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新規技術を採用したいのに既存設備との相性で断念せざるを得ない苦悩

目次
はじめに
製造業の現場では、日々新しい技術や設備が開発され、その進化は目を見張るものがあります。
IoTやAI、ロボティクス、高効率のエネルギーシステムなど、魅力的な新技術が次々に登場し、生産性や品質の向上、コストダウンの実現が可能となる時代です。
しかし、現実問題として新技術の導入には「既存設備との相性」という大きな壁が立ちはだかります。
長年使い続けてきた生産ラインや工場設備をどう活かしつつ、新しい技術と共存させていくのか。
これは多くの工場長や現場責任者、調達バイヤー、サプライヤーの皆様が頭を悩ませている課題です。
本記事では、昭和の時代から連綿と受け継がれてきたアナログな現場文化をベースに、なぜ「新しいことをやりたいのに、既存のしがらみで断念せざるを得ない」苦悩が発生するのか。
現場での実践例や業界動向も交えながら、ラテラルシンキングの視点で深堀りしていきます。
新規技術導入の実態と「既存設備との相性問題」
なぜ新技術は歓迎されるのか
新しい技術の導入は、コスト削減や省人化、品質安定、納期短縮など、多くのメリットをもたらします。
現代の「少子高齢化」や「人手不足」問題、エネルギー高騰等の外部環境変化への対応も迫られ、従来のやり方を変えざるを得ない場面は確実に増えています。
さらに、取引先(バイヤー)からは「最新設備を導入しているサプライヤー」が選ばれやすくなる傾向もあり、自社の競争力を維持・向上させるためにも、新技術の導入は無視できません。
「既存設備」とは何か〜日本の製造業特有の事情〜
一方で、日本の製造業、とくに昭和・平成初期から運用している中堅・大手工場では、膨大な設備投資を経て導入した工作機械や専用ライン、検査装置、物流設備が今も現役で稼働しています。
これらの設備は、保守・点検を繰り返しながら、数十年単位で使い続けることが常態化しています。
なぜなら、初期投資が莫大で減価償却期間も長く、「簡単に替えられない」経済的事情があるからです。
また、日本の「もったいない」精神や、熟練技術者が機械設備と一心同体となって生産を担ってきた文化も、大きな影響を与えています。
新旧設備の”相性”とは何か
新しい技術を既存の生産ラインや設備に組み込もうとすると、さまざまな「相性問題」に直面します。具体的には以下のような点が該当します。
– 新しいソフトウェアやIoTシステムが旧式制御盤やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)と通信できない
– 新設備の加工速度や精度、要求する電圧・電流などが、既存ラインの設計仕様と合わない
– 設備の物理的な設置スペースや搬送レイアウトが制限要因となる
– 既存工程全体のバランスが崩れてボトルネックや品質バラツキが発生する
– 保守やアフターサービス、メンテナンス体制が統一できなくなり、運用リスクが高まる
現場では、こうした「理想」と「現実」のギャップを、知恵と工夫で乗り越えていく必要があります。
実際の現場での苦悩・葛藤
バイヤー・設備投資担当者としての苦労
新規技術を採用する方向で複数の案を検討していても、「既存設備での制約が大きく、コストメリットやリターンが見通せない」というケースが多々あります。
たとえば、大手自動車関連メーカーでの例です。
AIによる画像検査システムを設備投資して工程自動化を進めたかったのですが、既設ラインの搬送スピードや搬送治具との整合が合わず、結局”全自動化”は見送りに。
部分的な「既存設備+新システム」のハイブリッド運用にとどまった、という話も珍しくありません。
また、「親会社や本社の投資審査部門」「経理・財務部門」「現場オペレーター」「保全部門」等、社内のさまざまなステークホルダーとの調整も大きな壁となります。
現場目線の「もどかしさ」と職人文化
現場オペレーターやライン長の声に耳を傾けると、熟練技術や経験値への自信や、長年付き合ってきた機械への愛着など、”人情的な葛藤”が見えます。
