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FDA 21 CFR Part 820が医療機器製造に求める品質体制

FDA 21 CFR Part 820が医療機器製造に求める品質体制
はじめに
製造業に携わる方、特に医療機器分野に関わる皆様にとって、「FDA 21 CFR Part 820」という規制は避けて通れないものです。
アメリカ市場に製品を出す場合、この規制に適合した品質システムを整えることが必須となります。
しかし、現場で実際に動かしていくとなると、「どこから手を付けるべきか」「具体的に何が求められているのか」と悩むことが多いのも事実です。
この記事では、20年以上の現場、管理職としての経験を活かし、FDA 21 CFR Part 820の本質と、昭和から続くアナログ的な製造現場にも根付かせやすい実践的な品質体制の構築手法について、深く掘り下げてご紹介します。
FDA 21 CFR Part 820とは何か?
まずは基礎知識のおさらいです。
FDAはアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)のことで、21 CFRは連邦規則集(Code of Federal Regulations)第21編を意味し、Part 820は「Quality System Regulation(QSR)」、すなわち医療機器製造に関わる品質システム規則を指します。
この規則は、製品が一貫して適切な品質で生産・管理されることを目的としています。
ISO13485と部分的に重なりますが、独自の要求事項も多く、アメリカ進出を目指すなら避けて通れません。
医療機器製造における品質体制の必須項目
規則の中身は多岐に渡りますが、現場の視点で重要なエッセンスを抽出すると、以下の5つにまとめられます。
- 品質マネジメント体制の構築
- 設計管理と設計変更の徹底
- サプライヤ管理(Purchasing Controls)の強化
- プロセスバリデーションと工程管理
- 不適合・是正処置・予防処置(CAPA)の運用
それぞれ現場で直面する課題とともに、実践的な対策を具体的に説明します。
品質マネジメント体制の構築:トップダウンとボトムアップの融合
FDAは、品質管理責任者を明確に定めること、必要な資源の投入、責任・権限の明文化を求めています。
多くの現場ではこれが「名目だけ」で終わりがちですが、昭和からの体質が残る日本の工場文化でも、現場力を積極的に活用することで実効的な体制に変革できます。
例えば、月次の品質会議に現場作業者代表も参加し、小さなヒヤリハットまで日報で吸い上げる仕組みを作ります。
これにより、経営層の品質方針が現場作業へ自然に落とし込まれ、逆に現場の課題感を経営が肌で感じる好サイクルが生まれます。
設計管理と設計変更:記録と承認フローを属人化から脱却
医療機器は設計次第で患者へのリスクが大きく変わってしまいます。
そのため、初版設計だけでなく、設計変更のたびにその妥当性や承認プロセス、影響範囲の明確化・記録が必須です。
しかし、日本の多くの現場は「口頭伝承」や「暗黙の了解」に頼りがちです。
これを脱却する最初の一歩は、紙ベースでも構わないので、設計や仕様変更のたびに「設計変更管理票」を起票し、承認印が揃って初めて反映という厳格運用への変更です。
そのうえで、デジタル化(Excelや簡易ワークフローソフトの活用)を段階的に進めることで、作業負荷も最小化できます。
サプライヤ管理(Purchasing Controls):取引先との信頼を超える仕組み作り
サプライヤ選定や評価、変更管理はFDAが特に重視するポイントです。
既存サプライヤを「長い付き合いだから安心」と漫然と使い続けることは、今後の国際競争でリスクになります。
具体的には、次のサイクルを実践します。
- サプライヤ評価基準の明文化
- 定期的な現地監査や工程視察
- 供給品質・納期・改善提案などのKPI評価とフィードバック
これにより、お互いの「雰囲気」や「空気」ではなく、定量的な評価と透明性ある関係となります。
また、FDAの監査では「どのような評価基準で選定しているか」「変更時の手順や評価内容」なども必ず問われるため、文書化と実効性の両立がカギとなります。
プロセスバリデーションと工程管理:自動化とアナログ現場の橋渡し
医療機器のプロセスは「作るだけ」では済みません。
「常に同じ品質が出る」ことを示すためのバリデーション(妥当性確認)が求められます。
日本の昭和的な工場現場では「ベテランの技能者が調整して何とかしている」ことも多いですが、この属人化を自動化や文書化で克服することが重要です。
温度・圧力・締付けトルク・洗浄度など、ヒューマンエラーが生じやすい工程から優先的に、計測・記録の自動化や「良品/不良品を数値で明示するライン」を整えることが求められます。
自動化までは難しい場合、最低限として「チェックリスト」や「工程作業標準書」を現場で書き足し、更新していく文化を根付かせることが求められます。
不適合・是正処置・予防処置(CAPA):ばらつきを源流で叩く仕組みへ
「不良の発見」はゴールではなく、改善ストーリーのスタートに過ぎません。
FDAでは、不適合が生じた際に「原因究明・是正・再発防止・記録保存」を徹底するCAPA(Corrective and Preventive Action)が求められます。
昭和的な現場では「その場で直して終わり」が良くも悪くも根強いですが、むしろ「現場の知恵・工夫」を“公式なノウハウ”へ昇華する絶好のチャンスと考えるべきです。
たとえば、不適合票の起票とあわせて、その対策を写真付きで残したり、再発防止策の有効性検証までを併せて記録します。
これをナレッジベース化することで、社内の地力が高まり、偶発事象にも強い組織へ進化します。
属人的現場の「昭和流」から「グローバル基準」への転換ポイント
FDAの品質規則が求めるのは、個人プレーに頼らず、誰が作業しても誰が検証しても「変わらず高品質が担保される」ことです。
昭和から続く現場の強みは、「現場力」や「改善力」にあります。
これらの資源を活かしつつ、「記録・仕組み・見える化」というグローバル基準を追加していくことが最重要課題となっています。
「紙・手書き」が残る現場でも、まずはチェックリストや標準書の運用から始め、徐々に電子化を導入することで、少ない投資で大きな成果を出すことができます。
サプライヤ・バイヤー・新規参入者の視点から見るFDA対応のメリット
サプライヤとしては「面倒・負担増」と考えがちですが、このプロセスを乗り越えることで、世界トップクラスの医療機器サプライチェーンに参入できる扉が開きます。
また、バイヤー視点では「何を見て取引先を決めているか(兼ね備えてほしいか)」を具体的に理解でき、自社の強み・弱みも客観的に把握できるようになります。
新規参入者であれば、「最初からグローバル基準でプロセスを作る」意識を持つことで、後々の大きな事業チャンスや成長につながります。
まとめ:現場の知恵とグローバル品質を両立する新しい地平線
FDA 21 CFR Part 820の品質規則は「医療機器製造=サイエンス」を追求しつつも、人と現場の力が最大化されるシステム構築を導きます。
昭和的現場力とグローバルスタンダードの“橋渡し”こそ、今後の日本の製造業、その中でも医療機器分野が世界と戦うために不可欠な視点です。
「人と仕組みの両立による品質体制の高度化」――ぜひ、現場目線で今日から始めていただきたい改革の第一歩です。
今後も製造業の実践的な知恵を中心に、新たな地平線を切り拓くヒントや事例を共有していきます。
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