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不良率だけ見ると品質が良く見える“統計の罠”

目次
はじめに:数字に騙される現場、あなたは大丈夫ですか?
製造業で「品質」という言葉ほど、議論を呼ぶものはありません。
その指標としてよく使われるのが「不良率」です。
一見、不良率が低ければ品質が良いと直感する人も多いでしょう。
しかし、本当にその数字だけを信じて良いのでしょうか?
実は“不良率の数字”には、現場の真実が隠されている場合が多々あります。
本記事では、20年以上の現場経験を元に、不良率に潜む「統計の罠」を解き明かし、数字の背後にある本質的な品質管理とは何かを掘り下げます。
不良率は本当に「低ければ安心」なのか?
工場現場や購買・バイヤー業務で、「うちの工場は不良率0.1%です」と胸を張る場面に何度も遭遇しました。
この数字をそのまま鵜呑みにしてしまう担当者やマネージャーも多いです。
しかし、不良率は“現場の一断面”しか映していません。
以下のようなケースが、実際の工場やサプライヤーでは日常茶飯事です。
分母を意図的に膨らませているケース
よくあるのは、分母を生産総数や出荷数など、意図的に大きく取る手法です。
例えば、実質1000個出荷したうち10個が不良でも、それを「10万個作ったうちの10個」と表現すると、不良率は0.01%となり格段に低く見えてしまいます。
実際には「1000個中10個」なら1%の不良発生率。
どちらが現場として危機感を持つべき数値かは明白です。
検査タイミングでごまかすケース
全数検査を行っていない場合、「検査していない=不良がない」ように見せかけることもできます。
重要保安品でも抜取検査のみで品質を語れば、厳密な不良率の把握はできません。
昭和から続くアナログな現場ほど、こうした「検査対象外」を不良カウントから除外してしまう傾向が強いのは事実です。
工程途中で不適合品を“消す”ルーチン
途中で発見された不良品が“再加工”や“部品取り”の名目で他製品に分解・転用され、不良として集計されない例も珍しくありません。
現場のオペレーターや班長が「見なかったこと」にしてしまう場合もあり、品質データの信頼性低下に繋がります。
なぜ現場・サプライヤーは統計の罠を仕掛けがちなのか
こうした数字の“マジック”や“トリック”は、なぜいつまでたっても製造業で根強く残り続けているのでしょうか。
現場評価への過度なプレッシャー
多くの場合、不良率は工場の成績表であり、“低ければ低いほど優秀”という意識が根強いです。
その結果、不良率を数字上だけ下げようと現場が躍起になる。
現場に直接ペナルティが及ぶ仕組みや、取引停止などの重圧がある場合は「正直者が馬鹿をみる」空気が生まれやすいです。
属人化・報告文化の壁
特に昭和的な現場では、Aラインの班長とBラインの班長で「不良の定義」「集計方法」が全く違う、といった事態がよくあります。
また“上司に怒られるから”、という理由で本来報告すべき異常を現場で封殺。
こうした属人化と、“とりあえず報告すればいい”文化が数字の罠を深くしています。
バイヤー/購買側も数字でしか判断できない現状
「サプライヤーの本音=バイヤーは数字でしか評価しない」
この意識が広がっているため、購買・調達でも“良い数字”を出すことに注力しやすいのが現状です。
統計の罠を見抜く具体的な視点とは
表面的な不良率の数値にだまされず、本質的な品質を判断するために、どのような観点をもてばいいのでしょうか。
不良“未報告”事例の掘削
“ゼロ”や“ほぼゼロ”の数字こそ疑えてください。
原因調査書や是正報告書が極端に少ない、ヒアリングしてもヒヤリハットや“紙一重で不良ではなかった”話が出てこない場合、現場には重大な課題が潜んでいる可能性大です。
定期的な現場観察や“なぜなぜ分析”の掘り下げが必須となります。
分母・分子・母集団の定義を必ず尋ねる
数字の分母となる母集団が、「全数生産品」なのか「一部工程での抜取品」なのかを必ず確認しましょう。
また「再発防止策を講じた案件」と「現場の直訴案件」がごちゃまぜになっていないか、分子・分母の定義を明確にすることが肝心です。
パレート図・推移の“形”を見る
個別不良率だけでなく、どんなパターンの不良が多いのか(パレート)、過去数ヶ月エリア毎の推移がどう曲線を描いているのかも重要です。
「ゴール」(品質レベルや目標値)と、「プロセスの安定性」両方をチェックしてください。
サプライヤーの現場・工程への立ち入り
コロナ禍を境に現場立ち入り監査は沈静化しましたが、現場の実物確認が一番確度の高い品質把握手段です。
帳票やレポート、エクセル管理だけでは絶対に見抜けない“現場のうそ”を暴くため、現場に足を運びましょう。
AI・デジタル化とアナログ現場のギャップ
昨今の製造業DX推進により、不良率自動集計やIoTセンサを活用した品質管理が叫ばれています。
しかし、アナログ文化の現場では、いまだ“紙の帳票”や“口頭伝承”による情報共有が幅を利かせています。
システム導入の落とし穴
システム統合によりデータの正確性が増したかに見えても、
現場では「面倒」「慣れているから」とアナログ手書き帳票が併存している例が後を絶ちません。
こうしたダブルスタンダードは、むしろ“数字で騙す余地”を拡げてしまうことがあります。
データだけに頼るな、現場を信じろ
DX推進により数字の透明性は高まりますが、現場の「空気・温度感」、
つまり現場独特の“おかしいな”という感覚が無視される危険が高まります。
グラフや数字だけでなく「現場の本音」や些細な異変に敏感になることこそ、統計の罠を見抜き“真の品質向上”への鍵となります。
バイヤー・調達の立場から見る「数字」の本質的な使い方
サプライヤーの立場から“どう数字を見せるか”を考えている方、
バイヤーとして“どう相手の数字を見るか”に悩む方に、現場目線でアドバイスします。
シンプルな数字にこだわるな、「物語」を聞け
低い不良率の数字だけ見て「安心」とせず、必ず「不良・クレームの背景」「現場対応の姿勢」もヒアリングしてください。
どうやって低い不良率を達成しているのか職場の雰囲気も含めて確認し、その数字が短期的な“作られたもの”でないか常に疑うことも重要です。
PDCAサイクルの中身を監査せよ
単なる「改善しました」「是正しました」だけでなく、そのプロセスに不一致や不自然な点がないか、
再発防止への活動レベルや教育状況も観察することで、「数字を作っていないか、本当に良いのか」を判断できます。
現場改善活動の“失敗事例”を聞く
サプライヤー側も“問題ありません”“すべて解決済み”のみならず、
「これには失敗しました」「今でもこれには手を焼いています」といった“弱み”を話すサプライヤーは、むしろ信頼に値します。
結論:品質を“数字”で語れるのは「仕組み」と「現場力」が両立してこそ
不良率の数字は、真の品質を断片的にしか伝えません。
統計の罠に惑わされず、
・現場での分母・分子の定義
・抜けているデータや情報の所在
・現場担当者の“姿勢”や“本音”
などに目を向けることが、現場強化とサプライチェーン全体の品質向上につながります。
昭和のアナログ現場力と、現代のデジタル情報管理の最も良いハイブリッドを目指し、
数字を“疑う勇気”と“信じる現場感”を両立させていきましょう。
現場が生きていれば、数字もまた“生きている”ものです。
これが20年以上の現場経験を経た筆者が伝えたい、製造業の皆様への本音のメッセージです。
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