調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年1月19日

ISO 22000の基本とHACCPとの違い|食品製造業が押さえるべき要点

はじめに

食品を扱う製造業の現場において、食の安全・安心を担保する仕組み作りは、時代とともにその重要性を増しています。
ISO 22000とHACCPという言葉は、現場担当者やバイヤーのあいだでは広く使われていますが、それぞれの基本的な違いや特徴、そして現場で求められる実務への落とし込みには、誤解や思い込みが多いのが現状です。
本記事では、「ISO 22000の基本とHACCPとの違い」というテーマで、製造現場目線から実践的なエッセンスを交えながら解説します。
また、アナログ慣習が色濃く残る食品業界での活用ポイントや、バイヤー・サプライヤー双方に必要な視点についても深堀りしてお伝えします。

ISO 22000とは何か

国際標準化された食品安全マネジメントシステム

ISO 22000とは、国際標準化機構(ISO)が策定した食品安全マネジメントシステム(FSMS:Food Safety Management System)の国際規格です。
この規格は、食品のサプライチェーン全体にわたり「安全な食品を消費者に届ける」ための管理体制や手順を規定しています。

ISO 22000の大きな特徴は、農場から食卓まで(Farm to Fork)のプロセスを想定していることです。
食品製造業はもちろん、輸送業者や倉庫業者、梱包資材メーカーなど、フードチェーンを構成するすべての企業がその対象となります。

ISO 22000の主な構成とPDCAサイクル

ISO 22000は、トップマネジメントのリーダーシップ、リスクアセスメント、情報の伝達、必要な資源の管理、運用や改善プロセスの監視など、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルに基づき構成されています。
こうした仕組みによって、ISO 22000は組織文化として食の安全を根付かせる効果があります。

現場目線で求められること

現場担当者には、単なるマニュアル運用ではなく、現実の製造ラインのリスクや特性に即した運用設計が求められます。
つまり、形だけの導入でなく、毎日の運用に自然と溶け込む「仕組み」としてのISO 22000が理想なのです。

HACCPとの違いとは?

HACCPは「手法」、ISO 22000は「システム」

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品の製造工程における危害要因分析と重要管理点の設定によって、安全性を確保するための管理手法です。
一方、ISO 22000は、このHACCP手法を中心に据えつつ、それだけでなく、組織運営・文書管理・教育訓練・内部監査など、マネジメントシステム全体を規格化したものです。

法規制と国際規格の立ち位置の違い

HACCPはもともとNASAの宇宙食開発時に生まれ、現在は世界中で広く採用され、日本でも食品衛生法に基づく義務化が進んでいます。
ISO 22000は、民間企業による任意の認証ですが、グローバルバイヤーの調達要件や、企業のブランド価値の裏付けとして求められることが多いです。

現場で混同しがちなポイント

現場では「HACCPもISO 22000も同じもの」と見なしてしまう課題がしばしば見受けられます。
しかし、HACCPはあくまで危害管理の手法の部分的要素、ISO 22000は組織のルール・仕組み全体と捉えることが正確です。

食品製造業が押さえるべきISO 22000の要点

製造現場のリスクアセスメントと管理点の明確化

ISO 22000を現場で活用する最大のポイントは、「各工程ごとにどんなリスクが潜んでいるか」を正しく可視化し、危害要因・管理点を組織的に監視することです。
たとえば、原材料搬入・受入検査からライン投入、加熱・冷却、最終包装、出荷まで、複数の管理点を設定することで、ミスや漏れを防止します。

力量評価・教育訓練の仕組み化

現場スタッフの知識やスキルレベルは、製品の安全性に直結します。
ISO 22000では、従業員ごとの「力量評価」や「定期的な教育訓練の実施」が明文化されており、OJTやマニュアルだけに頼らず、システマティックな管理が重要です。
特に、ベテランスタッフの現場知見を標準作業書などに反映させる「暗黙知の形式知化」が求められています。

コミュニケーションの重要性

ISO 22000は、「内部」「外部」双方への情報伝達のプロセスを重視しています。
サプライヤーや外注先への情報共有、顧客(バイヤー)との技術的な質疑応答、問題発生時のエスカレーション体制など、現場発信による情報伝達が不可欠です。

