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投稿日:2026年1月21日

メンタルケアを評価指標に入れられないジレンマ

はじめに―「心の健康」が後回しにされる現場

製造業の現場は、効率、品質、安全の三本柱が重視される世界です。
しかし近年、現場の生産性や品質改善の根底には、従業員の「こころの健康」が重要である—と気づき始めた企業も増えています。

働き方改革や労働人口の減少、価値観の多様化が進む中、製造業にも「メンタルケア」の必要性が迫っています。
しかし現実には、メンタルケアを定量的な評価指標として施策に組み込むことは極めて難しく、現場責任者や管理職はジレンマを感じることが多いのです。

本記事では、20年以上現場に携わってきた筆者の視点から、なぜメンタルケアが評価されにくいのか、どうすればアナログ体質な製造業で心の健康を守りつつ現場力を高められるのかを掘り下げていきます。

なぜ製造業でメンタルケアが後回しになるのか

昭和気質からの脱却の難しさ

製造業の現場は、いまだに「昭和的労働観」が強く残る業界です。
「仕事は我慢と根性」「つらいのは皆同じ」といった価値観が色濃く、メンタルケアの必要性を感じていても、「気にするな」「甘えだ」と一蹴されることも珍しくありません。

これが、現場の空気や伝統として脈々と受け継がれ、上司自身もストレスや不安を表に出さず、「管理や改善は精神論でカバー」という風潮が根強い原因です。

メンタルケアは数値化しづらい

生産数量や不良率、納期達成率など、多くの現場指標は明確に数値化できます。
しかし「従業員が健康に働けているか」「メンタル疲弊がどの程度深刻か」は、どうしても主観的になりがちです。

例えば、
– ストレスチェックのスコア
– 産業カウンセラーの相談件数
– 休職・退職者数

などで間接的に把握できるものの、直接的・リアルタイムな指標とはなりづらく、本質的な変化点やボトルネックまで掴み切れないのが現状です。

生産至上主義とのジレンマ

「本日出荷分を間に合わせろ」「不良品はゼロに抑えろ」。
これが現場の日常。
一方、「あのベテラン作業者の元気がない」「最近、高圧的な指示が増えた」など、微妙なメンタル不調は、忙しさの中でスルーされがちです。

上司が、部下のメンタル不調にいち早く気づくことは理想ですが、日々の数字目標やトラブル対応に追われる中、つい見過ごしてしまう。
「気づいてやりたくても余裕がない…」。
これも、管理職が抱えるリアルなジレンマの一つでしょう。

なぜメンタルケアがこれからのカギとなるのか

製造業の現場で進む高齢化と多様化

自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目される一方で、熟練技能者の高齢化が進み、慢性的な人手不足に陥る現場も多くなっています。
さらに、新卒世代や外国人労働者、中途採用など、多様な経歴や文化を持つ人が増加しています。

このような環境下で、「メンタルケア」による人材流出の防止や、多様な価値観の調和が今後ますます重要になります。

あらゆる改善活動の基礎は「人」にあり

製造現場での改善活動(カイゼン)は、決してハードウェアやITだけでは成し得ません。
現場で働く一人ひとりが前向きに、「安全で安心して働ける場所」と感じることが、生産性や品質向上の原動力です。

些細な不安や不満が積もると、モチベーションが低下し、中長期的には生産停止や離職のリスクまで膨らみます。
こういったリスクは、表面上の数字には現れにくいものの、工場の“地力”に大きく影響します。

「メンタルケア指標」導入のシナリオと課題

現場主導のケア活動のススメ

「会社からやらされる」取り組みではなく、本当に現場の安全・安心・やりがいにつながる、自発的なケア活動が重要です。
例えば
– ライン停止後の短時間ミーティングで体調や気分を聞く
– 管理職が一人ひとりに「最近どう?」と声をかける
– 日報・連絡ノートに数字だけでなく一言コメンタリー欄を設ける

こうした“小さな気づかい”の積み重ねで、メンタルヘルスの予兆を早期に察知できる現場をつくることができます。

定量化の工夫と運用のバランス

メンタルケアをKPI(重要目標達成指標)にどう盛り込むかは大きなテーマです。
実際には、シンプルで継続可能な方法から試すことを推奨します。

– 月次で従業員アンケート(5段階評価で気分・負担感など)を取り、変化点を管理職がウォッチする
– ストレスチェック結果を部門ごとにフィードバックし、改善事例を共有する
– メンタルダウン(休職・事故・大きなトラブル)の原因分析を実施し、現場リーダーへフィードバックする

大事なのは「指標ありき」ではなく、その数字が現場で何を語っているか、真摯に捉えることです。

評価制度への反映と現場不信のリスク

メンタル指標を評価制度や目標と紐づけると、逆に「形だけの対策」「不正な数値管理」「サボっていると思われたくない」という“現場不信”を生みかねません。

ですから、評価制度への導入は慎重な議論が必要です。
まずは、全社で「メンタルケアの重要性」を共有し、「困っている人を責めない・早めにサポートする」という風土づくりが先決です。

バイヤー視点でのメンタルケアの重要性

調達・購買は人間関係と交渉力がカギ

購買担当・バイヤーは、社内外の多くの関係者と密に連携する役割を担っています。
サプライヤーとの交渉や納期調整、品質トラブル対応など、プレッシャーも大きく、ストレス要因も多岐にわたります。

ですから、バイヤーとしても「心が折れない」「感情的な波に呑み込まれない」セルフメンタルケアが必要です。
また、自分だけでなく、サプライヤーや現場作業者など、幅広い立場のストレス要因や心理状況を意識することで、より円滑な関係構築につながります。

サプライヤーも「人」—信頼関係の先に成果がある

サプライヤーの立場だと、バイヤーの「数字至上主義」や「厳しい交渉」にストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、その裏には「自分も社内からプレッシャーを受けている」「組織目標を抱えて苦しんでいる」バイヤーの存在があります。

お互いに「人」としての悩みやストレスを想像し、感謝や労いの言葉をかけ合うことが、長期的なパートナーシップや成果につながるはずです。

今後を見据えた取り組み—「心の健康」が現場を変える

DXの時代こそ、アナログな「人ケア」を

AI・IoT化による業務効率化が加速する一方で、「最後はやっぱり人が支える」現場力こそ、今後の製造業の差別化要素となります。
機械やITがカバーしきれない“人と人のつながり”を守るのは、現場リーダーやベテランの「ちょっとした気配り」です。

昭和的な“根性論”ではなく、「個々の顔・気持ち・生活」まで踏み込むアナログなコミュニケーションにこそ、新たな現場価値が宿ります。

経営層への提言

経営トップが「メンタルケアは業績に直結するテーマ」と捉えることで、会社全体を巻き込んだ風土改革が進みやすくなります。
数字だけでなく、“チームの空気”や“働く人の表情”まで評価対象に据えることで、持続的な現場改善のスパイラルを生み出しましょう。

まとめー現場の「人」を中心に据えた新時代へ

メンタルケアというと、「センシティブで面倒なこと」「現場にはなじまない」と思われがちですが、今やそれは時代遅れです。
心の健康があってこそ、現場はフルに能力を発揮でき、改善力も高まります。

デジタルとアナログの両面から、一人ひとりを正しく理解し、支え合い、現場の空気を温める。
その積み重ねこそが、製造業の地力と競争力の源泉になるのです。

「メンタルケアを評価指標にできないジレンマ」を乗り越え、現場発の新しい地平線を、ともに切り拓いていきましょう。

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