単なる懐古主義だけでなく、「今の設備でこんなに良い製品ができている」「新しい技術は結局、誰がメンテするのか?」という素朴な疑問や不安も根強いものです。
こうした現場の空気感は、デジタル化や最先端化が進む現代においても、簡単には変わらない日本の文化的特性と言えるでしょう。
“部分最適”と“全体最適”のすれ違い
新技術の導入は、しばしば「一部改善」だけに留まることがあります。
先端設備だけが浮いてしまい、隣接する旧設備に足を引っ張られたり、情報連携や部品供給・品質管理で新たなボトルネックが表面化したり、といったケースはよくあります。
部分最適で満足した結果、全工程の効率化に繋がらず「せっかくのお金と労力が無駄になった」という反省も、枚挙にいとまがありません。
業界動向〜昭和から抜け出せない理由と変革への兆し〜
国内製造業の“平成レトロ”化
日本の多くの製造業が、昭和〜平成初期の技術やシステムをベースに運営されています。
設備だけでなく、帳票処理やQA管理、調達プロセスにも紙やFAX、エクセル台帳が根強く残る現場が多いのが現実です。
一方で、欧米・中国・韓国などの競合メーカーは、スマートファクトリーやクラウド連携、AI活用といった「デジタル一気通貫」でどんどん進化しています。
このままではグローバル競争力を失う、という危機意識が近年高まりつつある一方、「ゼロベースで設備を刷新する」大胆な一手を取れる企業はまだ少数派です。
今、業界で注目される“つなぎ技術”
そこで注目されているのが、既存設備と新技術を「つなぐ」ための中間ソリューションです。
具体例として以下のような動きがあります。
– 既存汎用機やPLCからデータ収集するIoTゲートウェイの活用
– AI/IoT対応の“後付けセンサー”や廉価なエッジコンピュータ
– クラウド対応の中継サーバやデータ変換装置
– 既存設備の改造・レトロフィットによる部分自動化
– DX人材の育成や現場オペレーターの再教育プログラム
こうした「レガシーと最新の橋渡し」こそ、日本製造業の現実的な第一歩となっています。
ラテラルシンキング的アプローチで切り開く新たな地平
制約は「イノベーションの種」〜既存設備の再発見〜
「既存設備があるからこそできる新しい使い方」「設備同士のユニークな掛け合わせ」など、制約を逆手に取る発想が現場から生まれはじめています。
たとえば、
– 古い搬送ラインにIoTセンサーを後付けし、設備稼働の見える化を低コストで実現する
– アナログ検査工程のノウハウをAI学習データとして活用し、次世代自動化への布石とする
– 一部の工程のみスマート化し、ヒトから機械への段階的ジョブシフトを進める
といった取り組みが、「全リプレース」よりも現実的かつ定着しやすい方向性となっています。
“サプライヤー×バイヤー”の新たな協創関係
バイヤーの視点からは、「標準スペックの提案」だけでなく、サプライヤーが自社設備や得意技術をどう活かした部分最適~全体最適ソリューションを組み立てるか、が見られるようになっています。
また、サプライヤー側でも、「自社の古い設備が不利」という発想を逆転させ、「レトロ機でもAI連携可能」「古い設備でも現場ノウハウを活かしたオーダーメイド対応可」といった独自提案で差別化を図るケースが増えています。
これからの時代、「設備が新しい=優秀」ではなく、「いまあるものを最大限に生かす力」が選ばれる要素になるでしょう。
まとめ〜ジレンマを創造の源泉に
新技術の導入と既存設備との“相性”は、製造業ならではの避けて通れない課題です。
ですが、一見「足枷」と思われがちな制約こそ、深く考えることで新たな価値を生み出す源泉にもなります。
古いものと新しいもの。現場の知恵と最先端技術。
両者をどう活かしていくか、その答えは一つではありません。
本記事が、製造業で働く皆さん、バイヤーを志す方、サプライヤーの皆さんにとって、「今ある状況を変えるヒント」や「自分たちの立ち位置を再発見するきっかけ」となれば幸いです。
大切なのは、あきらめることではなく、ラテラルに考え、仲間と共に悩み、その先に必ずある“突破口”を見出すこと。
製造業現場の進化は、そこから始まります。
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