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投稿日:2025年12月13日

製品寿命の保証設計が現実的でなく無理が生じるケース

はじめに:製品寿命と品質保証、そのすれ違い

製造業に携わる皆様であれば、「製品寿命」というキーワードに一度は悩まされた経験があるのではないでしょうか。

製品を市場に送り出す際、必ず問われるのが「何年間、もしくはどれだけの使用で故障せずにいられるのか」という製品寿命の保証です。

一方で、現場目線で見つめ直すと、製品寿命や品質保証に関する設計要件は、時に現実離れした要求として現場に重くのしかかることもよくあります。

この記事では、私が長年現場で経験してきた「製品寿命の保証設計が現実的でなく、無理が生じるケース」を紹介します。

昭和の時代から続くアナログな設計・開発・調達の思想と、デジタル化やグローバルサプライチェーン時代におけるギャップに着目し、実践的な知識と現場でのリアルな課題解決のヒントを盛り込みながら解説します。

製品寿命設計の基礎:理想と現実のギャップ

「永久保証」はなぜ生まれるのか

多くの製品で「10年保証」や「サイクル寿命10万回」など、あたかも永久的に壊れないようなスペックが求められることがあります。

特に、住宅設備や産業機器、インフラ系部品では「長寿命・故障ゼロが当たり前」という、実現困難な要求が出されることがしばしばです。

その根底には、「お客様第一」「クレーム回避」という昭和から続く組織文化や、競合とのスペック競争があります。

しかし現場サイドに目を向ければ、素材の経年劣化、想定外の使用条件、オペレータごとのバラツキなど、設計値通りにいかない変数が多く存在します。

にもかかわらず、「故障するなんて聞いていない」「全数100%大丈夫でなければ作る意味がない」といった非現実的な要求が、未だに業界内で根強い部分があります。

現場視点:実機検証と顧客要求の板挟み

設計段階でのシミュレーションは進化しましたが、現物評価との間にはまだまだ埋めきれないギャップがあります。

たとえば、部品の材料メーカーでは、設計部門が「理論値で問題ない」としても、現場では「実際はそこまで耐久しない」「現物テストで不具合が頻発する」といった事象が多々あります。

しかし現場側から「顧客要求スペックまでは持たない」と正直に伝えると、「設計のミスだ」「コストアップは困る」と突き返される。

こうしたジレンマが、現場と設計・営業側の板挟みとなり、結果的に現場では「見て見ぬふり」や「なんとか帳尻を合わせる」仮初めの対応が温存されがちです。

この“現実と理想のギャップ”こそが、製品寿命の保証設計をややこしくする最大の要因です。

製品寿命保証に無理が生じる主なパターン

1. サプライヤーレイヤーの責任転嫁

バイヤー側の立場から見た場合、サプライヤーに対して「◯年保証してほしい」「この設計通りに絶対大丈夫なものを納入してほしい」といった要求は、ある意味当然の商慣習です。

一方で、サプライヤー側もその保証が技術的・物性的に現実的か否かを吟味せず、「上流から言われたから」と安易に飲んでしまうケースが後を絶ちません。

現場感覚としては、「実際問題、理論通りの環境や使い方はほとんどない」「上限値ギリギリ要求されても対応できない」といった本音があります。

にもかかわらず、サプライヤーが安易に保証範囲を拡大すると、「何かあれば全責任は下請け」といった構図が強化され、結果として現場に過度なストレスとリスクが降りかかります。

2. ロングライフ化要求の急伸とテクノロジーの転換点

近年のカーボンニュートラルやSDGs志向からも、製品ライフサイクルの長期化は強く求められています。

しかし、材料・電子部品・半導体などの技術サイクルは年々加速しており、「設計時に調達できた部品が、10年後には生産中止」といったリスクは避けられません。

それにもかかわらず、「これまでの部品で10年後もスペアを確保せよ」といった無理な要求が、昭和世代の意識から根強く残っている場合が多いです。

現場サイドでは「部品の供給終息や陳腐化」と「ユーザのロングライフ期待」の間で振り回され、最終的には“見えない場所で要件未達状態”が放置され続ける場合もあります。

3. 想定外のユーザ使用環境がもたらす問題

実際には、ユーザの使い方は設計者の想像を超えて多様です。

たとえば、屋内用を想定した機器が屋外で使われたり、極端な温湿度環境や、高負荷サイクルが現場独自に設定されたり、グローバル市場では想定外のインフラや電圧・周波数差などもあります。

