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投稿日:2026年1月19日

ISO 10816振動診断で設備異常を見抜く方法

はじめに:ISO 10816振動診断の重要性とは

製造業の現場において、設備の突発的な故障や異常停止は、生産ラインの大きなリスクと直結します。

そのリスクを最小化するために、多くの現場では予知保全が注目されています。

近年、特に着目されているのが「ISO 10816」に基づく振動診断です。

設備の異常や劣化を早期に発見するための信頼性が高い指標として、多くの現場で活用が進んでいます。

本記事では、20年以上の現場経験で培った知見とラテラルシンキングの視点を交えつつ、ISO 10816振動診断の実践的な使い方と業界の現実、そして今後の課題について解説します。

ISO 10816とは何か?:標準化された振動判定基準

ISO 10816は、「回転機械の機械的状態評価のための機械振動の規格」として国際標準化されています。

この規格は、回転機械の振動計測値を基準として機械の健康状態・異常兆候を診断する際の“ものさし”です。

日本国内の多くの製造業もこれを優先的に採用しています。

現場では、特にポンプ、ブロワ、ファンなどの回転設備が多く、この標準に基づく診断が大きな役割を果たしています。

ISO 10816で規定される評価基準のポイント

ISO 10816では、設備の設置状況や機械の種類、出力に応じて許容振動値が定められています。

異常や故障の早期発見を目指すには、基準値を正しく理解し、自社の設備スペックに適した運用が肝心です。

たとえば、出力区分が0.15kW~15kWの小型ポンプと、15kW以上の大型ポンプとでは許容値が異なります。

現場では「基準値を画一的に適用して失敗した」という声をよく耳にします。

これは、設備ごとの個体差や設置環境、過去メンテナンス履歴などの現場事情を無視した“机上の数値適用”によるものです。

実際には、基準値を軸に「自社の“正常状態”のデータベースを蓄積し、比較運用していく」ことが、昭和に根付いた“職人の勘”と並行する現実解と言えます。

現場のプロが考える振動診断の実務ポイント

現場で使われる振動計測は、単なる数値測定では終わりません。

「どの位置で、どの方向で、どのタイミングで」測るか、現場ごとの工夫や熟練が求められます。

センサーの設置ポイント一つで、診断結果は左右されます。

データ取り出し位置による判断精度の差

異常検知の感度を高めるには、回転機軸受けのラジアル(半径)方向とアキシャル(軸方向)の両方での測定が推奨されます。

しかし、実際の生産設備では保守スペースが限られている、保護カバーが頻繁に設置されているなど、理想通りには測定できないシーンも多々あります。

こうした現場事情を理解し、自社設備の“最低限守るべき測定ポイント”を決め、備忘記録化しておくことが重要です。

「正常値」を自分たちで定義する文化の必要性

ISO 10816の示す数値はあくまで指標です。

「新品設置1ヵ月後」「年次メンテナンス直後」など、節目ごとに振動データを取得・記録しておく。

これが貴重な「自社の正常データベース」となり、予知保全のPDCAの起点となります。

この地味な地道さこそが、ベテランの“勘”をデジタル化し、昭和アナログからの脱却を支える重要なポイントと言えるでしょう。

ISO 10816を活用した異常発見アクションの具体例

どのようなケースでISO 10816振動診断が具体的な“気づき”や“異常発見”につながるのか?

