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投稿日:2026年1月21日

ロボット導入で属人化が解消されないケースを振り返る

ロボット導入で属人化が解消されないケースを振り返る

はじめに:製造現場の「属人化」の本質を再考する

製造業の現場でよく耳にする課題の一つが「属人化」です。
属人化とは、特定の作業や工程が個人のスキルやノウハウに強く依存してしまい、他者が簡単に代替できなくなる状態を指します。
属人化の弊害としては、生産性のばらつきや品質の安定性低下、そして人員の急なリタイア時の業務停止リスクなどが挙げられます。

この数年で、こうした問題解決の特効薬として「ロボット導入」に注目が集まっています。
物流現場の自動搬送ロボットや、組立工程での協働ロボット、検査工程での画像認識AIなど、そのバリエーションも拡大し、導入実績も年々拡大しています。
一見、ロボット導入は「人に依存した仕事」から解放される決定打のように感じられます。
しかし実際の現場では、ロボット導入後も想定通りに属人化が解消されず、むしろ新たな属人化が生まれる現象も少なくありません。

本記事では、なぜロボット導入を進めても属人化が解消できないのか、具体的な現場の課題と、そこから考えるべきアプローチについて、現場目線かつラテラルシンキング的に掘り下げていきます。

ロボット導入で生まれる「新たな属人化」

ロボット導入の理想と現実のギャップ

まず、多くの現場担当者が夢見るのは「人からロボットに仕事を移せば属人問題は一発解決」という図式です。
たしかに、均質な動作をミスなく繰り返すロボットの信頼性は高く、熟練者頼みの“職人技”から解放されそうに思えます。
しかし、導入プロジェクトを推進した経験のある方ならお気づきでしょう。

実際にはロボットは「万能の自立型AI」ではなく、明確な制約条件の上でのみ動く「プログラムされたマシン」です。
そのため、仕様決めや周辺機器との同期、治具・ワーク形状のばらつき対応、異常対応…といった“現場ならでは”の無数のノウハウが依然として重要です。

「ロボットを使いこなす人」が新たな属人化要因に

導入初期、「ロボットの動作設定」や「不具合発生時の対応」「メンテナンス」などは限られたキーパーソンしかできません。
ロボットメーカーのエンジニアや、現地導入プロジェクトをリードした技術者、ロボットに長く携わってきた担当者がキーマンとなり、「あの人しか設定・調整ができない」「トラブルになると〇〇さん頼り」となる状況が生まれます。
これ自体が新たな属人化となり、結局、プロジェクトの初期フェーズで“人の壁”にぶつかるのです。

さらに、ロボットによる作業プロセスが変更されると、工程内の不具合パターンや判断基準も一新されます。
結果、従来の作業員が持っていた暗黙知はリセットされ、一方で「ロボットを補助・監視する人」が新たな“職人化”する場合も珍しくありません。

昭和から続く「変化を恐れる」土壌

製造現場には、長年の経験・カン・コツ(現場の三種の神器)が大切にされる土壌があります。
とくに昭和から続くアナログな現場では、「覚えるより見て盗め」「困ったらあの人に聞く」といった風土が根強く残っています。
この風土は、技術の伝承や現場力につながる側面もありますが、同時に“仕組み化”や“標準化”に必ず抵抗勢力となります。

結果、ロボット導入で書面やマニュアル中心の運用へ移行する際にも、「実際にはマニュアル外のコツが重要」「ロボットのクセを知っている人しか本当に動かせない」という属人的な運用が温存されやすいのです。

属人化解消における「ラテラルシンキング」の重要性

「人をロボットに置き換える」発想の限界

多くの現場は、属人化問題を「人を効率的なロボットに置き換える」ことで解決しようとします。
このアプローチは一部の定型的・量産的な作業では有効ですが、工程全体、工場全体で考えると誤解やトラブルの温床になります。

ロボットは“動作の自動化装置”であり、「人が目の前で判断し、その場で細かく融通を効かせてきたこと」を全て自動化できるわけではありません。
むしろ「人が現場で判断してきた膨大なノウハウ」をいかに仕組みに反映・蓄積するかが、本当の意味での属人化解消のカギだと考えます。

