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投稿日:2026年1月22日

人的資本経営を説明できない管理職の本音

はじめに:変革の時代に問われる「人的資本経営」

少子高齢化、グローバル競争、AIや自動化など、製造業を取り巻く環境は昭和・平成時代から大きく変わりつつあります。

そんな中で注目されているのが「人的資本経営」というキーワードです。

人的資本経営とは、従来の「コストとしての人材」から、「価値創造の源泉としての人材」に視点を切り替え、個々人の能力開発やエンゲージメント向上に投資する経営へとシフトする考え方です。

ですが、実際の現場や管理職に「人的資本経営を説明してください」と尋ねても、明快な答えが返ってくることは多くありません。

それはなぜなのか。

長年製造業で現場と本社の間を往復し、現場改革や人材育成推進に関わってきた経験をもとに、現場管理職の本音と、製造業が今後向かうべき道について深掘りしていきます。

人的資本経営を説明できない管理職の本音

そもそも「人的資本」とは何か?言葉と現場のギャップ

ここ数年、「人的資本」という言葉自体は経営層や外部セミナーなどでもよく耳にするようになりました。

一方、現場の管理職にとっては「人的資本」と聞いても、ピンとこないのが本音です。

なぜなら、多くの現場では「QCD(品質・コスト・納期)」が絶対命令であり、人員もコストの1カテゴリとして数値化される文化が長年根付いているからです。

実態として、人員をいかに少なく、いかに効率的に配置するかばかりを追い求めてきた昭和の成功体験が抜けきれていません。

そのため、「人的資本経営」と言われても、どうしても「また新しい横文字の流行ですか?」という反応になりがちです。

評価制度や等級制度が「形骸化」している組織の現実

多くの大手や中堅メーカーで、成果主義やMBO、人事評価のシステム刷新が繰り返されてきました。

しかし現場では、「結局は年功賃金と役職順」「評価と給与の差が微々たるもの」「やる気ある人が損する」といった声が根強いのです。

人的資本経営を推進せよと言われても、評価制度や処遇が追いついていなければ現場管理職には本気で取り組むインセンティブが生まれません。

「評価する立場の自分たちに十分な裁量も育成ノウハウも与えられていない」
「人材育成や能力開発への予算が下りない」
こういった本音が根底にあります。

“人への投資=単なる研修”は誤解

会社として人的資本経営や人材強化の施策を打ち出す時、「人財開発研修」「階層別教育」「外部講師によるDX講座」といった研修が真っ先に思い浮かびやすいです。

現場管理職も「異動者研修」「安全教育」等の対応には慣れています。

しかし「人を育てる」「能力を高める」という本来の意味での”投資”とは異なり、「予算消化」や「指示されたから実施」で終わっているのが実情です。

管理職の本音は、「短期の研修で人は変わらない」「職場の環境が変わらなければ定着しない」と感じていても、現場で具体的な打ち手がわからない、時間もない、というジレンマに悩まされています。

製造業の現場ならではの“お作法”の壁

製造業の現場では、「阿吽の呼吸」「空気を読む文化」「経験年数がものをいう世界」が依然として多く残っています。

そのため、「言葉になっていないルールや文化」を可視化し、人材価値に換算するという発想自体に馴染めない管理職も多数います。

特に「自動化・デジタル化=現場の仕事を奪うもの」と捉え、改革そのものに抵抗感を抱く層が一定数存在しています。

こうした昭和から続く“しきたり”や“メンバーシップ型組織”の壁が、「人的資本」を正しく語るうえで大きな障壁となっています。

現場視点で考える、人的資本経営の本質とは

“育成”と“評価”の新しい関係を再構築する

これからの製造業にとって、人材を「モノづくりの担い手=労働力」としてだけでなく、「競争力の源泉=知恵・工夫・成長意欲」と見なす視点が不可欠です。

そのためには、
・「評価」=過去の実績だけを見るのではなく、「成長可能性」「新しいチャレンジ」「周囲への影響力」「チームでの学習効果」などを重視する
・上司の一方的な評価ではなく、360度評価や自己申告を活用し、納得感ある評価プロセスにする
・個人の学びや挑戦が、社内で正当に認知・共有される仕組みを作る
こうした“育成”と“評価”の新しい関係性を、現場レベルから再構築していくことが重要です。

