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EN 1090が欧州向け製品で必須な理由

目次
EN 1090が欧州向け製品で必須な理由
はじめに
製造業、特に金属加工や構造物、橋梁、建築部材などを取り扱う現場で、近年避けて通れないキーワードが「EN 1090」です。
この規格は、欧州市場向けの製品輸出やグローバルサプライチェーンに関わる皆さんにとって必須の知識となっています。
では、なぜ今EN 1090がこれほどまでに重視されているのでしょうか。
20年以上の現場経験を持つ筆者が、バイヤー視点、サプライヤー視点、現場目線のリアルな話を交えながら、具体的にその理由と実務への影響を解説します。
EN 1090とは何か?
EN 1090とは欧州の建設製品規則「CPR(Construction Products Regulation)」に基づき、鋼およびアルミニウム構造物や部材の設計から製造、施工、評価までの品質を担保するヨーロッパの統一規格です。
フルタイトルは「EN 1090-1:鋼およびアルミニウム構造物の構成部材に関する適合評価」です。
2014年7月から施行され、これ以後、EU域内に導入される構造金属製品はこの規格に適合し、その証明(CEマーキング)が義務付けられました。
つまりEN 1090非準拠のままでは、欧州市場での販売や流通ができなくなったのです。
なぜ制定されたのか?
日本の現場でも感じられる昭和的な「熟練者の勘・経験」重視、個別最適の風土は、欧州でも過去長く存在していました。
しかし、ボーダレス化が進みサプライチェーンが広域化する中、各国が独自の基準で製品を流通させれば、事故や品質トラブルに繋がります。
よって「欧州全体で共通した品質基準が必要だ」という強い動きからEN 1090が生まれたと言えます。
国境を越える構造物、例えば橋やビル、エネルギープラント構造体など、安全性・追跡性・透明性を担保する必要性が高かったのです。
EN 1090の具体的な要求事項とは
EN 1090は設計~溶接・組立て・記録管理に至るまで、多岐にわたり品質保証の仕組みを求めます。
主要なポイントを現場寄りにまとめました。
製造管理体制の構築
ISO 9001のような品質管理マネジメント体系と似ていますが、EN 1090では特に次の点が強調されます。
・WPS(溶接施工要領書)の文書化と運用
・溶接オペレーターの資格証明(適格者による施工)
・材料のトレーサビリティ確保
・必要に応じた非破壊検査(NDT)の実施
・出荷試験・記録管理
・サプライヤー管理と外注プロセス管理
これらを実現するため、工場はFPC(Factory Production Control:工場生産管理)システムを策定しなければなりません。
エグゼキューションクラス(EXC)という考え方
EN 1090は製品ごとのリスクや複雑度に応じ4段階の「エグゼキューションクラス(EXC)」を規定しています。
EXC1:低リスク・製作難度が低い構造物(例:民家用カーポート等)
EXC2:一般的な建物や小規模公共設備
EXC3:商用建築、一部橋梁など(日本の多くの案件に相当)
EXC4:重大な公共インフラ・橋梁・特殊な安全要求を持つ構造物
要求される品質保証レベル・検査フロー・文書管理密度が段階的に上がります。
つまりサプライヤーは、自社製造物がどのクラスなのか明確化し、それに合致した運用体制を組み立てることが求められるのです。
EN 1090が“欧州向け製品で必須”な理由
(1)市場アクセスの前提条件だから
EN 1090非認証=そもそも商談・入札の土俵に上がれません。
欧州市場向けに製品供給を検討するなら、避けて通れない「ビジネスパスポート」です。
2014年以降、欧州企業は社内調達基準をEN 1090準拠に急速に切り替えています。
日本流で「いいもの作ってます」「安全には十分配慮しています」と主張しても、証明できる管理体制がないと取引対象外となります。
今や商談の席で“EN 1090取得済みですか?”は最初の質問です。
(2)国際的な信頼と連携が深まるから
サプライヤー立場からすれば、自社工場の品質レベルが国際標準(≠ローカルルール)で証明できることになります。
これにより欧州企業だけでなく、グローバル企業との多拠点連携や大型インフラ案件への参画も可能です。
また、EN 1090対応で内部の管理レベルが引き上げられる副次効果も大きいです。
