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投稿日:2026年1月21日

IEC 62304で求められるソフトウェアライフサイクル管理

IEC 62304とは何か? – 製造業で注目される背景

IEC 62304は医療機器用ソフトウェアのライフサイクルプロセスに関する国際規格です。近年、医療機器やその構成要素が高度にソフトウェア化されるにともない、国内外でこの規格への対応が急速に求められるようになっています。

特に、医療機器メーカーのサプライヤーや、他産業から医療機器分野に参入を図る製造業の現場では、手探りのなか規格対応を進めていることも多いのが実情です。昭和型の紙ベース管理を続けてきた現場にとっては、まさにアナログからデジタル、グローバル規格対応への大転換期に直面しているといえるでしょう。

バイヤーやものづくり現場の方々にも、このライフサイクル思考は必須のものとなっています。本記事では、現場目線で「なぜIEC 62304が必要なのか」「どこから取り組むべきか」「バイヤーやサプライヤーの立場で押さえておきたいポイント」について深く考察します。

IEC 62304で求められるソフトウェアライフサイクル管理の全体像

ソフトウェアライフサイクルとは?

一般的に、ソフトウェアライフサイクルは計画・開発・検証・リリース・運用保守・廃棄まで、ソフトウェアの「一生」を一貫して網羅するプロセスです。IEC 62304は、この流れを医療機器向けに「管理規定」として体系化し、規格のなかで具体的な要求事項を示しています。

なぜ、ここまで厳格な管理が必要か

医療機器においてソフトウェアの不具合は患者の生命や健康に直結します。従来のものづくりの現場では、ハードやアナログな品質管理に重点が置かれてきました。しかしソフトウェアは後から見えにくく、工場のラインテストや外観検査では保証しきれません。そのためライフサイクルの“全局面”でリスクを洗い出し、管理・証跡を残す手法が不可欠となっているのです。

IEC 62304の主な要求事項とポイント

1. ソフトウェア開発プロセスの明確化

計画を作成 → 要件定義 → 設計 → 実装 → 検証 → リリースの各工程について、個別に手順・担当・エビデンスを整備する必要があります。

とくに、これまでは「設計開発=ベテラン技術者のスキル」とされていた現場でも、一貫したプロセス管理・記録化が強調されています。バイヤーの視点では「どのようにライフサイクルを管理しているか?」が選定基準になることが多いです。

2. リスクマネジメントの徹底

リスク分析、リスクコントロール、追跡性の確保が必須となります。これはISO 14971(医療機器リスクマネジメント)への適合とも密接に関わる部分です。

現場では「紙のチェックリスト」や「Excelベース」から「システマチックな管理システム」に移行する動きがあります。昭和型の現場では抵抗感も根強いですが、バイヤーからは「リスク対策の証跡がどこまで残っているか」を評価されます。

3. ソフトウェア保守・変更管理

リリース後も、保守対応や変更時に「なぜ変更が必要か」「どの手順で影響評価したか」までトレーサビリティを確保します。製造業では保守=製造・生産現場の担当に“丸投げ”になりやすいですが、IEC 62304では「ソフトウェア専任」「記録管理」が要求されます。

4. 問題点の発見・フィードバック

運用後に発生した問題についても原因分析、再発防止策、変更記録まで管理することが重要です。製造業の現場でありがちな「とりあえず現場で直す」「担当者がいるうちにしか分からない」という属人化を排除するのが、IEC 62304流の“現代的”品質管理です。

なぜ昭和型現場には浸透しにくいのか?

文化的・意識的な壁

長年「図面と現物が全て」とされてきた工場現場にとって、ソフトウェアのライフサイクル管理は“馴染みのない文化”です。

また、「何でも自分の頭と経験で対応してきた」「日報やメモ書きで十分」という意識が根強く、標準化・文書化・電子化はコストアップ、現場混乱の原因と思われがちです。

導入コストと期待効果のミスマッチ

電子ツールやシステム導入は、「バリューチェーン全体を見通すリーダーシップ」なしには効果を発揮しません。一部門だけ頑張っても、全社標準にならずに頓挫するケースも散見されます。

本質は「技術の継承」から「知識の継承」へ

IEC 62304が重視するのは「誰が担当しても品質が担保される仕組み」の構築です。ベテランの勘・経験のみに頼る時代から、「現場ナレッジを組織的に標準化し、次世代に継承する」ことが要求される時代となりました。こここそ、アナログ現場が変革すべき新たな地平線です。

現場が知るべきIEC 62304対応の実践ポイント

1. スモールスタートから始める

いきなり「すべてフル電子化」や「外部コンサル依存」では、現場がついてきません。「まずは設計書のテンプレートを見直す」「変更管理用チェックリストを整備する」など、既存業務にIEC 62304の項目を1つずつ当てはめていくのが実効的です。

2. 部門横断の体制作り

設計、開発、品質、調達など、多部門が連携してはじめて全ライフサイクル管理が実現します。特に調達部門は「サプライヤーの規格適合状況」を評価・情報共有する役割が求められます。

3. サプライヤーとしてのアピールポイント

サプライヤーの立場では「IEC 62304適合」を提示し、開発・保守体制、記録の管理状況を定量的に説明することが信頼確保につながります。顧客バイヤーが求める「第三者視点の証跡」、予防保全的な提案が高評価となります。

4. 課題を“現場の言葉”で見える化する

「なぜ記録・標準化が必要か?」について、現場メンバーの成功体験・失敗体験を共有することが重要です。数字や規格用語だけでなく、「誰に、何を、なぜ伝えたいのか」を各レベルで具体化しましょう。

5. バイヤー・営業担当も規格の知識を身に付ける

バイヤーや営業は「IEC 62304対応ができていないと受注不可」というケースへの臨機応変な対応力が求められます。現場へのヒアリング力、リスク評価のための質問力も現代の調達では必須スキルとなっています。

バイヤー・サプライヤーが押さえるべき着眼点

調達(バイヤー)視点

– IEC 62304対応状況(開発・保守・記録の提供範囲)
– リスクマネジメント体制(サプライヤー内での役割分担や訓練状況)
– ライフサイクル全体でのトレーサビリティ(設計⇒生産⇒保守まで一気通貫か)
– 予防保全や継続改善の姿勢(定例会議・レポートなど)

サプライヤー視点

– 顧客(バイヤー)の事業リスクを理解した上で、製品へのIEC 62304適合を示す
– 「規格対応=コスト増」の発想ではなく、「品質・信頼で選ばれる」ための付加価値と位置づける
– 記録や証跡、管理体制について、現場の実例データや数値を元に提示できる準備をする

まとめ – 新たな現場価値の創造に向けて

IEC 62304は単なる規格適合のためのハードルではありません。ものづくり現場の「知識」「品質」「信頼」のあり方そのものを根底から問い直し、次世代へつなげる大きな転換点です。

昭和型のアナログ現場にも、必ず現代的な標準化・デジタル化の波が訪れます。その波にどう立ち向かうかは、バイヤーもサプライヤーも現場一人ひとりの意識変革と連携にかかっています。

IEC 62304で求められるソフトウェアライフサイクル管理にしっかり向き合い、「現場で培われた知恵」と「世界基準の品質マネジメント」を組み合わせて、新たな製造現場価値の創造を目指しましょう。

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