じやすく、部門間の協力体制が脆弱になりやすいです。

特にルーティン業務が多い中堅・中小企業や、老舗の工場では、“前例踏襲”が優先され、相互の歩み寄りや変革が進みにくい傾向があります。

現場が抱える「見えない壁」

「製造は物流のことを分かっていない」「物流は製造の苦労なんて知らない」——こうした声は、多くの工場で今なお消えることがありません。

それは、部門ごとにKPI(重要業績評価指標)や評価基準が異なり、お互いの“当たり前”が嚙み合わないことが主因です。

この構造は、「自分たちの事情」を優先するがゆえに「相手の苦労や工夫」が見えなくなり、意識のズレが溝を拡げてしまうのです。

典型的なすれ違い事例とその根本原因

1. 納期設定のギャップ

製造部門は生産計画を基に納期を設定しがちですが、物流部門にとってはその納期が既存配送ルートや積載計画と乖離していることがしばしば見受けられます。

結果、「間に合わない」「急な段取り変更が必要」「チャーター便の追加コスト発生」といったトラブルが起こり、責任の押し付け合いへと発展することもあります。

2. 在庫管理における誤差

製造側は「手元に材料があって当たり前」で管理をしがちですが、物流部門では「在庫圧縮」が至上命題であるため、過剰在庫やデッドストックが大きな問題となります。

異動や休暇による引き継ぎミス、システム未導入の現場では棚卸しや伝票入力のミスが積み重なり、実在庫とデータの不一致が発生しやすくなります。

3. 品質管理をめぐる温度差

製造部門は完成した製品の品質に重点を置くのに対し、物流部門は配送時の破損や汚損、荷姿(パッケージング)不良に敏感です。

しかし現場によっては、「製造出荷時にOKならそれでいい」という温度感で、梱包不良やパレット積みの甘さが輸送工程で問題となることがあります。

この場合、どちらが悪いとは一概に言えず「お互いの視点」のすれ違いが根深く横たわっています。

この“すれ違い”をなくす具体的な対策

現場巻き込み型の情報共有システム導入

最近では、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。

例えば、クラウド型生産管理システムや在庫管理システム、物流管理システムを導入することで、作業進捗・在庫状況・配送計画の情報がリアルタイムで共有できるようになります。

これにより、部門間で「見える化」された共通のデータを元に意思疎通をはかることが可能となり、お互いの事情や速報値を理解しやすくなります。

資材調達・生産・物流一体型の業務フロー設計

調達・生産・物流を縦割りで考えるのではなく、「全体最適」の発想で業務フローを再設計することが重要です。

たとえば、定例ミーティングや現場朝礼において、各部門の進捗や障害、今後の課題を率直に伝え合い、課題を共通認識する機会を持つことが効果的です。

また、部門横断型のプロジェクトチームや、ジョブローテーションで“相手の現場”を実体験する制度なども、相手視点の理解を深める上で有効です。

“見える化”と共感力の向上

数字や納期の見える化だけでなく、例えば物流部門が製造工程に入って材料受け入れの混雑や実際に発生しているトラブルを見学する、あるいは製造部門が物流現場に足を運び、スペースや配送キャパシティの現実を体感するなど、現物・現場・現認主義の精神が相互理解の基礎となります。

「現場が全て」という前提ではなく、「現場“同士”」が歩み寄ることで、協力体制が促進されます。

KPIのすり合わせによる一体感構築

各部門ごとにKPIが独立しすぎていると、本来目指すべきゴールがズレてしまいます。

「製品リードタイム短縮」「欠品ゼロ」「納期遵守率向上」「納品クレームゼロ」など、全社横断的な目標を設定し、それに対する貢献度を部門またぎで評価する仕組みを作ることで、短期的な目先業務ではなく中長期での全体最適を重視できるようになります。

AIと自動化技術で変わる現場の最前線

生産管理や物流管理の現場にも、AIやIoT、ロボット技術が本格導入されはじめています。

自動化によって在庫状況や納品予定、異常の発生が即時に共有できるなど、情報の壁が低くなります。

今後は、人的リソースが割けない中堅・中小企業でも、こうした先進技術を活用することでヒューマンエラーの抑制や、部門間連携のレベルアップが求められます。

昭和的な属人化に頼らず、データに基づいた判断がスタンダードになることが、すれ違い解消の基盤となるでしょう。

まとめ――全員に利益のある関係性の構築へ

製造部門と物流部門の“すれ違い”は、単なる現場の些細な問題ではなく、組織全体の発展や業績に直結する本質的課題です。

アナログ文化や慣習だけに縛られず、テクノロジーや対話、業務設計の再構築などあらゆる角度から「分断を埋める工夫」を重ねていくことが不可欠です。

現場にいる一人ひとりが「お互い様精神」を持って関わる――。

その積み重ねが、真の全体最適と競争力を生み出し、新たな製造業の地平線を切り拓く原動力となるでしょう。

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