こうした事例に対して「全てをカバーできる保証スペック」に設定しようとすると、途端に過剰設計やコスト増に直結し、現実的な量産・継続供給が困難になります。

現場の知見を活かせば、「標準環境での保証」と「特殊条件下での留意点」を分けて説明・契約することの重要性があらためて強調されます。

4. 品質保証コストと現実解のバランス問題

徹底した検査やエージング、出荷前の長期環境試験などで寿命保証を担保しようとすればするほど、生産コストや工数負担は増大します。

しかし価格競争は激化し、「保障コストは掛けられない、けれど不具合は絶対NG」という無理難題が現場へ降りてくる。

これにより「実効性のある品質活動よりも、帳票や試験データで体裁を整える」データ改ざん等のコンプライアンス問題が発生する土壌となります。

このようなバランス崩壊は、現場の疲弊やリスクの顕在化につながるため、経営や設計段階での仕様決定の合理化が不可欠です。

バイヤー、サプライヤー、現場の立場から読み解く寿命保証の落とし穴

バイヤー視点:何をどこまで求めるのが妥当か

バイヤーとしては自社ブランドを守るため、また顧客満足のために最大限の寿命・品質保証を押さえたいところです。

ですが、無理な要求が「隠れたリスク温存」や「サプライチェーン弱体化」につながることも抑えておきたいポイントです。

・保証範囲や条件を明文化する
・ユーザー使用実態に合わせて説明責任を果たし、「例外条件」や「保証外」の整理を行う
・サプライヤーへの過度な責任押し付けより、建設的な仕様協議やリスク分担が重要

こうした合意形成は、調達購買のスキルとしても必須になります。

サプライヤー/現場視点:現実的な交渉力がカギ

サプライヤーや工場現場では、「理論値保証」ではなく「実際現場で保証できる点・課題」を明確に伝える誠実さと交渉力が求められます。

・寿命に影響する主要な要素(部品、材料のロット差、使用環境等)を可視化し、数字や検証で根拠を示す
・過去の不具合事例と対応策、改善履歴を共有し、顧客とリスクを共有する
・「全数品質」「永久寿命」の幻想を捨て、「標準品質管理」と「リスク判別」のノウハウを蓄積し、必要に応じて外部に説明できる体制をつくる

現場から経営やバイヤーへ誠実に提案・報告を重ねることで、無理のない保証設計へ導くことが大切です。

ユーザー、管理職視点:製造現場の“見える化”と教育

ユーザー企業側や管理職の方であれば、「なぜこの保証設計にしたのか」「どこまでリスクを可視化しているか」を社内外に説明できる知識や体制が不可欠です。

またアナログな職人気質だけでなく、IoTやビッグデータによる寿命や不具合傾向のリアルタイム収集・解析を取り入れていくことで、根拠ある保証設計と現場・市場データのフィードバックループを強化できます。

昭和型の経験則から、令和時代の合理的データ活用への転換が、製品寿命の現実的な保証には不可欠となっています。

まとめ:寿命保証を“呪縛”から“現実解”へ

製品寿命保証設計が現実的でなくなる背景には、過去から続く「理想主義的な要求」と「現場主義的な現実」のはざまに立たされたままの業界構造があります。

バイヤー・サプライヤー・ユーザーそれぞれが「寿命保証は結局、絶対安全とは表裏一体のリスクである」という事実を直視し、現場の知見と科学的データに基づいた現実的な仕様決定こそが最重要です。

理想と現実をつなぐ“製造業バリューチェーンの進化”は、現場・技術・調達購買の全員が「対話」と「見える化」に取り組むことで、はじめて実現できます。

製品寿命の呪縛から抜け出し、業界全体で「現実的な品質保証力」を高めていきましょう。

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