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投稿日:2026年1月20日

REACH規則が部品調達に与える影響

はじめに:REACH規則とは何か

REACH規則とは、Regulation on Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicalsの頭文字を取ったものであり、欧州連合(EU)が2007年に施行した化学物質管理のための法規制です。
製造、輸入、使用される化学物質を登録・評価・認可および制限することで、人の健康と環境の保護、そして化学業界の競争力強化を目的としています。

日本国内の多くの製造企業にとって「ヨーロッパの国の法律」と受け止められがちですが、製品に含まれる化学物質がEU域内へ輸出される時点で、その規則への適合が必須となります。
実際、アナログ主体の工場やサプライヤーにも強く影響を及ぼしています。

REACH規則が部品調達に与える影響

REACH規則は、欧州に製品を出荷する全ての企業、すなわち部品メーカー・組立メーカー・サプライヤーに大きな影響を与えます。
REACH順守のため、部品調達プロセスには以下のような現場レベルの課題が発生しています。

1. サプライチェーンの“見える化”と透明性の重要性

REACH規則遵守の根本は「製品にどんな化学物質が、どの程度、どこから供給されているか」を正確かつ迅速に把握することです。
これは単なる管理資料づくりを超え、サプライチェーン全体の情報開示(トレーサビリティ)が求められていることを意味します。

これまで「そこまで細かく把握しなくても出荷に支障は出なかった」という昭和的な調達慣行が多く残っていました。
特に多層下請け構造の中間業者の場合、どこまでが自社責任範囲なのか線引きが曖昧になりがちです。
しかし今や「どの部品(材質・処理)に、何が入っているか」の証明が必須です。
現場では従来のExcel台帳やFAX資料だけでは、間違い・遅延・情報の断絶が増加するリスクが非常に高いです。

2. サプライヤー選定基準が大きく変化

天然素材、化学合成原料を問わず、REACH対象物質を含むか否かがサプライヤー選定の重要要素になっています。
もちろん品質・価格・安定供給といった従来基準は依然重要ですが、REACH非対応は入札・見積もりの時点で「脱落」することも増えています。

また、REACH対応情報の提供スピードや的確さも重要です。
下請け・小規模サプライヤーの中には「対応コストが重荷」「きちんとした管理体制が無い」などの理由で、仕事を失うケースも散見されます。
バイヤー側としては「値段は安いがコンプライアンス面で不安…」という悩みが新しい課題となっているのです。

3. 法規順守だけでなくCSRの観点も重要に

REACH規則は、単なる法的要請ではなく、企業の社会的責任(CSR)やサステナビリティ施策の一環として捉えられる時代になっています。
環境経営を掲げるグローバル企業ではサプライヤー選定・取引停止の条件に「REACH遵守体制の有無」が明文化されています。

現場のバイヤーや調達担当者も、契約書への記載や監査対応など、新たな業務フローに頭を悩ませています。
また、部品単体でなく「アッセンブリー製品」や「最終製品全体」にも証明責任が波及しており、「下流から上流へ情報を巻き上げていく」必要性も増しています。

現場に根付く旧来のアナログ体質とその問題点

昭和型のものづくり現場は、現物・現場・現実「三現主義」を基本とし、職人の熟練や現場勘に依存する傾向が強く、書類・データの正確性への意識は二の次になってきました。
特に化学物質や材料証明の面では、書式のバラバラな“証明書類”が棚に眠ったまま、という工場も珍しくありません。

しかしREACH規則による「見える化」はグローバル標準です。
「うちではそこまで必要ないよ」といったマインドでは、欧州進出・海外取引の扉が閉ざされることもあります。
社内教育・文書の一元管理・IT化など現場の変革が急務となります。

調達現場への具体的なインパクト

実際の現場では、以下のような変化が求められています。

– 部品・原材料メーカーへの「REACH適合証明書」取得依頼の徹底
– サプライヤーに対する教育・遵守監査の実施
– 部材毎の情報管理やトラッキングのIT化(クラウド管理ツール等の導入)
– 新規サプライヤー登録時、REACH対応状況の明示
– 非対応サプライヤーのリスク洗い出しとバックアップ体制の構築