昭和的アナログ文化が根強い現場における対応策

紙台帳・スタンプ文化からの脱却

食品製造の現場では、今なお紙台帳やハンコによる「証跡管理」が主流の会社も多く存在します。
ISO 22000の導入により、電子化・システム化が推奨されますが、全てを一挙に変えることは現実的ではありません。
現場に負荷をかけず、徐々に紙/デジタルのハイブリッド運用から始め、システム導入の効果を現場で“体感”してもらうことが改革成功のカギとなります。

属人的ノウハウの標準化とチーム化

長年の現場勘やヒューマンスキルに依存したやり方は、リスク対応の点で不安材料になります。
ISO 22000を介して、ベテランの「経験・勘・コツ」を見える化し、全員で共有できる社内教育やマニュアル作りが大切です。
こうした”アナログの知恵”とシステムの融合が、現場力強化につながります。

バイヤー・外部監査への柔軟な対応力

バイヤーからのサプライヤー監査や、ISO認証機関による審査に対応するためには、現場のスタッフも「なぜこの工程管理が重要なのか?」といった根拠説明が求められます。
単なる丸暗記でなく、「納得して運用する」現場主体の文化作りがとても効果的です。
現場に根ざした改善提案が評価されるため、従来型のトップダウンではなく、ボトムアップの意識改革も推進しましょう。

バイヤー・サプライヤーにとってのISO 22000の価値と運用

バイヤー視点のチェックポイント

バイヤーは調達先を評価する際、「ISO 22000認証済みか?」の有無だけをチェックしがちですが、それだけでは不十分です。
実際に現場を見て、「運用が実態に合っているか」「現場教育・報連相が回っているか」をチェックすることで、より本質的な製品安全を確保できます。

サプライヤーがバイヤーに伝えるべきアピールポイント

単に認証を取得するだけでなく、「当社では、ISO 22000の仕組みを運用現場までしっかり落とし込んでいます」「HACCP管理は全員理解して現場改善にもつなげています」といった自社の強みをプレゼンできることが肝要です。
現場の実例、教育体制、改善サイクルなどをデータやストーリーで見せられると、信頼獲得につながります。

ステークホルダー協調のための情報共有

農場、物流、加工、販売…といった長大なフードチェーンでは、各社が持つ情報の齟齬やタイムラグが事故に直結します。
ISO 22000の運用を通じて、サプライチェーン全体での「共通知識」「リアルタイムな情報共有」ができれば、リスク低減やコスト削減にも効果を発揮します。

将来を見据えたフードセーフティ・マネジメントへの進化

食品業界は人口減少や人手不足、地球温暖化や異常気象、国際的な原材料調達など、さまざまな課題を抱えています。
こうした時代背景の中、ISO 22000やHACCPに基づく「食品安全の仕組みづくり」は、単なるリスク管理ではなく、品質力・ブランド力の向上にも直結します。

現場が主体的に仕組みをアップデートし、攻めの「食の安全文化」を作り上げることで、バイヤーとサプライヤーがWin-Winの関係を築くことができるのです。

まとめ

ISO 22000は、HACCPを包含しつつ、より広範なマネジメントシステムとして、食品製造業に根ざした運用を求める国際規格です。
アナログ文化が色濃く残る現場でも、ISO 22000の考え方を柔軟に取り入れることで、大きなリスク低減と企業価値向上が同時に期待できます。

バイヤーは認証の有無だけでなく、現場の実態や改善サイクルに目を向けること。
サプライヤーは強みや創意工夫を積極的にアピールし、共創する姿勢が求められます。

これからの食品製造業は、現場目線×管理システム×サプライチェーン全体最適という三位一体で、食の安全・価値創造に取り組むことが重要です。
現場から始まる「食の安全文化」こそが、未来の競争力につながるのです。

ノウハウ集ダウンロード

製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが重要だと分かっていても、 「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」 そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、 どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを 一緒に整理するご相談を承っています。 まずは現状のお悩みをお聞かせください。

You cannot copy content of this page