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投稿日:2025年12月3日

品質保証部門の提案が採用されないのは“儲けを生まないから”という本音

はじめに:品質保証部門の存在意義と業界のジレンマ

製造業において、「品質」は企業の生命線とも言えるほど重要なキーワードです。
とりわけ日本の製造業は、かつて“メイド・イン・ジャパン”の高品質で世界を席巻しました。
その品質を守り続けてきた主役の一つが、品質保証部門です。

しかし現場では、品質保証部門の提案が経営層や他部門から軽視される場面がたびたび見受けられます。
その根底には、「品質保証は直接的に儲けを生まない」という本音があります。
この業界構造に、未だ昭和的な経営マインドの残る企業現場が多いことが大きく影響しています。
今回は、なぜ品質保証部門の提案が採用されにくいのか、現場の視点と業界動向を交えながら掘り下げていきます。

品質保証部門の役割と期待値のずれ

品質管理と品質保証の違い

まず、品質管理と品質保証は混同されがちですが、全く異なる役割を担っています。
品質管理は、設計や製造ラインで製品品質を維持・管理する活動です。
対して品質保証は、会社全体の視点で、顧客への信頼や社会的信用を守る最後の砦となる存在です。
法規対応、納入前検査、クレーム対応など、社内外で会社を守る守護神の役割も果たします。

現場の意識とのギャップ

ところが、現場レベルだと「品質を守るために余分な時間やコストがかかる」「しきたりや書類が増えるだけで効率が悪い」といった不満が根強くあります。
特に生産現場や経営陣からは、売上やコスト削減という“数字”で評価しづらいために軽視され、提案が通りにくくなっています。

品質保証部門の提案が採用されないリアルな理由

直接的な利益に結びつかない構造

経営会議でもっとも重視されるのは「いかに売り上げを伸ばすか」「コストを削減するか」といった収益性です。
品質保証部門の提案は、どうしても「不良を出さない」「トラブルを減らす」という“守り”の側面が強く、直接お金を生み出すわけではありません。
そのため、“儲け”にならない業務として正当な投資やリソース配分が後回しにされる傾向があります。

日本型経営の“昭和マインド”と現場優先思想

製造業の現場では、いまだに「現場こそ正義」という思想が強く残っています。
長い伝統や過去の成功体験から脱却できないため、「余計なことを増やすな」「今まで通りが一番」という声が根強いのです。
現場主導の文化では、品質保証部門からの提案が「現場の手間を増やすもの」だと受け取られがちで、採用に至らないケースが多発します。

アナログ文化と属人的な判断基準

また、多くの製造業企業がアナログ業務や紙ベースの管理から脱出しきれていません。
現場の判断や職人技に頼る傾向が強く、品質保証部門が提案する「標準化」や「文書化」の重要性が理解されにくいのが現実です。

業界動向:変わり始める品質保証の価値観

顧客クレームやリコールの急増

近年、SNSやネット社会の発展で、ちょっとした品質トラブルでも一気に情報が拡散するようになりました。
一度クレームやリコールが発生すれば、企業イメージが大きく損なわれ、莫大な損失につながります。
市場での信頼を守る品質保証部門の役割は、ますます重要になっています。

ISO導入や法規制強化の流れ

グローバル化の影響で、ISO9001など国際規格への適応や法規制対応が不可欠となっています。
これらに沿った業務推進やリスクマネジメントは、品質保証部門なくしては実現できません。
海外顧客からの信頼を得るためにも、品質保証のレベル向上が経営戦略に組み込まれつつあります。

デジタル化と品質保証の進化

近代的な製造現場では、AIやIoTを駆使した全数検査・トレーサビリティなど、データに基づく品質保証が進化しています。
この流れを取り込むためには、従来の“現場任せ”や属人的な管理から脱却し、品質保証部門を軸としたDX推進が不可欠となっています。

バイヤー・サプライヤー視点で考える品質保証部門の重要性

バイヤーの見る“品質”と“リスク管理”

購買・調達業務において、価格や納期はもちろんですが、「品質の安定性」が財務的なリスク回避につながると認識されています。
バイヤーは、サプライヤー選定時に「品質保証体制がしっかりしているか」「クレーム時の対応力はどうか」まで注視しています。

また、バイヤーは品質問題に起因するリコールや停止リスクを常に警戒しています。
そのため、サプライヤー内部で品質保証部門への投資や提案を疎かにしている会社は、競争力が低く見られがちです。

サプライヤー側として知っておきたい本音

納品先や外部クライアントは、サプライヤーの安易なコストダウンを嫌がる場合も多いです。
長期的な取引関係を維持するためには、「多少コストがかかっても品質保証部門の体制や仕組みを重視している」という姿勢が重要になります。
逆に言えば、品質保証部門の提案が社内で却下されやすい企業は、顧客からの評価も下がるリスクを内包しています。

品質保証部門の価値を可視化し、提案力を高める方法

経営層に“リスク回避=利益”を見せる

一方で、「儲けを生まない」という評価を打破するには、品質保証部門がどれだけ経営リスクを減らしているか、数字で示すことが大切です。
たとえば「この活動のおかげでクレームコストがいくら削減できた」「リコール発生率をこれだけ下げた」など、見える化して経営層へ報告します。

品質保証部門が防いだ損失額は、見かけ上の数字利益よりもはるかに経営に貢献しています。
その“損失回避額”を明示することが、部門の提案採用率を引き上げるカギとなります。

他部門と連携した“攻め”の提案

顧客満足度や他社との差別化という観点から、「うちの品質保証体制が新規受注や商談成立につながった」という攻めの事例をストーリーで展開することも効果的です。
また設計や生産管理、調達など、他部門と連携した全社横断プロジェクトとして発信することで、経営層の理解を得やすくなります。

品質保証部門自らの“DX化”と変革

紙やExcelによるアナログ管理からの脱却、AIやIoTによる品質保証データの活用など、新しい流れを自らリードするのも重要です。
部門自身が「時代遅れ」や「足を引っ張る存在」から、「企業価値向上の中核」に進化する必要があります。

まとめ:昭和から令和へ―品質保証部門の存在価値を再定義する

品質保証部門の提案が採用されにくい背景には、「儲けを生まない」という短絡的な経営思想と、昭和的な現場主義・属人化文化が根付いています。
しかし、社会や産業の変化とともに、品質保証の価値観も大きく進化しています。
長期的な企業存続・発展のためには、品質保証部門の提案を「コスト」ではなく「未来への投資」として捉え直す必要があります。

製造業に携わるすべての方が、品質保証部門の真価について改めて考え、組織全体で「品質を儲けにつなげる」という意識改革を進めていきましょう。
その積み重ねが、日本のものづくりがもう一度世界に誇れるブランドとなる礎となるのです。

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