このような一連の業務は、調達・購買担当者の負荷を押し上げます。
しかしグローバル競争の中で「REACH対応できない会社」=「取り引きから排除される会社」となるリスクを十分に認識しなければなりません。

バイヤーの立場として意識すべきこと

バイヤーはコスト・品質・納期のみならず、コンプライアンスとサステナビリティも含めた“総合力”でサプライヤー管理を行うべきです。
現場で陥りやすい失敗例や、経験から培った対策をいくつかご紹介します。

「できません」という回答は“即NG”

情報収集の現場では、「REACH規則?詳しく分かりません」「今は対応できません」といった後ろ向きな回答が一定数あります。
バイヤーの本音としては「今は分からなくても、“どうやったら分かるか”を一緒に考えてくれ!」という建設的な姿勢を求めています。

REACHへの知識が浅くても「御社はどこまで化学物質のトラッキングができていますか?」と具体的に聞き、その反応や誠意を見ることも重要です。

コスト増の“見える化”と説明責任

サプライヤーによっては「証明書発行や情報管理のコスト増加」を価格転嫁してくるケースも出てきます。
このとき、単に「値上がり=損」と捉えるだけでなく、将来のリスク回避やブランド価値向上を考え、「REACH対応は必須の先行投資」と社内で説明できるかがポイントです。

IT化と現場のベテランの知恵のハイブリッドが必須

現場では、「ITに明るい若手」VS「紙と現物主義のベテラン」という“対立構図”が生まれやすいですが、REACH対応は両者の知識が融合してこそうまく進みます。
紙資料が必要な局面と、電子データで集中管理した方がよい局面を見極め、両者の強みを活かしたハイブリッド管理がREACH成功のカギです。

サプライヤー側が意識すべきポイント

サプライヤーの立場では、以下の取り組みが求められます。

– 原材料メーカーや化学メーカーからの情報収集と社内展開の徹底
– データの一元管理体制(誰が、どの情報を、どの段階で、どのように確認するかの明確化)
– バイヤーからの質問や突発要請に“即レス”できる体制づくり
– 小規模企業でも、業界団体や専門家の知見を活用した対応力アップ
– 教育や社内研修で、営業・技術・製造全員がREACHの基本を理解

「うちは小さい会社だから無理」と諦めるのではなく、むしろフットワークの軽さや現場力を活かして、きめ細やかな対応を“売り”にできれば競争力がグッと高まります。

REACH対応は“持続的なものづくり”のスタートライン

これからの時代、REACH規則は単なる欧州向け輸出対策にとどまらず、日本国内市場においても重要な指標となっていくでしょう。
SDGsやカーボンニュートラルの流れの中で、顧客も「環境や社会責任を果たしている会社」を選ぶ傾向が強まっています。

現場ではまだまだ「面倒くさい手続き」と受け止められがちですが、REACH規則対応をきっかけに、サプライチェーン全体の透明化や社内業務のスマート化が進めば、結果的に生産性・品質・ブランド力の向上につながります。

その第一歩は、「知らない」から「正しく知り、分からないことは積極的に調べて対応する」というマインド改革です。
ベテランも若手も、アナログ職人もIT担当者も、一丸となって“令和型ものづくり”への進化を目指しましょう。

まとめ

REACH規則が部品調達に与えるインパクトは極めて大きく、今やグローバル市場で生き残るための“標準ルール”となりつつあります。
サプライチェーン全体の透明化・トレーサビリティ・情報の一元管理は、昭和の工場にも大きな変革をもたらしています。

今後、製造業の発展のためには、法規順守だけでなく、バイヤー・サプライヤー双方の強い連携と、現場の意識改革、そして新たなITソリューションの導入が不可欠です。

REACH規則対応を単なる負担で終わらせず、企業価値を高めるチャンスに変えていきましょう。
製造業に携わるすべての方にとって、今こそ“ラテラルシンキング”で枠を超えた新しい現場づくりに挑戦する時です。

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