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投稿日:2026年1月7日

加工液の流量不足で起きるトラブル

はじめに:加工液の流量が工場の“命綱”である理由

製造業の現場では当たり前のように使われている加工液ですが、その流量管理を軽視している現場は、いまだに多く存在します。

「加工液の流量ぐらいで大事故は起きない」
「多少少なくても製品は加工できるから大丈夫」

昭和から続く現場感覚では、こんな声も根強く残っています。

しかし、現代の精密加工や工場の自動化、高品質が求められる製品づくりにおいて、加工液の流量不足が起こすトラブルは決して小さくありません。

この記事では、加工液の基礎知識から流量不足による具体的なトラブル事例、そして改善策まで、現場目線かつバイヤーとして知っておくべき観点も交えて、くわしく解説します。

加工液の役割と流量が重要な理由

加工液は“潤滑”と“冷却”だけと思っていませんか?

加工液(クーラント、切削油など)は、主に以下のような役割を担っています。

  • 工具とワークの摩擦低減(潤滑)
  • 発生する熱の除去(冷却)
  • 切り屑(チップ)の除去・排出
  • 工具と被削材の保護
  • 加工精度の安定化

この中でも特に摩擦低減・冷却・切り屑の排出の3つは流量が不足すると一気にバランスを崩します。

なぜなら、必要な流量が維持されないことで本来の機能が十分に発揮できなくなり、結果的に様々なトラブルの引き金になるからです。

必要流量の基準は“勘”ではなく“データ”で考える時代

従来の職人技や勘に頼るやり方では、機械や加工内容ごとに最適な流量を正確につかむことは難しいです。

現在はメーカーごとに推奨値があり、加工条件によって必要な流量もセンサーや流量計でデータ管理するのが主流となっています。

その流れを無視して「前と同じで大丈夫」「これくらい入っているだろう」というアナログ思考が、流量不足トラブルを慢性化させる一因です。

流量不足で現場に起きる主なトラブル

1. 工具寿命の大幅な短縮

流量が足りないと、工具先端は本来の冷却効果を失い、摩耗の進行が著しく早まります。

特に超硬工具や高精度加工で顕著で、工具交換サイクルが短くなれば生産性低下・コスト増加を招きます。

さらに、摩耗が急速に進むことで、工具の欠損・破損による突発停止やワーク損傷という二次災害にも発展しかねません。

2. 加工精度・品質の低下

流量不足で切り屑が適切に排出されないと、ワーク表面に傷・バリの発生が増えます。

また、冷却不足でワークや治具、機械本体が熱膨張し、サイズや形状精度が狂う原因にもなります。

とくにアルミや銅など熱伝導性が高い金属の微細加工では、数μm単位で精度に悪影響が現れるため、品質クレームの要因となります。

3. 火災・発煙リスクの増大

近年ニュースになることも増えてきたのが、加工中の過熱・発煙や火災トラブルです。

流量が著しく低下(もしくは途切れた状態)でワークもしくは切り屑が発火点に達し、発煙・着火事故につながるケースもあります。

特に自動運転中や夜間無人稼働工場では、最悪の場合工場設備焼失という事態も現実的なリスクです。

4. ポンピング系・配管系トラブルの連鎖

流量を“落としたまま”運転を続けると、ポンプや配管内に切り屑やスラッジが沈着しやすくなり、詰まりやすい環境を作ります。

その結果、さらなる流量低下を招く「悪循環」に。
最終的にはポンプ焼損や配管破損につながり、生産停止・修理コスト増大など、現場全体のパフォーマンス低下を招きます。

現場でありがちな“見落とし”ポイント

1. 流量計・センサーの未整備

設備投資のコストカットや「故障時以外はつけなくてよい」という判断で、そもそも流量計が未設置のまま運用されている保存現場も散見されます。

また、計器の定期点検や校正が行われていない事例、センサーが設置されていても表示を確認(記録)する運用になっていないことも少なくありません。

2. 加工条件変更時の“流量再調整忘れ”

工具やワークの材質・形状、切削条件を変えたのに、流量は以前のままというケースもよく見受けられます。

新しい材料・高精度ワークほど適正なクーラント流量管理が求められるため、条件変更時には必ず適正流量データに基づいた再調整が重要です。

3. 配管・タンク清掃の抜け落ち

流量不足の原因として多いのが、配管内部やタンクへのスラッジ・切り屑沈着です。

消耗品やフィルター交換周期が守られていない現場、タンク内の清掃が整備計画から外れている現場では「詰まり」による想定外の低流量状態を招きます。

バイヤーが知っておくべき視点:「安さ」だけで選んではいけない

QCD(品質・コスト・納期)に“安全”を加えた評価軸

バイヤーとして加工液や関連機器を選定する場合、多くの担当者はまずコスト・納期・供給安定性を重視しがちです。

しかし、評価の際に「適正流量を長期間安定供給できるか」「詰まりにくい仕様か」「メンテナンス性に優れているか」といった観点を十分吟味しないと、現場が苦労します。

最終的には、流量不足によるトラブルコストや品質低下の損失が、表面上の“安さ”をはるかに超えて跳ね返ってきます。

サプライヤーに求められる技術サポート

求められるのは、単なる“物”の供給だけでなく、「加工条件や設備に応じた適正な流量設計サポート」や「現場での流量管理指導」など、付加価値のあるサービスの提供です。

サプライヤーとしても、流量の重要性・現場改善の具体事例を伝えられる技術営業力が競争力につながります。

流量不足の未然防止に効く!現場実践ポイント

■ 加工液管理の「見える化」徹底

センサー・流量計の導入は必須です。

見える化することで異常検知のスピードが上がり、定量的な改善PDCAサイクルも回しやすくなります。

データの自動記録やIoT化を進めることで異常値の早期警告も可能です。

■ 定期清掃・定期点検のルール化

意外と手薄になりがちなタンク・配管の清掃と、フィルターやポンプのメンテナンス周期の明文化が重要です。

人手不足の今こそ、作業マニュアルや年間点検計画表をわかりやすく整え、班ごと・担当者ごとに確実に実施する仕組みが有効です。

■ 設備投資時の“適正流量”重視

新規導入やリプレース時には、目先の本体価格や納期だけでなく「適正流量が現場の加工内容に合っているか」「想定外の詰まりリスクを設計段階で回避できるか」などの検証を怠らないことが求められます。

また、現場とバイヤー、サプライヤーが一緒になって流量管理の水平展開・標準化を進めることで、工場全体の生産性と安全性を底上げできます。

まとめ:加工液流量は製造現場の根幹―“データに強い工場”こそ生き残る

加工液の流量は、見過ごされがちですが、実は現場のクオリティや安全性を左右する“命綱”です。

流量不足によるトラブルは、短期的な品質・生産性低下だけでなく、火災などの重大事故や修理費高騰、QCDバランス崩壊といった深刻な事態を引き起こします。

昭和的な勘や「これぐらい大丈夫だろう」といったアナログ思考を脱し、センサー・データ化の徹底、きめ細やかなメンテナンス、バイヤー視点での現場起点の製品・サービス選定が重要になっています。

現場で働く方、バイヤー、サプライヤーすべてが「加工液の流量管理」を共通言語に、データに強い現場づくりを推進することで、工場の未来はより明るいものになることでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

皆さまの現場改革やバイヤー選定業務、付加価値提案の一助となれば幸いです。

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