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日用品量産品のコストダウンで内製化が選択肢にならない理由

目次
はじめに:日用品量産品のコスト構造を見直す意義
製造業におけるコストダウンは、永遠のテーマです。
特に日用品量産品など、年間万単位の数量を捌く商材においては、1個当たりわずかなコストダウンでも、全体では巨額のコスト削減効果につながります。
実際、工場長として長年現場に身を置いてきた肌感覚では「自分たちで作ったほうが儲かるのでは?」という声も何度も耳にしてきました。
しかし、現実問題として日用品量産品において、社内での内製化(インソーシング)を選択することは、ほとんどの場合「非現実的」なのです。
この記事では、なぜ日用品量産品のコストダウン戦略として内製化が選択肢になりにくいのか、具体的な事例や現場目線の実態、そして今後の業界動向も交えながら、深く掘り下げていきます。
調達購買やバイヤー志望の方だけでなく、サプライヤーとしてバイヤーの「ウラの本音」にも迫ります。
量産における内製化 vs 外製化(アウトソーシング)の本質
数量がカギ:スケールメリットを最大化する力学
大量生産品(日用品、消耗雑貨等)は、市場での単価競争が非常に激しいのが特徴です。
この分野でコストダウンを実現する最大の武器は、「スケールメリット(規模の経済)」です。
サプライヤーは多品種大量生産に特化しており、専用設備や自動化、ノウハウ蓄積によって1個あたりのコストを極限まで切り詰めています。
自社工場で内製化しようとすると、そのスケールメリットには太刀打ちできません。
大手外注先は、複数メーカー・ブランド合同で一つのラインを回したり、材料も一括大量購買で原価を抑えたり、設備投資をフル活用できる土壌を既に完成させているのです。
一方、自社での専用ライン立ち上げは、多額の先行投資・省人化のノウハウ不足・歩留まり改善までの苦労など「見えないコスト」が膨大です。
初期投資と固定費リスクが内製化を躊躇させる
日用品量産品を自社生産するとなれば、製造ラインや金型、自動化設備の導入が必須となります。
仮にライン1本の導入に数千万円の投資が必要だとしましょう。
外部サプライヤーはこうした投資を複数の顧客や商材で分散回収できますが、自社だけだとリスクを全て背負うことになります。
また、設備導入後も点検・修理・生産技術人材の確保・現場オペレーションの最適化など、固定費とノウハウの蓄積が必要不可欠です。
こうしたコストは会計上「見えにくい」ものの、会社全体の収益性には強く財務的な負担になります。
管理職経験者からは「会社を守る経営判断」としてアウトソーシングを定着させてきた歴史も理解できます。
品質安定化と設備負荷のリスク
自社製造ラインを新たに立ち上げたとき、最も頭を悩ますのが「品質の立ち上がり」にかかる負荷です。
日用品量産品は不良品がじわじわ全ロットに波及する危険性が高い商品です。
サプライヤーは長年同じ商材を動かし続けており、現場の技術者やオペレーターの「勘どころ」や管理手法も蓄積されています。
このような小さな工夫やノウハウを一朝一夕で自社に再現することは困難です。
もし、万が一大量不良が発生すれば「自社製品が店頭から消える」「ブランド毀損」「回収費用」「信頼回復までの時間」と、経営にとって痛恨のリスクを抱え込むことになります。
製造業界特有のアナログ構造も障害に
昭和時代から製造業に深く根付いた慣習が、今もなお色濃く残っています。
社内の新ライン立ち上げには稟議や部門間交渉、工程設計や技術検証など、多くの「根回し」と「合意形成」が求められます。
また、品質保証や生産管理部門の工数追加、社内ルール・ISO監査・現場の人手調整…と、内製化に伴って全社の業務負荷が急増するのも事実です。
これに耐えうる柔軟な組織でなければ、内製化プロジェクトは構想段階で潰えてしまいがちです。
バイヤー視点で内製化を再考する:失敗と成功の現場事例
内製化失敗例:三重苦に陥るパターン
現場で経験した実際の「失敗例」を取り上げてみます。
