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IEC 60529のIP規格を現場目線で理解する

IEC 60529のIP規格を現場目線で理解する
はじめに:なぜIP規格が製造現場で重要なのか
製造業の現場では、機械や設備の耐久性や安全性、信頼性が何よりも重視されてきました。
昭和から続く現場では、「俺の経験が全てだ」という声も根強く聞こえてきますが、グローバル化や品質要求の高まりにより、国際規格への理解と適用が避けて通れない時代になっています。
その中でもIEC 60529の「IP規格(Ingress Protection)」は、装置や部品の防塵・防水性能を世界共通の尺度で示す規格として、多くの製造現場で活用されています。
今回の記事では、実際の現場で長年培った知見をもとに、IP規格の真の意味と現場で生かすポイント、バイヤー・サプライヤー両者の視点で現場目線で解説していきます。
IEC 60529とIP規格とは何か?
IEC 60529は国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)が定めた、電気機器の外郭による保護等級を規定した標準規格です。
一般に「IP等級」または「IPコード」と呼ばれ、IPのあとに続く2つの数字でその保護のレベルを表します。
たとえば「IP67」といった表記です。
数字の一つ目(例:6)は“固体異物”の侵入に対する保護を示し、二つ目(例:7)は“水”の侵入に対する保護を表します。
このように簡単な数字の組み合わせで、現場の環境や用途に最適な機器を選定することができるのです。
IP等級それぞれの意味を現場の目で見直す
働く現場での機器選定において、IP等級の数字の意味をきちんと理解している人が意外と少ないのが実情です。
カタログスペックだけ鵜呑みにして、適さない装置を導入し、後々手間やトラブルになることもしばしばあります。
第1記号:固体異物の侵入に対する保護
0:特に保護されていない
1:φ50mm以上の大きさの固体が入らない
2:φ12.5mm以上の固体が入らない
3:φ2.5mm以上の固体が入らない
4:φ1.0mm以上の固体が入らない
5:防塵形(塵埃の侵入は完全には防げないが、機器の正常運転に支障がない)
6:耐塵形(粉塵が中に入らない)
現場では、切り粉や研磨粉、埃の多い場所に設置する機器や、分電盤、制御盤などに求められます。
第2記号:水の侵入に対する保護
0:特に保護されていない
1:鉛直に落ちてくる水滴(結露)の影響がない
2:15度まで傾いても水滴が影響しない
3:散水、噴霧される水に耐える
4:あらゆる方向からの水の飛まつに耐える
5:ノズルによる噴流水に耐える
6:強いノズル噴流に耐える
7:一時的に水中に入れても影響がない
8:継続して水中に沈めても影響がない
例えば、食品工場や医薬品工場のような水洗いや湿度が高い現場、また屋外設置の機器で特に要求されます。
現場での落とし穴:カタログに頼りすぎないIP等級の見極め
実務では「IP54だから大丈夫」「IP67なら水没OK」と思い込みがちですが、現場目線ではより細かな注意が必要です。
例えば、IP67でも“水中使用可能”と安易に判断してはいけません。
真の現場力とは、“IPテストの限界”や“実機の設置条件”まで把握し、設備選定をすることです。
– 試験条件(深さ、圧力、塩分、温度)はカタログと現場が一致しないことが多い
– 維持管理・経年劣化でIP性能が低下する
– メンテナンスの際にパッキンやシール材の交換忘れが思わぬトラブルを誘発する
現場では、「仕様適合=万能」ではなく「運用・保守も含めて最適解は何か?」を常に意識することが重要です。
バイヤー・サプライヤーの視点:IP規格の“交渉術”
バイヤーの立場からは、「本当にIP67が必須なのか?」「価格とスペックの最良バランスは?」という視点が必要です。
必要以上に高いIP等級を要求すれば、コストは跳ね上がりサプライヤーも対応困難になります。
サプライヤーの立場では、仕様提案やリスク説明の際に「IP67だが、温泉地や化学工場など特殊環境なら追加対策がいる」など、現場ノウハウを交えて差別化・信頼の獲得につなげます。
お互い、「カタログスペックだけ」の理想論を押し通すのではなく、現場の実態・今後の保守・妥協点も含めた“活きた交渉力”が求められるのです。
デジタル時代の製造現場で加速するIP規格の必要性
昭和の流儀に頼るアナログ現場も、デジタル通信機器やAIロボット、IoTセンサーの導入が進む中で、IP規格はますます重要になっています。
安易なカスタマイズや後付け対応は、システム全体の信頼性・コストを圧迫し、ひいては会社の競争力の低下につながります。
特に、協働ロボットや自動搬送装置など人と機械が混在する新しいタイプの生産環境では、
「どの部品・配線がどの程度のIP等級か?」
「万一、ラインストップやトラブル時の被害範囲は?」
といった“現場のリアルな目”で検討・設計することが、これまで以上に強く求められています。
現場で役立つIP規格の生かし方・工夫のコツ
どこまで防塵・防水が必要か?“運用”も含めた最適化
必要な保護レベルを見極めるには
– 実際の運用状況(定時清掃?突発水洗い?)
– 置かれる場所(屋外・屋内・高温多湿・防爆)
– 作業者の習熟度(うっかりミス多発?)
まで徹底的に洗い出しましょう。
投資コスト・保守コスト・安全性のバランスで最適解を探ることが大切です。
“二重化”や“現場養生”でIP不足を補う
どうしても高IPの機器がない場合や予算がないとき、
– 防塵カバーや簡易シェルターの設置
– 配線の上げ下げや、配電盤のパッキン追加
– 定期的な点検・清掃ルールの徹底
など、現場独自の工夫や改善を積み重ねることも大きな力となります。
“現場の声”をデータで伝える:トラブル傾向の可視化
現場発生の異常や故障を、IP等級との関連で記録・分析し、バイヤー・サプライヤー・設計担当全員で共有すれば、次回以降より強い製品・仕組みに生かすことができます。
紙や経験だけではなく、いかに“根拠ある現場最適”をデータで伝えるかが、昭和的現場からの真の進化といえるでしょう。
これから求められる製造業のIP規格への“本質的な理解”
「IP規格を鵜呑みにしない応用力」と「現場に即した細やかな配慮・改善力」こそが、これからの製造現場には必要です。
メーカーやサプライヤー、バイヤーが「本当に必要な性能・コスパ・安全性・生産効率」を率直に議論し合い、“現場目線”に立った最適解を継続的に追及すること。
これこそが、日本の製造現場が昭和の枠組みを超え、デジタル新時代にも強く誇れるポイントだと考えます。
まとめ:カタログを超えて、現場力でIP規格を生かそう
IP規格(IEC 60529)の数字は単なる記号ではありません。
実際の現場環境、作業習慣、将来の保守までを見通して最適な製品・仕組みづくりにつなげていく、バイヤー・サプライヤー双方の“現場感覚”が何よりも重要です。
これからも現場と仕様書、数字と現実のギャップを埋め、製造業の発展につなげていきましょう。
IP規格を使いこなす知恵と工夫が、経営力・現場改善力の礎となります。
製造業従事者、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤー目線を知りたい方々が、今日の記事で“現場目線”の大切さとIP規格の真意を再認識いただければ幸いです。
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