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コストダウンを進めた量産日用品が現場で扱いにくくなる理由

目次
はじめに:量産日用品に求められる「安さ」と「使いやすさ」
現代の製造業において、コストダウンは最重要課題の一つです。
特に量産される日用品や消耗品の分野では、価格競争が激化し、ユーザーの「もっと安く」の声が至るところに響き渡っています。
しかし、安さを優先するあまり、現場で扱いにくい製品が増えているという現象が起こっています。
その結果、作業効率の低下や、思わぬムダが発生し、ひいては全体コスト増という“本末転倒”な結果すら招くこともあります。
なぜコストダウンを追求した量産品が、現場での使い勝手を損なうのでしょうか。
この記事では、製造の現場目線からその理由を解き明かし、今後の日用品開発や調達活動のヒントをお伝えします。
なぜ「量産」と「コストダウン」が扱いづらさに繋がるのか
材料のランクダウンと物性的な課題
コストダウンの有効な方法として、材料の「ランクダウン」がよく採用されます。
つまり、従来よりも安価な原材料や副資材に置き換えることで、製品そのもののコストを抑える手法です。
このとき、物性(強度・柔軟性・耐久性など)が微妙に異なる安価材を使った結果、「割れやすい」「曲がりやすい」「長持ちしない」といった現場での不具合が現れやすくなります。
たとえば、プラスチック製のコンテナやパレットをコストダウンのために薄く成形した場合、持ち運びや積み重ねの現場で割れやすくなり、かえって破損の頻度が増してしまうことがあります。
一つひとつの物性低下はわずかでも、現場では日常的に使われ続けるため、累積的なストレスや手間が増大します。
工程簡略化と検査精度・安定性の低下
もう一つのよくあるコストダウン策は「工程の簡略化」です。
省力化やライン自動化を推進し、検査工程を省略したり、検査基準そのものを引き下げたりします。
このために、寸法のばらつきが大きくなったり、仕上がりの品質安定性が損なわれたりすることが珍しくありません。
その影響で、例えば「ねじ込み部が固すぎる」「パーツのかみ合わせにムラがある」といった現象が多発します。
現場作業員は、こうした些細な作業不良を毎回“感じながら”、追加の手間を費やすことになります。
パッケージやロットの巨大化による作業負担増
コストを下げるために、1ロットあたりの数量や1パッケージあたりの容量を増やす施策も見受けられます。
配送や倉庫コストを抑えようと「まとめ買い必須」「バルクパックのみ対応」とした結果、現場では小分けや出し入れに余計な工数・スペースが必要となることがあります。
例えば、従来は1箱100個入りだった部品を1箱1000個入りに変更したところ、「箱が重すぎて一人で運べない」「現場に置ききれない」といった声が出ることも珍しくありません。
安くしたはずが、“現場の不便さ”という新たなコストが生じているのです。
現場で起こっている「あるある」事例
事例1:安価な手袋の摩耗・切れやすさ
工場や倉庫での手作業には、作業員の安全のため手袋が不可欠です。
某社では手袋のコストダウン要請を受け、低価格帯の手袋に切り替えた結果、数日で指先がほつれるようになってしまいました。
毎回新しい手袋を配布することになり、管理・在庫補充のために現場主任が奔走することに。
「結局前より高くついてる」というジレンマに悩まされた例です。
事例2:パレット省力化のはずが、現場は余計な手間増大
物流業界の効率化要請で、軽量化パレット(プラスチック製)の採用が進みました。
ところが、薄さと耐久性のバランスが悪く、荷物を積む際のたわみや割れが多発。
現場では「二重に積み重ねられない」「新しいパレットを頻繁に買い足す」状況になり、最終的に以前より物流コストが増加しました。
事例3:ねじ精度低下による組付け不良
精密機器の組立現場では、ネジやボルトの寸法や精度が重要です。