あるメーカーがアウトソースしていたプラスチック日用品(年間200万個)のコストダウンと短納期化を狙い、内製化プロジェクトを立ち上げました。
最新設備の導入こそ実現したものの…
– 設備の段取りや金型交換のノウハウが不足
– 材料の選定ミスで歩留まり悪化
– オペレーター育成が追いつかず設備稼働43%に
– 不良率が外注時の約8倍、一部得意先から返品リスクも
結果、「外部に頼んだ方が安定し安価だった」という結論に陥りました。
設備償却+人件費+管理工数まで含めると、見かけのコストダウンが「実質コストアップ」として返ってくる典型例です。
成功例は“部分内製化”にあり
ただ、すべてがネガティブな結果に終わるとは限りません。
サプライヤーとの協力体制をあくまで維持し、最終製品の「コア技術」や「カスタマイズ品」だけを内製で持ち、汎用品はあえて外注化という“ハイブリッド”な生産体制を取ったメーカーも存在します。
このパターンでは自社の技術力強化・新商品開発スピードが加速し、競争優位性を維持したまま、主要品は確実にスケールメリットを取り込むことに成功しています。
社内リソースの「選択と集中」が内製化成功のカギを握ります。
サプライヤー視点での“バイヤー心理”の読み解き方
サプライヤーに立つと、つい「いつか自社で作られるのでは」とリスクを感じがちです。
ですが、実際の購買担当者や経営陣が考えているのは、「自社で作るよりも、適切な外部に頼む方が圧倒的に合理的かつ低リスク」であるという点です。
サプライヤーとしては「安定供給」「継続的なコストダウン」「品質維持」というバイヤーの要求ポイントを確実に守ることこそが、長期パートナーシップ強化への最大の近道です。
また、模倣されにくい「工程・ノウハウ」を外部非開示の部分で差別化できていれば、サプライヤーポジションを容易に奪われることはありません。
昭和アナログ業界でも根付く“分業の合理性”
「外注依存は日本の製造業の弱さ」と批判されることもありますが、実態は逆です。
むしろ日本の産業競争力を支えてきたのは、膨大な下請けネットワークと、それを束ねる分業体制です。
細分化された得意分野の企業が、自社の「強み」を研ぎ澄まし相互補完しあうことで、総体として巨大なスケールメリットが生まれています。
昭和の時代から根付く「餅は餅屋」の発想は、むしろ現代こそ再評価されつつあります。
工場長経験としても「なんでも自社でやるほど愚かな経営はない」のが実情です。
AI、IoT時代に再検証される“内製化神話”の限界
AIやIoT、自動化技術の進展によって「人手不要の工場」も夢ではなくなりつつあります。
ですが、これらは初期投資・設備保守・専門技術者の確保といった“見えない壁”が依然として立ちはだかります。
結局のところ
– 設備稼働率=ボリューム勝負
– ノウハウ蓄積=時間と人の継続投資
– サプライヤーのノウハウ転用リスク
この3つの課題解決なくして内製化の成功はありえません。
最新技術を活用するほど、外注ネットワークの強化とパートナーとの「協働」が重要になるのが日本の製造業の本流なのです。
まとめ:コストダウン戦略の“本質”を見極める
日用品量産品のコストダウンにおいて、なぜ内製化が第1選択肢になりにくいのか。
その答えは、スケールメリット、初期投資・固定費リスク、品質管理の難しさ、業界アナログ構造など、数々の「見えない壁」に阻まれているためです。
サプライヤー、バイヤーの立場に関係なく、「得意なこと・強み」に専念し、相互補完しあう“協業力”こそが、激化する日用品業界のコスト競争に打ち克つ最善手です。
これからの製造業は“内外製分担・協業”モデルの再評価と、自社技術の集中投資で「価値」を生み続けることが、未来の持続的成長の鍵になります。
製造業界でキャリアを積みたい、あるいはサプライヤーとして生き残りをかけたい方は、ぜひ“分業の本質”を知り、時代に合った行動指針を立てていただきたいと思います。
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