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地震対策の設備投資判断が遅れる製造業の実態

目次
はじめに ― 製造業における地震対策の課題
日本は世界有数の地震大国です。
過去にも多くの大地震による工場の被害や生産停止が、国内外のサプライチェーンに大きな影響を与えてきました。
しかし、実際には多くの製造業現場で、必要な地震対策の設備投資が後回しにされていたり、その判断が思うように進まない状況が続いています。
なぜ、工場現場では地震対策の設備投資判断が遅れるのでしょうか。
本記事では、20年以上製造現場に携わった視点から、その実態と背景、さらに今後のあるべき姿について深掘りしていきます。
地震対策設備投資が後回しになる現場のリアル
投資判断の難しさ―予算化と経営陣の意識
多くの現場で「地震対策は必要」と口では語られますが、予算化、つまり具体的な投資に結びつけるのは容易ではありません。
理由の一つは、地震対策設備の投資回収が“見えにくい”からです。
地震がいつ発生するか予測できないため、災害が「起きた場合の損失」を具体的な数字で評価することが難しいのです。
このため経営トップや財務担当、拠点の現場責任者の間で優先順位が低くなり、結局先送りされがちです。
また、日本の中堅・中小製造業の現場ではまだまだ“昭和的なマインドセット”が抜けきれていません。
「これまで大きな地震被害がなかったから」「コスト増は避けたい」という経験則や保守的な思考が根強く、多くの場合でイノベーションやリスクマネジメント投資が尻込みされる状況にあります。
“事後対応”優先の文化と、現場担当者のジレンマ
実際の現場でよく見られるのは「何かあってから予算を出す」という後手の投資判断です。
工場長や生産技術、設備担当のバイヤーが「この設備補強は必要です」と訴えても、上層部にはなかなか通りません。
決まった投資枠は「工程能力向上」「省人化」「直近トラブル対応」に優先的に使われ、地震や火災といった“ハザード系”の設備強化には回りにくいのが実態です。
この背景には、現場担当者自身の評価や昇進にも関わる事情もあります。
「目に見える成果=QCD(品質・コスト・納期)の改善」が重視される風土の中では、「事前対策」や「万が一のための投資」にリソースを割きづらいのです。
バイヤー・サプライヤー双方に知ってほしい現場の本音
現場バイヤーの悩みと交渉の実情
調達バイヤーとして設備投資案件を担当していた経験から言えば、地震対策設備に関しては、社内で「本当に必要なのか?」という根本的な議論が毎回発生します。
既設の設備の耐震補強や、免震装置を新設する場合など、数百万円~数千万円単位の追加費用が発生するため、経営会議や購買委員会での承認がハードルとなります。
こうした中、「実際には何年も地震がなく、メンテナンス予算の圧縮も求められている」現状では、バイヤーとしても強く要求しきれないもどかしさがつきまといます。
さらに、地震対策ソリューションを提案するサプライヤー側も「この会社は本気度が低いな」と感じる場合が多く、“価格競争”だけで会話が終わることも珍しくありません。
サプライヤーができる提案・工夫の余地
サプライヤー側も、「単なる耐震化」の提案ではなく、現場の運用改善や生産への付加価値も織り込んだ提案が求められています。
たとえば…
・既設設備の耐震補強+保全性向上を組み合わせる
・防災対策と同時にレイアウト最適化で省スペース化
・地震対策設備が平時にはQAデータの取得に寄与する等、ダブルメリットの提示
こうした“工場総合力アップ”をパッケージ化してバイヤーにアプローチできれば、決裁者への説明材料も増え、市場での優位性も高めることができます。
地震対策設備投資の最新動向と進むべき方向性
リスクマネジメント経営の浸透と、サプライチェーン強靭化の流れ
近年、大手企業やグローバルサプライチェーンとの取引が多い企業ほど、“BCP(事業継続計画)対応”として、地震対策設備投資に対する姿勢が大きく変わり始めています。
自動車・エレクトロニクス業界など、1つの部品工場の被災が数千社に影響を与えるためです。
具体的には、
・工場や拠点全体の構造計算見直し、標準耐震レベルアップ
・ライン主要設備のオートストッパー、エネルギー遮断の自動化
・製品・部品在庫の分散配置、バックアップ生産拠点の整備
といった投資が、本社主導で進みやすくなっています。
業界アナログ文化と“ラテラルシンキング”の必要性
ただし、全国の多くの中小・中堅製造業では未だに「どこか他人事」な空気感も否めません。
下請けや単一顧客頼みの構造、古くからの経営陣の意識、「今回は大丈夫」という過信が根強く残っているからです。
ここで求められるのが、ラテラルシンキング(水平思考)的な発想転換です。
・「工場の地震対策=経営存続の根幹である」というマインドセットへの進化
・“投資対効果”を「万が一の損失軽減」にとらわれず、「従業員の安心・トラブル減少・QCD向上」など新たな利点として捉え直す
・IT、IoT、自動化ソリューションと防災対策を融合した新しい工場標準の確立
現場担当者や調達バイヤーこそが、こうした発想転換を現場や経営層に働きかけていくことが、10年後の存続、ブランド構築のカギを握ると言えるでしょう。
地震対策投資判断を変える現場主導のアクションとは
経営層への定量的リスク訴求と“危機管理ストーリー”の構築
経営判断を動かすには、個々の現場レベルでの課題把握と「もし地震が起きたら?」の具体的損失シナリオをわかりやすく示すことが有効です。
例えば…
・24時間操業の主要生産ラインが3日止まった場合の売上未達額
・復旧に要する外部費用や部品調達の困難さ
・主要顧客との取引停止・信用失墜まで含めた損失試算
こうした最悪ケースの“危機管理ストーリー”を定量データ+ビジュアルで示すことで、経営陣の危機感をよりリアルに喚起できます。
現場発の地震対策プロジェクトの立案・推進
単なる「お願い」ではなく、現場主導で小規模なパイロットプロジェクト(例:1ライン分の耐震補強+IoT緊急停止装置導入)を立ち上げ、効果測定や社内報告を積み重ねていくことも極めて有効です。
現場担当者が実際の運用・保全ノウハウを活かし、「現場だからこそわかる、現実的な改善策・投資ポリシー」を定期的に経営層へ提言していく環境づくりが求められます。
まとめ ― 地震対策投資は「生産力強化」の第一歩
地震対策の設備投資判断が現場で遅れる実態には、コスト意識、業界文化、短期的成果偏重、経営判断者の心理など複雑な要素が絡んでいます。
ですが、製造業がこれから持続的な成長・生産現場の強靭化を果たす上で、「災害はいつか必ず起きる」という前提で根本的な工場改革に取り組むことは不可避です。
調達バイヤー、装置メーカー、現場の管理職…全ての製造業従事者が「今ここで、どのようなアクションを起こせるのか?」を自ら問い直し、小さな一歩からでも前進することが、未来の業界標準をつくる力になるはずです。
ぜひ、この記事をきっかけに現場目線で自社の地震対策・リスク投資を見直し、より強い現場づくりをともに推進していただければ幸いです。
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