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投稿日:2026年1月20日

ISO 31000によるリスク管理の基本|製造業での活用シーンを解説

はじめに|ISO 31000と製造業のリスク管理

製造業において、製品の品質や納期、コストだけでなく、サプライチェーンの断絶や法令違反など、さまざまなリスクが常に存在しています。

これらのリスクにどう対応し、安定的かつ持続可能な事業運営を実現するかは、企業にとって極めて重要な課題です。

その解決の指針となるのが「ISO 31000」です。

ISO 31000は、全業種に共通するリスクマネジメントの国際規格として位置付けられています。

本記事では、製造業の現場で培ったノウハウや実体験を織り交ぜながら、ISO 31000の基本的な考え方と、現場目線での実践的な活用例、そして昭和型アナログ文化からの脱却という視点も盛り込みながら、分かりやすく解説します。

ISO 31000とは何か

リスク管理の世界標準

ISO 31000は、「リスクマネジメント ― 原則及び指針」を定めた国際規格です。

2009年に初版が発行され、2018年に改訂されました。

この規格は、「リスクとは、目的に対する不確かさの影響」と定義し、リスクを一律に「悪いもの」と捉えるのではなく、「好機」も「脅威」も網羅する包括的な考え方を採っています。

従来の「事故を防ぐため」「損失を避けるため」といった守りだけでなく、攻めの経営、つまり新しいビジネスチャンスをつかむためにリスクを活用するという発想が特徴です。

他のISO規格との違い

ISO 9001(品質マネジメント)、ISO 14001(環境マネジメント)などは、組織認証制度が存在し第三者審査が前提となっています。

一方、ISO 31000は「ガイダンス規格」であり、組織の現状や目標に合わせて柔軟にリスクマネジメントの仕組みを構築することが推奨されています。

そのため、ISO 31000自体に「認証書」は存在しません。

リスク管理の基本プロセス

リスクの特定・分析・評価

ISO 31000では、リスク管理を以下のようなステップで進めます。

1. リスクの特定:目標達成の障害となる、または新たなビジネス機会につながる事象や要因を洗い出します。
2. リスクの分析:それぞれのリスクが発生した場合の影響度・発生確率を見積もります。いわゆる「リスクアセスメント」です。
3. リスクの評価:どのリスクを許容し、どのリスクに対応策が必要かを判断します。

この3段階を、現場の実情や経営方針に合わせて柔軟に展開できるのがISO 31000の魅力です。

リスク対応・モニタリングとレビュー

特定・分析・評価の後は、リスクへの対応策を講じます。

対応策は、リスクの低減、回避、転嫁(保険や契約など)、受容など多様です。

そして、対応策の有効性や環境変化に応じて、継続的なモニタリングと見直し(レビュー)を繰り返していきます。

これがリスク管理のPDCAサイクルです。

製造業現場でのリスク管理の重要シーン

サプライヤー選定と調達購買

現代の製造業は、自社単独ですべてを生み出す時代ではありません。

グローバル化や部材の多様化に伴い、複数のサプライヤーとの契約や調整が日常的です。

サプライヤー選定の際、単価や納期条件だけでなく、「納入遅延」「品質不良」「災害・紛争による供給停止」など多岐にわたるリスクが潜んでいます。

ここで活用されるのが、ISO 31000の「リスクベース」の発想です。

取引先の信用調査や多重調達ルートの確保、サプライヤーの生産拠点の地政学的リスク評価などを、定性的・定量的に捉え、総合的な最適バランスで購買判断を行うことが求められます。

特に震災や感染症など社会インフラ系リスクが拡大する昨今、この部分でのリスク管理の強化は避けて通れません。

生産計画と生産管理

製造ラインの稼働率向上や在庫削減、高効率生産が追求されるなかでつきまとう「生産計画リスク」。

ライン停止や工程ボトルネック、設備故障、人材不足、不良の多発…。

これらは生産現場の日常的な悩みであり、ときに大きな機会損失や顧客クレームの原因にもなります。

ISO 31000を活用し、「定期点検の強化」「自動化・IoTによる工程監視」「多能工化による要員リスク分散」等をリスクマネジメント観点で仕組み化することがポイントです。