昭和的な職人勘から「誰がやっても同じ品質」への脱皮を促します。
(3)トレーサビリティ要求の厳格化
欧州の大事故や製品不良による訴訟リスクを背景に、「誰が、いつ、どの材料で、どんな工程で製造したのか」を追える体制が不可欠です。
EN 1090に則ることで、納品後10年・20年が経っても“証拠書類”として管理できる仕組みになります。
これが欧州市場の”安心”という商材価値そのものなのです。
(4)他地域展開へのレバレッジ
アメリカ、ASEAN、オーストラリア等も欧州に追従し、建設製品の品質要求を引き上げています。
EN 1090対応の実績が「他地域進出時の信頼担保」「取引拡大」の武器となります。
日本の製造業が直面する課題と現場の声
(1)アナログ現場の“壁”と課題
昭和から根付く“現場主義”“属人化”“記録は紙”の文化が、EN 1090のデジタル文書化・体系的管理と真っ向から衝突します。
現場の溶接職人からは「何がそんなに細かく必要なのか」「現場でパソコン作業なんて…」という正直な抵抗も少なくありません。
これらを現場のモチベーション維持と両立しながらクリアするには、経営層の本気度が問われます。
(2)サプライヤー視点:コストと体制構築
EN 1090取得には、認証機関による監査費用の他、内部資料のデジタル化、作業者教育、システム導入など初期投資が必要です。
長年、国内取引だけでやってきた中小企業では「ここまでする必要が本当にあるか」と悩む声が根強いです。
ですが欧州進出(直接でなくともサプライチェーン上流が欧州向けなら間接的に必須)は今後避けて通れない現実です。
結果、調達バイヤーの目線でも、EN 1090未認証の取引先はリスク扱いされてしまいます。
(3)転換期にある日本の強み
もともと日本のものづくりには「現場の工夫」「カイゼン能力」「高い製品信頼性」が根付いています。
これを個々人の勘・経験だけに委ねず、体系化(=見える化、データ化、記録管理)へ進化させる契機がEN 1090です。
現場の抵抗感を和らげるには、「自社の強みを国際標準で証明する手段」だと認識し直すこと、「一次的なコスト増ではなく、海外案件や顧客の信頼獲得という投資」だと再定義することが重要です。
EN 1090対応のための実践ステップ
1. 現状のギャップ分析
自社体制を現状分析し、EN 1090の要求事項と突き合わせて現実的なギャップを正しく把握しましょう。
書類管理、工程管理、トレーサビリティ、技術資格者、外注先体制など、どこがボトルネックかを明確化します。
2. FPC(Factory Production Control)体制の立案
工場生産管理の仕組みを全体フロー・手順書・教育プランに落とし込みます。
可能な限り現場作業に負荷がかからないよう、現実的な運用体制を設計し、段階的にデジタル化を進めるのがコツです。
3. 技能者・技術者の教育と資格取得
溶接技術者・工程管理者への教育や社外資格(例:ISO 9606など)取得を計画的に進めます。
今後は人材の「国際資格」が現場価値の証明になります。
4. 第三者認証機関との連携
審査機関(例:TUV、Lloyd’s Register等)への相談、予備監査の活用、認証取得時のフォロー体制を早期に検討しましょう。
バイヤー目線では、認証実績が「選ばれるサプライヤー」の必須条件になる時代です。
まとめ:EN 1090は成長への“踏み台”
EN 1090は単なる「やらされ感の規格」ではありません。
安全基準をクリアすることは当然ですが、それ以上に“グローバルでも通用する現場力”を示す名刺であり、自己変革のチャンスです。
古い体質が残る製造業界こそ、EN 1090対応を足がかりに新しい時代の「強い現場」へと進化する余地があります。
今日、欧州市場をターゲットとする・しないに関わらず、EN 1090に準拠した品質保証やトレーサビリティは確実に業界全体の標準となっています。
後追いではなく、積極的に対応・取得に乗り出すことで、日本の製造業は世界市場で新たな価値を発信できるでしょう。
EN 1090を「参入障壁」ではなく「成長の踏み台」と捉え、現場のノウハウや力を最大限に活かす時です。
製造現場、バイヤー、サプライヤー、それぞれの立場で未来志向の取り組みにチャレンジしていきましょう。
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