なぜ「仕組み化・知識の見える化」が肝要なのか

実際、私が携わった自動化プロジェクトでも、「特定作業者の経験値」や「現場だけで通じる独自ルール」を体系化・ドキュメント化する段階に、一番エネルギーを使いました。
ここを疎かにして、“ロボット投入=自動化完了”と思い込むと、属人化は形を変えて温存されたままになります。

例を挙げましょう。
例えば、画像検査ロボットを導入しても、製品ごとに微妙な形状差異や、OK/NGの判定基準を現場担当者ばかりがわかっている場合、「結局、設定をいじれるベテランがいないと回らない」状況が生まれます。
こうした“ノウハウの埋没”こそが属人化の本丸なのです。

現場ナレッジを「仕組み」に変える発想法

ラテラルシンキング=横断的思考で考えるならば、「個人の知恵や工夫・現場特有のクセ」を積極的に発掘し、形式知・ナレッジとして蓄積することから始めるべきです。

そのためには、
・工程ごとの業務フローの明確化
・異常発生時の対応マニュアル整備
・標準作業書+現場目線の“補足ノート”作成
・ロボット動作条件・設定パラメータのデータベース化
・DXプラットフォーム導入による現場知見のやり取り

…といった全体的な知識の「見える化・共有化」が重要です。
これらの情報が蓄積されれば、誰でも同じレベルの判断や対応ができ、ロボットも柔軟に使いこなせるようになります。

ロボット導入による属人化脱却、成功のカギ

ロボット導入の本質は「人×機械」の融合

属人化解消に向けて大切なのは、“人”か“ロボット”か、どちらかに依存しないハイブリッドなモノづくり体制の構築です。
人の強みは「現場対応力、異常時の勘や工夫」であり、ロボットの強みは「高精度な作業再現性、データ化された動き」です。
現場担当者の気付きや創意工夫を、ロボットの設計・運用に反映し続けるPDCA体制が不可欠です。

バイヤーや調達部門の視点:サプライヤーはどこを見ているのか

ロボット導入・自動化に際しては、調達・バイヤーの役割も非常に大きくなります。
「初期投資コストが高いから…」と消極的な現場も多いですが、今やロボットは“導入して終わり”ではありません。
サプライヤー側から見れば、導入後の教育サポート、メンテナンス体制、運転状況に合わせたカスタマイズ力が差別化のポイントになります。

また、バイヤーも「ロボットのスペック」だけでなく、「柔軟な運用設計」「現場の属人課題をどう解決できる提案か」を重視しています。
単なるコスト比較でなく、長期運用・改善フェーズも含めて総合評価する志向が今後さらに強まるはずです。

属人化解消のための“現場巻き込み型”プロジェクト推進

成功事例を見ると、一部のキーマン主導や“トップダウン型”だけではなく、現場作業者やリーダー層を巻き込んだワークショップ型・改善推進型が共通しています。
・現場の痛みを言語化し、ロボット設計・シナリオにフィードバック
・作業手順書・マニュアルを現場内でブラッシュアップ
・ロボットの運用データやトラブル事例をナレッジ化

こうした「現場駆動型PDCA」こそが、新時代の自動化=真の属人化解消の道となります。

まとめ:「属人化」という言葉を本質的に問い直そう

ロボット導入は、現場課題の魔法の杖ではありません。
むしろロボットという“新しい生き物”を現場に迎えることで、新たな属人化・新たな課題が必ず生まれます。

本質的な属人化解消には、「人のノウハウを吸い上げ、現場知見を仕組み化し、誰もが使えるカタチにする」ことが不可欠です。
属人依存を“悪”と捉えるのではなく、属人的な価値を“全員で共有できる知的財産”へと進化させていく思考が重要です。
そして、「ロボットを使う人材」を育て、「知恵と技術」を現場で循環させる文化が根付きこそ、真の属人化解消=生産現場のレジリエンス(柔軟性・強さ)がもたらされるのです。

属人化を打破するのは、ロボットそのものではありません。
ロボット導入をきっかけに、「現場知」を仕組みに変え、全員で価値を高める新しいモノづくりの地平線をぜひ一緒に切り拓いていきましょう。

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