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投稿日:2025年12月12日

海外拠点での量産時に設計者の意図が伝わらないコミュニケーション課題

はじめに―なぜ「設計者の意図」が海外拠点へ伝わらないのか

製造業におけるグローバル展開は日々拡大し、今や多くの日本企業が海外でも量産を行っています。
その一方で、「設計者が苦労して詰めた仕様や品質要求、ちょっとした意図が海外工場に伝わらず、トラブルにつながる」「設計通りに量産が進まず、現場に思わぬ混乱が生まれる」という課題がつきまとっています。
特に、昭和から連綿と続く“暗黙の了解”や“以心伝心”に頼りがちな日本の製造文化は、グローバル化で大きな壁にぶつかっています。

本稿では、20年以上にわたる実体験と、工場現場の視点から、なぜ設計意図が海外拠点に伝わりにくいのか、その現状と根本原因を分析します。
さらに、現場で実践できるコミュニケーションの工夫や、バイヤー/サプライヤーそれぞれの立場から見た課題克服のアプローチ、そして今後の進むべき道をラテラルシンキングで掘り下げます。

量産移管プロセスの「落とし穴」―現場で起きる本当の課題

表面的な図面と“裏側の意図”のギャップ

設計者は緻密な図面や仕様書を作成します。
しかし、そこに書ききれない「なぜこの寸法設定なのか」「どうしてこの処理が必要なのか」といった暗黙の意図や、ほんの小さな工夫が現場オペレーターや技術者に伝わらない。
結果、あいまいな部分を現地スタッフが現場判断で進め、設計者の想定とは異なる状態で量産が進行しがちです。

翻訳とファンクションロス―言葉の壁以外の障壁

たとえ正確に日本語→英語に翻訳してマニュアルを渡したつもりでも、現地技術者はそのニュアンスを“自分の常識”で解釈し直します。
日本人設計者が「当たり前」と感じる品質基準や現場の心得も、ローカルスタッフには“未知のカルチャー”として映ります。
この「ファンクションロス(設計意図やノウハウが段階的に薄まっていく現象)」が量産現場のトラブルを加速させるのです。

指示系統と現地権限のねじれ

海外拠点ではローカル組織と日本側との間に多層的なヒエラルキーが存在します。
現地管理者が忖度して日本側の意向を誤って解釈したり、逆に自分たちの裁量で最適化(ローカライズ)してしまう。
この組織間ギャップが、設計段階の微妙な最適解を消し去り、設計意図が迷子になる一因となっています。

昭和的“現場の職人芸”はグローバル現場では通用しない

「見て覚えろ」はもはや通用しない

日本では多くの現場で「分からなければ先輩に聞く」「何度かやっているうちに感覚で覚える」といった経験則が重宝されてきました。
しかし、海外現地では言語・文化の壁によりこうした“阿吽の呼吸”が成立しません。
属人的な技能伝承やマニュアル化できない微妙な手順は、グローバル量産体制では再現不可能です。

「現場力頼み」の弊害が露呈

国内工場で通用していた「現場の頑張り」や「工夫による泥縄対応」は、海外ローカル工場には求められません。
設計時点でのロバスト(誰がやっても同じ結果が出る)なプロセス設計や、曖昧さを排除した情報伝達が絶対条件です。
日々現場で火を消してきた昭和型リーダーこそ、この“地殻変動”を痛感するはずです。

設計意図が伝わらないことで起こる現場のリアルなトラブル

意図の食い違いによる不良多発

例えば、冶具や工程設計の「ちょっとした」工夫を意図せず現地が省略したことで歩留まりが悪化したり、製品の安全設計が形骸化されて重大な品質トラブルにつながったり。
こうした不良は初期流動の段階では見えにくく、量産後にクレームやリコールとして顕在化する危険性があります。

サプライチェーン全体への悪影響

一見小さな伝達ミスが、最終的には納期遅延やコスト増加を招きます。
また、設計部門・現場・調達担当者・サプライヤー間で責任のなすり合いとなり、現場のモチベーション・働き方改革推進・組織の士気低下に発展することも珍しくありません。

