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投稿日:2025年12月12日

品質クレームの責任分界が曖昧で双方が疲弊する構造的課題

はじめに:品質クレームに潜む“責任の曖昧さ”という構造

製造業に身を置く方であれば、一度は「品質クレーム」対応の現場に立ち会った経験があるのではないでしょうか。
そのやり取りの中で、誰が悪かったのか、どこまでの責任が自社にあるのか、あるいは取引先やサプライヤーの責任なのか——この“責任分界”がはっきりせず、延々と議論が平行線をたどる場面が、今もなお業界の至る所で見られます。

昭和から続くアナログな文化が根強く残る一方、製造業のグローバル化や法令遵守意識の高まり、顧客の要求水準の劇的な向上により、過去の“なあなあ”では解決できない時代になっています。
本記事では、品質クレームに関する責任分界の曖昧さがもたらす構造的な課題を、現場目線で深く掘り下げ、解決のための視座を提案します。

材料メーカーからバイヤーまで、複雑化するモノづくりの“境界線”

モノづくりは、多様な関係者がそれぞれの役割を担い、部品や材料、工程がつながることで完成品を創造する産業です。
サプライヤー、下請け、一次・二次仕入先、自社、さらにはエンドユーザーに至るまで、今やグローバルなサプライチェーンとして複雑に絡み合っています。

この中で、一度「不良品」「不具合品」が発生すると、通常は次のような流れです。

  1. 納品先(バイヤー)が不具合を発見し、サプライヤーに通知
  2. サプライヤーが自社工程や材料起因の有無を調査
  3. 調査結果により、どこまでが自社責任か、どこからがバイヤー主体の管理責任かをディスカッション

このプロセスの中で、責任分界が不明確なまま議論が長期化し、関係者全員の「疲弊」を招く現象が後を絶ちません。

なぜ“責任の分界”が曖昧になるのか?

責任が曖昧化する主な理由を、現場経験から挙げてみましょう。

  • 製造工程・検査フローが多層化し、「どこで」「何が」起きたかトレースしづらい
  • 図面や仕様書にあいまいな表現が多く、解釈の違いが対立を招く
  • “口約束”“慣習”が根強く残り、公式なエビデンス主義が浸透しない
  • 特に中小企業では「お客様は神様」文化があり、明記しなくてもサプライヤー側が“泣き寝入り”しやすい
  • 「一時的な現象」や「使い方次第」など、定性的な曖昧さが耐えない

経理的な責任の分界、現場検査の範囲、顧客からサプライヤーへの要求事項など、ごく当たり前に見える文言でも、運用の実態と書面が一致しないケースがほとんどです。

現場で疲弊する“本当の理由”――どちらも守りに入りやすい構造

品質クレーム対応では、調査→原因究明→再発防止という建前がありますが、現実には「誰が悪いのか」を巡る責任の押し付け合いに発展することが多々あります。

その背後には、次のような事情が潜んでいます。

バイヤー(購買側)の心理

  • メーカーの立場として、仕入先の責任にした方が損失を回避できる
  • サプライヤーに対して「仕様通り」「指示に従ったか」など重箱の隅をつつく傾向
  • 社内稟議や上司への説明用に、社外起因のエビデンスを欲しがる

サプライヤー(仕入先)の心理

  • 長年の下請け意識から、「泣き寝入り」が美徳になりがち
  • 自社起因でなければ、反発や値引き交渉でエネルギーロスが発生
  • 改善要求がエスカレートし、本来の範囲以上の対応を強いられる恐れ

このように、「どちらが損をするのか」「どちらが生き残るのか」という心理的な保身が、いたずらに事態をこじらせます。
両者が守りに入るため、建設的な議論にならないのです。

昭和的“現場主義”の限界と、デジタル活用の現状

長年の現場主義・職人気質が息づく製造業では、問題が発生した時、その人個人の経験や勘、“空気を読む”ことで問題をやり過ごしてきました。
手書きの日報や紙の検査票、会議での口頭合意など、証拠が曖昧なまま“落としどころ”を探る文化が色濃く残っています。

