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投稿日:2026年1月21日

施設管理で災害対策を標準化できない理由

はじめに:施設管理と災害対策の現状

製造業の現場では、日々の生産活動や品質向上に注力する一方で、施設管理や災害対策への関心や投資が後回しになりがちです。
日本は地震・台風・豪雨・火災といったさまざまな災害リスクを抱えていますが、「災害対策を標準化する」という命題に本気で取り組めている企業は多くありません。

なぜ、多くの現場で「災害対策の標準化」が進まないのでしょうか。
ここでは、私が20年以上にわたって製造現場やマネジメントと向き合ってきた経験をもとに、理由を掘り下げ、現実的な問題とその背景、今後の方向性を考察します。

1.災害対策の「標準化」とは何か?

そもそも標準化の定義

標準化とは、さまざまな災害リスクに対応するために、「誰でも同じ手順で行動できるマニュアル・ルールを作り、実行する状態」を指します。
例えば、地震発生時にどの扉を開けるべきか、避難経路はどこか、誰がどのような役割を担うのかまで、あらゆる想定リスクに対する具体的な対応を仕組みに落とし込み、日常の運用に徹底することです。

なぜ標準化が理想とされるのか

人による判断の差や、その場しのぎの対応を減らし、「誰でも同じ水準の対応ができる」ことには、生産現場と同じく、施設管理にも大きな意義があります。
ヒューマンエラー・責任の所在不明・情報伝達のバラツキなど、アナログ現場の弱点を補うためには、標準化が不可欠と言われています。

2.「標準化できない」主な理由

複雑性と多様性に埋もれる現場事情

製造業の工場や物流拠点などの施設は、設備、敷地、用途、作業者のスキル、作業工程、出入りする人・車両など、条件が実に多様です。
最新鋭のスマート工場もあれば、昭和時代から改修を続け、図面さえ現存しない年季の入った製造拠点もあります。

こうした現場の複雑性・多様性が、「すべてに適用できる標準モデル」の策定と運用を根本から難しくしています。

コストと手間に対する心理的な抵抗感

現場責任者や経営層の多くは、「生産効率」「日々の売上」「品質クレーム低減」など“見える数字”の改善にプレッシャーを受けます。
一方、災害対策の標準化は「お金と時間をかけても、効果を数字で証明しづらい」「目先の利益を生まない」ため、投資の納得感が得にくいのが現実です。

特にアナログ現場や昭和体質が残る会社文化では、「ウチは今まで大きな事故がない」「その都度現場判断でやってきたから大丈夫」という油断が根強く、制度設計もマンネリ化しやすい特徴があります。

属人化と現場依存

現場によっては、“顔が効くベテラン”や“管理職の阿吽の呼吸”によって、何とか日々が廻っています。
しかし、こうした現場力の成り立ち自体が標準化の足かせとなることもしばしばです。

「標準化しなくても、○○さんがいれば大丈夫」「対応が必要なときは、その場の判断力で」という属人的な現場は、ルールや仕組みを横展開しづらくなります。

“標準化の正解”が見えづらい災害対策

大型地震や異常気象など、災害は「想定外」がつきものです。
ISOやBCP(事業継続計画)の基本があっても、現場ごとに最適な正解を見出すのは容易ではありません。

しかも、人も設備も常に変化するため、「これで安心」と言い切れる標準化基準を設けづらいのが最大の障壁です。

3.昭和由来のアナログ体質と標準化のジレンマ

“経験則重視”文化の根強い影響

多くの製造業の現場では、ベテラン層の「勘」や「経験則」に頼る傾向が現在も根強く残っています。
先輩から後輩に口頭や現場指導で伝承されるノウハウが重視され、「正式なルールブックより、現場の空気を読んだ対応力こそプロ」という価値観が見られます。

こうした土壌の下では、文書化・体系化へのモチベーションが生まれにくく、標準化の重要性自体が“絵に描いた餅”になる恐れがあります。

“何となくあるルール”の危うさ

災害時の対応や緊急マニュアルが存在する現場でも、「何となく保管してある」「年に1回形式的に訓練するだけ」といったケースが多いです。
本来求められるのは、「もの・情報・人が実践的につながる」動的な標準化ですが、昭和流の“お飾りマニュアル”は、その機能までは担保できていません。

4.現場・管理・経営層:バイヤーとサプライヤーで見る災害対策の考え方

バイヤー(ユーザー側)の課題意識

大手企業やグループ会社の多くは、「リスク管理」の一環として、各拠点の災害対策を重視します。
特に、災害で数日でもラインが止まれば、サプライチェーンが大きく寸断されます。

したがって、バイヤー(調達担当・施設管理責任者)は以下のようなポイントを押さえたいと考えます。

・拠点ごとの現実的なリスク分析
・内製/アウトソースを含めたベストプラクティス策定
・サプライヤー側との情報共有・連携強化
・BCPやISOマネジメントとの一体運用

サプライヤー(業務委託・外部サービス)の課題意識

一方、サプライヤー(施設管理や保全業者等)は、「顧客ごとの事情・現場ルール」の多様さに悩まされがちです。
顧客ごとに災害マニュアルのカスタマイズ要望が強く、杓子定規な運用だけでは「現場で本当に役に立つか?」の評価を得られません。

「自社標準のサービスメニューに落とし込めない」「現場に寄り添い過ぎて不採算化する」ジレンマも、日常的な課題となります。

5.今後の進むべき道~新たな標準化とデジタル活用のヒント

リスクベース思考×実効性の両立へ

本気で“災害対策の標準化”を進めるには、「全社横並びの画一主義」から一歩抜け出し、拠点ごとに現実的な“リスクベース管理”の思想が求められます。

また、それを「実効性のある行動・情報伝達・訓練」に落とし込み、属人性や惰性を徹底的に排除する仕組みづくりが鍵です。

デジタル技術の活用と現場文化の変革

近年は、IoTセンサーやAI予測、防災アプリやクラウドの普及により、「標準化×デジタル」の親和性が大幅に高まっています。
例えば、すべての設備・場所・人をデータ化し、災害時の状況把握や指示伝達を自動化する仕組みを取り入れることで、「誰でも・漏れなく・迅速に」行動できる時代が到来しつつあります。

ただし、技術導入と同時に、「現場の納得感」「使いこなす文化醸成」も平行して進めなければ、真の標準化には到達できません。

まとめ:現場力と仕組み力の融合で新しい標準化へ

施設管理の災害対策が標準化できない理由は、現場の多様性、経営心理、属人性、災害対策自体の不確実性、そして昭和由来のアナログ文化と複雑に絡み合っています。

しかし、製造現場で培った「現場目線」と「ラテラルシンキング(水平思考)」で突破口を開き、「現場力」と「仕組み力」をうまく融合することが、新たな標準化の地平線となるはずです。

「他社がやっていないから、ウチもこのままで良い」では、時代の変化に置き去りにされてしまいます。
すべての現場が“自分ごと化”して、デジタル・アナログ両面から「自社に最適な標準化」を追求すること。
それが、命と事業を守り、ひいては製造業全体の底上げに直結するのです。

最後に一歩踏み出す勇気を持ち、「災害対策の標準化」に本気で向き合う現場が一つでも増えることを、私自身の願いとしたいと思います。

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