現場でありがちな実例を踏まえて解説します。

ケース1:温暖期の突然の振動増加

夏場、空調や冷却水ポンプが高回転で稼働しはじめた際、振動値が突如基準値を上回る例は少なくありません。

この場合、設備自体の異常というより、パイプラインの水量変化やベースアンカーの緩みなど、周辺環境の変化に起因する場合もあります。

ISO 10816の数値をきっかけに、「普段と違う何かがある」と早期に異常兆候を察知できることが特徴です。

ケース2:交換直後の軸受異常

定期的にベアリング交換をした後、振動診断で通常とは異なる特徴的な値が出る場合があります。

この際、ISO 10816基準のみを鵜呑みにせず、過去データと照合することで「締め付けトルクが過剰だった」「グリース注入量が不適切だった」という原因究明につながることも多く見受けられます。

バイヤー・サプライヤー双方から見たISO 10816の意義

調達部門やサプライヤー側から見ても、ISO 10816による振動診断データは大きな価値をもちます。

バイヤーとしては、「安価な設備でも、確実に異常検知ができるか?」という視点が重要です。

逆にサプライヤーは、「当社設備はISO 10816順守で安全性を担保できます」というアピールが、信頼獲得のうえで武器となります。

調達購買における振動診断データの活用

実績あるベンダーとの取引であっても、数値的裏付けや過去トラブル履歴の有無を“見える化”したうえで協議する文化が広がっています。

稟議やコスト削減といった伝統的な商習慣のなかで、ISO 10816基準値の提出を求める傾向も高まっています。

これは信頼関係の可視化のみならず、将来的な保守部品調達の効率化やメンテナンス契約の適正化にも寄与します。

サプライヤーが差別化するための提案力

サプライヤーとしては、「自社製品はISO 10816の厳格な管理下で振動監視されている」「異常兆候を早期に発見しトラブル最小化するための教育を現場に対しても実施できる」といった、現場力・付加価値の見せ方が競合との差異化ポイントとなります。

現場のデジタル化やIoT化が謳われるなか、「デジタルに弱い現場だからこそ、標準に頼る安心感」を訴求し、取引先に安心材料を提供することが重要となっています。

アナログ現場に根付く管理職の役割と意識改革

ISO 10816は標準化規格ですが、日本の製造業現場は昭和時代から根付いたアナログな運用・価値観がいまだ強く残っています。

現場の管理職としては、ベテランと若手、現場と管理部門、国内と海外現法のギャップを埋める“橋渡し役”が求められます。

ベテランの「経験値」と規格値のすり合わせ

従来は「この音、この振動なら大丈夫」「何か変だと思ったら注意深く見る」という職人技で成り立っていた設備保全も、世代交代が進むいま、客観的な数値化が避けて通れません。

ISO 10816の数値と、現場の違和感・気づきを両輪で磨いていくことが、長期的トラブルゼロと技能伝承を同時に実現するカギとなります。

管理職・経営層のリーダーシップが成果を分ける

「こんなアナログ現場だから無理だ」「手間がかかるから続かない」と言い訳せず、ISO 10816の意義と本質を現場に噛み砕いて語り、データベースの蓄積や教育にコツコツ取り組む。

管理職が先頭に立ち、習慣化を後押しするリーダーシップが求められています。

今後の展望と、製造業現場の未来

日本の製造業は今、40歳以降の“ミドル世代”が大量退職し、IoTやAI、ペーパーレス化が急速に進行しています。

こうした時代のなか、ISO 10816標準で蓄積した振動診断データは、設備の“デジタルカルテ”としてAI診断、将来の自律保全(JH)への布石となるでしょう。

古き良き現場力に、世界標準の論理と数字が融合することで、日本のものづくりの未来はさらに輝くはずです。

まとめ:ISO 10816を軸に、現場と現場力のデジタル化を進めよう

ISO 10816振動診断は、単なる“規格”にとどまりません。

昭和時代のアナログに根付いた現場にも馴染む「現場目線で役立つ標準ツール」として発展し続けています。

自社基準との突き合わせやデータベース化、バイヤーサプライヤー間の信頼形成、現場リーダーの意識改革…こうした複数観点から標準を使いこなすことで、日本の製造現場は常に新しい地平線を開拓していけるでしょう。

振動診断という切り口から、日本のものづくりに関わる全ての方の現場力向上と安全・安心な生産活動を心から応援しています。

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