世代交代やIT化が進む中で、工程トレース、ロットナンバーやバーコード管理、画像解析による不良検査などデジタルツールも徐々に普及しつつあるものの、一気に昭和型アナログから脱却できないのが実情です。

困難を生むアナログ文化の弊害

  • 「言った・言わない」で真相究明がストップ
  • 担当者の異動や退職でブラックボックス化
  • 本質的な再発防止策が生まれず、場当たり的な対応のみ残る

これらの構造的課題は、現場の疲弊・不信感・隠蔽体質を深刻化させ、ひいては顧客ロイヤリティや業界競争力の大幅な毀損を招きます。

“責任の分界”を明確化するための具体策

問題の根本は、やはり事前の“責任範囲の明確な定義”と、“共通認識の醸成”に尽きます。
現場実務で有効だった対策を、いくつかご紹介します。

見積や仕様決定段階で双方のリスクを洗い出す

曖昧な図面記載、性能要求、検査基準などは、契約段階ですり合わせしておくべきです。
「ここまでがサプライヤー責任」「ここからがユーザー責任」と、タフな協議を一度はしておくことで、後々の“押し付け合い”を回避できます。

エビデンスを伴うコミュニケーション徹底

デジタルデータや工程写真、品質記録など、第三者が見ても納得できる証拠をクラウドで管理し、双方でアクセスできる体制が有効です。
“属人的ノウハウ”を脱却し、誰もが状況把握できる共有化が重要です。

共同での現地調査/プロセスレビュー推進

品質クレーム時は、当事者だけでなく第三者を交えた「現地立会い」をセットすることで、感情論や推測を抑制できます。
双方の現場エンジニアやQCメンバーで、「技術的な事実」を積み上げていく意識を優先します。

合意事項・再発防止策を明文化し、残す

短期的な“落としどころ”だけでなく、「同じ事象が再発した時の責任範囲」「コスト補償ルール」「報連相フロー」も、マニュアルや議事録として明文化しましょう。
個人の力量や記憶力に頼らず、仕組みで解決します。

ラテラルシンキングで業界構造を打破するには

責任分界の課題は、突き詰めれば「対立構造」から「共創構造」へ発想を転換することが解決への近道です。

“自分ごと”→“協働ごと”へ思考を切り替える

従来の“うちの責任ではない”という姿勢では、結果的に双方が疲弊し本質的な問題解決から遠ざかります。
取引先を“敵”ではなく“パートナー”と捉え、プロフェッショナル同士で「どうせなら一緒に解決しよう」という共通目的を持つこと。
これこそが、業界に求められる橋渡しの姿勢です。

メーカーとサプライヤー双方の知見を融合する

材料メーカーであれ、部品加工屋であれ、それぞれが“現場にしか分からない”経験知を持っています。
分業体制をただ便利に使うだけでなく、お互いの強みや課題感を率直に開示し、技術連携や品質協議の場を増やす取り組みが有効です。

まとめ:未来志向のモノづくり現場をつくるために

品質クレームの責任分界が曖昧な構造は、現場従事者・管理職者から経営層まで、全員が早期の解決を切望しているはずです。

昭和型アナログ文化の名残が悪いわけではありませんが、世界的な品質基準(ISO等)やデジタル化が進行する中、「責任と役割の明確化」は避けて通れないテーマです。

バイヤーを目指す方は、交渉力だけでなく、現場の実態を知るリテラシーを身につけるべきです。
サプライヤーの立場でも、受け身ではなく主体的に責任範囲を提案・主張する姿勢が求められています。

互いの信頼をベースに「構造自体を変えていく」発想、そして新たな地平へ踏み出す勇気が、この業界をもっと魅力的に、競争力のある場所に変えていくと確信しています。

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