設計意図を伝えるための具体的アプローチ

1.「なぜこの設計なのか」を見える化する(デザインインテント)

単なる図面や3Dデータだけでなく、「この仕様に込められた意図」「なぜこうなっているのか」という裏付けや判断基準を、文書やストーリーボードで添付しましょう。
“設計意図マニュアル”や“設計部門からのレター”を添え、現場での共有を徹底することで、現地スタッフの理解がぐんと深まります。

2. 双方向コミュニケーションの徹底

現場から“設計変更したい・材料を変更したい”等の疑問や提案が上がりやすい体制を作ります。
一方通行の指示型支援ではなく、現場-設計間で互いに質問しあい、誤解をその場で正せるオンライン会議やチャットツールの活用も効果的です。
設計部門側も現地スタッフの視点を取り込み、逆方向のコミュニケーションを評価軸とすることが重要です。

3. 標準化・プロセスドキュメントの強化

昭和的感覚で「ここはうちの現場なら分かるはず」と思い込まず、全ての作業・判断基準・品質ポイントを細部まで標準化しドキュメント化しましょう。
写真・動画の活用や、デジタルワークインストラクションの整備も有効です。

4. 現地へのOJT・体験型トレーニングの導入

“百聞は一見に如かず”です。
設計者自身が現地に赴き、自らプロセスやノウハウを教えることで、設計意図の理解度が格段に上がります。
また、現地スタッフを日本本社へ短期留学させる“クロスオーバー研修”を定期的に取り入れる会社も増えています。

バイヤー視点・サプライヤー視点で見る「意図伝達」の現場力

バイヤーに求められる「設計サマリー力」と「交渉センス」

調達購買担当者はただ単に図面や仕様をサプライヤーに流すだけでなく、「なぜこの部分が重要なのか」「どこが変更不可か」といった背景事情・設計主旨をきちんとサマリーして伝えることが必要です。
また、現地サプライヤーとwin-winな関係を築き、自発的な品質改善や現場提案を引き出す“対話型交渉”のセンスも今後極めて重要になります。

サプライヤーが知っておきたい「バイヤーの頭の中」

サプライヤー側も「図面通り製造する」だけでなく、発注側の“狙い”や“優先条件”を汲み取っていく姿勢が欠かせません。
「なぜこの寸法公差なのか」「なぜこの材料なのか」といった設計の“背後”にある事情を積極的に質問し、そのうえで最適な工程改善やコスト削減提案をしていく。
この姿勢が、単なる製造下請けから“付加価値サプライヤー”への脱皮につながります。

アナログ業界から脱却するためのラテラルシンキング―未来への提言

脱「以心伝心」―ドキュメントベースのカルチャーへ

どんなに優れた現場リーダーや職人がいても、今後のグローバルものづくりには「標準化」「見える化」「再現性」が不可欠です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進も、真に現場と設計の壁を取り払うラテラルシンキングな方法論が求められます。

多様性を武器とした現場力強化

現地のスタッフを“異なる文化を持つ同志”と認め、積極的に意見を聞き合うことで、日本にない創意工夫や改善案が生まれる可能性があります。
失敗を恐れず、お互いが“なぜ?”“これで本当に良いのか?”と自由に主張・質問し合えるフラットな現場づくりが、グローバル製造業の勝ちパターンになっていくはずです。

まとめ―「ものづくり」の本質を再発見しよう

製造業が真にグローバル化しサステナブルな組織となるためには、昭和的アナログ文化や、属人的な職人芸から脱却し、「設計と現場の距離」を本気で縮める取り組みが欠かせません。
設計意図の見える化・双方向コミュニケーション・標準化徹底はもちろん、現場一人ひとりの主体的な提案・改善が大切です。

あなたがバイヤーであれ、現場技術者であれ、サプライヤーであれ、“共にものづくりの本質へ回帰する”という志をもち、今の変革期を一緒に乗り越えていきましょう。
業界の未来は、あなたの「現場目線」の気づきと行動にかかっています。

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