コストダウン要求により微妙に公差を広げた部材を導入したところ、「手で回らない」「途中で止まる」といった苦情が急増。
ラインの流れがたびたび中断され、作業者のストレスも大きくなりました。
製造業における「ムダ」と全体最適の視点
目先の単価低減VSトータルコスト
現場を知らない管理職や調達担当者の中には、「単価が1円でも安ければOK」と考えがちです。
しかし本質的なコストダウンとは、購買単価だけでなく、現場の作業効率やメンテナンスコストも含めた“トータルコスト”で判断すべきです。
現場で不具合やトラブル、ムダな手間が増えれば、
その分「付随作業コスト」「廃棄コスト」「在庫コスト」といった形で必ず跳ね返ってきます。
単価にこだわるあまり「総額のコスト高になっていた」という反省事例は、昭和の時代から現在まで後を絶ちません。
現場目線でのコスト構造再考
真に意味のあるコストダウンを成功させるためには、部品単価・材料費といった目先のコストだけでなく、使用頻度・作業員の工数・現場トラブルの発生率など「現場で発生する全体コスト」を可視化することが不可欠です。
調達バイヤーが真に頼りにされるためには、現場訪問や作業体験を通じて「なぜこの仕様が必要なのか」「どんな場面で困りごとが多いのか」を自分ごととして理解し、サプライヤーにも現実を伝える力が求められます。
現場で長く愛される日用品の条件とは
単なる安さより「使いやすい・長持ち・安全」が最優先事項
現場で評価される日用品や消耗品は、「安さ」一本やりではありません。
以下のようなトータルバランスが重視されています。
・現場作業員がストレスなく繰り返し使えること
・壊れにくく、不良発生が少ないこと
・安全に使える品質をキープしていること
・万一の場合でも迅速に交換・補充できる流通体制
この4拍子を満たして初めて「現場で本当に役立つコストダウン」が実現できます。
バイヤーは「なぜ現場が今のものを使い続けているのか?」をヒアリングし、何を妥協でき、何を妥協してはいけないのかを丁寧に見極めることが大切です。
今後、サプライヤーやバイヤーが取るべきアプローチ
現場との定期的な実地コミュニケーション
品質・コストの最適解を目指すなら、現場とのコミュニケーションは必須です。
週次や月次でヒアリングや現地下見を行うことで、課題が早期に把握でき、対策も打ちやすくなります。
サプライヤーも現場主導型のFTA(Failure Tree Analysis)や5Why分析などの手法を活用し、「製品が現場でどう使われているか」を“体感”として把握することが重要です。
VE(Value Engineering)の視点で仕様再設計
現場事情を踏まえて、「ここは絶対に必要」「ここの仕様なら省ける」というポイントを明確にし、仕様や設計段階から無駄をそぎ落とすアプローチがVEです。
調達部門は設計部門・現場双方とディスカッションを重ねること。
サプライヤーも「現場での真の使われ方」をベースに改善提案を行い、Win-Winの関係を築くことが求められます。
昭和的な“値切り主義”を脱し、パートナー型調達へ
価格交渉一本やりだった時代は終わり、今や信頼できるパートナーとの協業が競争優位の鍵となります。
単なる安売り合戦ではなく、「現場目線でコストを最適化するには?」と互いに知恵を出し合うスタンスに転換しましょう。
まとめ:現場目線のコストダウンが生み出す“本物”の価値
コストダウンを進めた量産日用品が現場で扱いにくくなる理由は、目先の単価ばかりを追求し、現場の使い勝手やトータルコストを見逃しているケースが多いからです。
製造現場の声を真摯にすくい上げ、サプライヤー・バイヤー・現場の三位一体で「本当にムダのない仕組み」を作ることが、これからの日本の製造業にとって不可欠です。
安さと使いやすさ――この両立を諦めず追求してこそ、現場も企業全体も強くなります。
ひいてはそれが、日本のものづくりを、世界に誇れるものへと高める礎となるのです。
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