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どれだけ改善しても設備の“癖”までは消しきれない現実

目次
はじめに:製造現場に潜む「設備の癖」とは何か
製造業の現場では、日々改善活動が繰り返されています。
現場力の向上や品質の安定化、原価低減など、さまざまな目的のために、5S活動やカイゼン提案、設備の維持管理から自動化まで、多岐にわたる取り組みがなされています。
しかし、どれだけ熱意を持って改善を重ねたとしても、どうしても消しきれないものが存在します。
それが「設備の癖」です。
この“癖”とは、単純な老朽化や故障とは異なり、設備ごとに生じる微妙な差異や、設計段階では予測できなかった特性、人的な操作によって生じるバラつきなど、数値やマニュアルだけでは捉えきれない現象です。
この癖が、現場の作業者やエンジニア、調達・購買担当者、さらにはサプライヤー(供給者)まで、あらゆる立場の関係者に無視できない影響を及ぼしています。
製造現場の声:「完璧な設備」など存在しない
設備の新品=パフォーマンスの最大化ではない理由
多くの場合、新規投資として最新鋭の設備が導入されたとき、「これで生産性や品質が劇的に向上する」と期待されがちです。
しかし、実際には新しい設備にも固有の癖や調整ポイントが存在します。
納入当初は想定通りのパフォーマンスが発揮できず、しばらく試行錯誤が続きます。
これは、カタログスペックやシミュレーション通りに動くことが稀な、製造現場ならではの現象です。
ベテラン作業者たちは、数々の設備と向き合いながら「●●は立ち上げ時、最初の一工程目がうまくいかない」「△△装置は温度が少し高いと誤作動しやすい」など、口伝で受け継がれるノウハウを培ってきました。
これは、設備ごとに何らかの“クセ”が発生することを皮膚感覚で理解しているからです。
経年劣化だけではない「癖」の正体
設備の癖の根本要因は、多岐に渡ります。
製造技術部の視点から挙げると、主に以下のようなものが考えられます。
・細かな機械部品の個体差(組付けの微妙なズレや加工誤差)
・制御ソフトウェアの仕様と設備全体の挙動のミスマッチ
・加わる負荷や環境条件の差異
・オペレータによる操作手順の違い、力量のバラつき
・保全・部品交換の履歴による変化
・材料(例えば板金・樹脂原料・金型など)のロット間変動との相互作用
これらは、IoT化や自動化が進んだ現代の工場でも、完全に消し去ることは非常に困難です。
逆に、現場で培われてきた「癖を読む勘」や「こうすれば本調子が出る」という暗黙知が、設備と向き合ううえでの大きな財産となっています。
バイヤー・調達担当の視点:「癖」に翻弄されるコスト・納期・品質
サプライヤーとの約束と“現場の現実”とのギャップ
調達・購買の担当者は、社内需要のヒアリングからサプライヤー選定、価格交渉、品質・納期管理まで、幅広い業務を担当します。
このとき避けて通れないのが、「この部品は本当に図面通りに上がってくるのか?」「現場での立ち上げはスムーズに進むのか?」という不確実性です。
サプライヤー側には「うちの設備ではこの寸法が出しにくい」「この工程は歩留まりが悪い」といった固有の癖が存在します。
しかし多くの場合、見積もりや図面審査段階では、その“癖”は明文化されません。
「この材質はミリ以下の精度が出しにくい」や「設備が古く、焼付きが起きやすい」といった話は、大概は量産初期のトラブルや品質クレームで初めて顕在化します。
したがって、調達担当者やバイヤーは、単なる数値や書類のやり取りではなく、「現場と設備をイメージする能力」が求められます。
コストダウンの裏に潜む「設備の制約」
コスト低減活動の一例に、“調達先の切替”が挙げられます。
このとき見落としがちなのが、「設備の癖を乗り越えられるか」です。
同じ仕様・図面でも、設備Aと設備Bでは作れる限界(設備能力)が異なります。
最安値で見積もりを取っても、後で微調整や追加工が発生し、結果的に品質トラブルやコスト高となるケースが後を絶ちません。
こうした事態を防ぐためにも、調達・購買担当者が“サプライヤー設備の実像”をつかむことが重要です。
現場訪問時、作業者や管理者に「この設備はどんなクセがありますか?」と率直に聞いてみることが、トータルコスト削減や品質リスク回避につながります。
サプライヤーの立場から読み解く:癖のある設備とどう付き合うか
納入先の「OK」とサプライヤー現場の「現実」
サプライヤーにとっても、設備の癖は大きな悩みの種です。
量産前立ち上げやQC工程表などで、取引先の厳しい要求(図面、公差、特殊仕様)を満たすために、設備の調整や条件出しに膨大な工数を割いています。
特に、他社製の中古設備や数十年選手の古いラインを使っている工場では、半ば“手仕事”に近い調整が求められます。
ここに、現場での「暗黙知」「職人芸」とも呼べる手当てやノウハウが蓄積されていきます。
この癖を知り尽くすことで「この工程は●●番設備でなければ合格率が上がらない」「この作業は○○さんにやってもらった方が安心」というルールが自然発生します。
これは表に見えない現場オペレーションですが、安定した品質や短納期対応の“秘密兵器”でもあります。
デジタル化・自動化へのジレンマ
昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されています。
センサーデータ収集やAIによる品質判定、設備保全の予兆検知など、設備個体差を“データで見える化”できる時代になりました。
とはいえ、やはり全てを数値化・自動制御できるわけではありません。
AIやIoTは「こうやったらうまくいくはず」というパターン抽出は得意です。
しかし想定を超えた現場の微妙な環境変化や“人の勘”の領域には、まだまだ到達しきれません。
ここに、アナログ業界としての製造現場のしたたかな知恵が根強く残っています。
結論:癖と付き合う力が競争力を決める
「どれだけ改善しても設備の“癖”までは消しきれない現実」は、製造業従事者・調達担当・サプライヤーの誰もが直面する普遍的な課題です。
重要なのは、「癖をゼロにしよう」とするのではなく、「癖とどう賢く付き合いこなすか」に知恵を絞ることです。
設備の癖を見極めるには、現場での観察力・対話力・歴史観まで含めた総合的な人間力が求められます。
調達担当なら、図面だけでなく現場の実態を想像し、サプライヤーに率直に質問する姿勢が大切です。
サプライヤー現場では、癖を熟知するベテランと若手の知見の伝承、IoT・DX化との融合が次世代の現場競争力を生み出します。
そして、工場長や現場リーダーの視点からは、癖を「現場の知恵資産」とみなして、チーム全体で最適解を探るマネジメント力が欠かせません。
製造業が持つ“昭和の現場力”の底力と、これを令和のデジタル最適化にどう橋渡しできるか。
設備の癖に真正面から向き合うことこそ、日本のものづくりの新しい地平線を切り拓くカギなのです。
まとめ:癖を制する者、現場を制す
製造現場の進化は止まりません。
ですが、現場で設備を扱う全員が「癖を制する者、現場を制す」というマインドを持つことが、変化の激しいこれからの時代を乗り切る最大の武器となるでしょう。
調達バイヤーも、サプライヤーも、現場エンジニアも、それぞれの立場で“設備の癖”という見えない壁を越えてこそ、真の競争力と現場力を手に入れることができます。
現場での知恵と経験を、会社や業界の枠を超えて共有していくことが、製造業全体の未来を明るく照らすはずです。
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