昭和型の“山勘と職人の手配”だけに頼るのではなく、デジタルツールやデータ可視化技術を戦略的に組み合わせる発想が、競争力向上につながります。

品質管理(QC工程)とリコール対応

商品不良やリコールは、ブランド価値を揺るがし、経営に甚大なダメージを与えかねません。

ISO 31000の仕組みでは、「未然防止」と「被害拡大抑止」の両輪を重視します。

たとえば「FMEA(故障モード影響解析)」や「FTA(フォルトツリー解析)」といったリスク分析手法を活用し、不良発生箇所や頻度、影響範囲を見える化します。

万が一リコールが発生した際も、「誰が(Who)、いつ(When)、どこまで(Which)、どのように(How)」対応すれば最小リスクにできるのか、平時から体制と手順を明確化しておくことが求められます。

昭和アナログ文化とリスク管理の摩擦点

属人化からの脱却が急務

これまで日本の製造業は、「ベテランのカン」「現場力」「暗黙知」で乗り切る文化が強く根付いていました。

ですが、グローバル競争が激化し、不確実性が増大し続ける現代において、個人技頼みの属人化リスクは大きな弱点となります。

ISO 31000は、知見や判断基準、対応策を“組織の仕組み”として明文化・可視化することを重視しています。

プロセスやノウハウを業務マニュアルやデータベース化し、「誰がやっても一定の質を担保できる」「属人化しないリスク管理」を実現することが国際競争の土俵に立つ条件になっています。

ツール・デジタル活用の推進

紙書類・口頭伝承・手帳管理…昭和型の現場は、とかくデジタル変革を敬遠しがちです。

しかし、多拠点連携やAI活用などが急速に進展する現在、データ連携・自動アラート・リモートモニタリングなど、リスク管理そのものをリアルタイムで可視化・分析する仕組みこそが、新たな競争優位を生むカギになります。

「デジタル化はコスト」と見られがちですが、ISO 31000の発想を取り入れて、「未来の損失回避・生産性最大化への投資」と捉え直す姿勢が重要になります。

バイヤーとサプライヤー、それぞれのリスク意識

バイヤー視点でのリスク管理

大手メーカーのバイヤーは、単なる価格交渉だけでなく、サプライチェーン全体の健全性・継続性・透明性を最重視しています。

「供給能力にムラはないか」「BCP(事業継続計画)体制はどうか」「協力会社のリスク開示は十分か」など、ISO 31000の考え方を意識した情報収集を日々行っています。

つまり、現代の購買業務は、製品やサービスの機能スペックだけでなく、リスク管理を含めた“総合力の提案”に進化しているのです。

サプライヤーに求められる意識変革

一方で、サプライヤー側が自社の脆弱性や対策状況を積極的に開示し、「リスクをコントロールできている会社」であることを示すことが、選ばれるパートナーの条件になります。

部品や原材料の原産地情報、物流リスクや代替ルート、現地災害時の対策など、ISO 31000に基づいたリスク評価の仕組みをアピールすることが、取引拡大や長期契約獲得の後押しにつながります。

実践に役立つISO 31000導入のポイント

トップダウン×現場参画

ISO 31000は、経営トップ主導で全社的なリスク管理体制を敷くことが成功の秘訣です。

しかし、「現場知らずのお飾り制度」にならないよう、日々の業務改善やトラブル対応のなかで現場従業員とディスカッションを重ね、「なぜこの管理が必要なのか」「自分たちの業務にどんなメリットがあるのか」を腹落ちさせることが肝要です。

小さな一歩から始める

いきなり全社展開を目指しても、反発や混乱を招きます。

最初は一部ラインや特定業務での「リスク洗い出し&改善活動」から着手し、成功事例を蓄積・横展開していく、いわゆる“スモールスタート”が現場に定着するコツです。

ツール導入と教育のセット運用

リスク管理はツール任せでは本質は変わりません。

Excelや専用ITシステムはあくまで「見える化促進」の手段。

社内教育やワークショップ、事例交流を組み合わせ、全員参加で仕組みを磨いていくことが大切です。

まとめ|ISO 31000がもたらす製造業の未来

ISO 31000は、単なる「危機回避」だけでなく、変化の時代を勝ち抜くための「経営力の強化」そのものです。

属人化や昭和型文化と決別し、組織全体でリスクマネジメント力を磨くことが、未来の製造業をつくる礎となります。

バイヤー、サプライヤー、それぞれの立場で「ISO 31000的発想」を取り入れ、小さな一歩からでも実践を始めてみましょう。

時代に合った“攻めと守り”の経営で、持続可能かつ発展的な成長につなげていきましょう。

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