OJT重視の罠:ナレッジの属人化から「組織知」へ

多くの工場現場で「OJT(On the Job Training)」は主力の人材育成手法です。

しかし、本当のOJTとは「見て覚えろ」ではなく、
・作業工程をマニュアル化し体系的に伝承する
・失敗や工夫を互いに、横断的に共有する
・若手や新規スタッフが気づきを自由に発信できる
・“暗黙知”を“形式知”へ転換する
こうした仕組みづくりがあってこそ「人的資本」として積み上がり、全体最適が図れるのです。

ベテランのノウハウがメールや口頭伝承だけで埋もれてしまう組織では、人材価値はなかなか可視化・定量化できません。

「安心して学べる環境」への投資こそ最大の人的資本投資

製造業の現場は「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」や安全活動など、ルール遵守に厳格です。

しかし新たな挑戦や変革には「ミスや学びを歓迎する風土」「最新技術にも臆さずチャレンジできる余地」が重要です。

管理職が今できることとして、
・失敗を責める文化から「失敗から学ぶ」を称賛する
・派遣・契約・パート含め、多様な人材が主体的に動ける環境を作る
・現場改善提案やカイゼン活動にきちんと予算と評価を紐づける
こうした“心理的安全性”への投資こそが、「人的資本経営」の実践の第一歩と言えるでしょう。

昭和のアナログ業界を変えるラテラル思考のすすめ

最新技術の導入=人的資本の敵?

AIや自動化、省人化設備の導入が叫ばれる中で、現場からは「人が余るのでは」「仕事が減るのでは」といった不安も聞こえます。

しかし、「人にしかできない価値=ラテラル思考」を活かすことがこれからの現場競争力になります。

たとえば、
・AIには判断できない微細な異常や予兆の早期発見
・変化点管理や多品種小ロットへの柔軟な対応
・他業界や他部署の知見を現場改善へ転用
・現場の“困った”をビジネスアイデアに変換する第一線の気づき

こうした“知恵と工夫”への投資が、真の人的資本経営への転換なのです。

バイヤー・サプライヤー間の「人の価値」を見直そう

購買・調達の現場では、長年「コスト最優先」や「価格交渉一辺倒」となりがちでした。

ですがこれからは、「現場の人」の知恵やネットワーク、協力関係そのものが大きな強みになります。

バイヤーの視点で言えば、
・サプライヤー担当者の変更や技術提案力が間接的にQCDに効いてくる
・調達先の人材育成方針によって品質対応やリスク回避力に差が生じる
サプライヤー側も、「バイヤーがなぜそのサプライヤーを選ぶのか?」の判断基準に「人材の安定」「組織力」が含まれつつある事を意識する必要があります。

これからのバイヤー・サプライヤー関係は、「モノ」だけでなく「ヒト×モノ×コト」の価値を総合的に見る時代に入ります。

まとめ:人的資本経営は「説明すること」から始まる

製造業で人的資本経営が進まない理由は、経営の現場とのギャップ、評価制度の形骸化、現場独自の慣習といった要素に根差しています。

「人への投資がなぜ必要なのか?」
「どんな人材をどのように評価していくのか?」
この問いに管理職自身が腹落ちして、自分なりの言葉で語れるようになることが一歩目です。

現場の知恵、工夫、挑戦、協働といった価値を見える化し、「人が成長し続ける組織=強い現場」という共通認識を、経営層から現場最前線まで描くことが、今まさに求められています。

自分自身も、現場でラテラル思考を実践しながら、昭和のアナログ型から進化する製造業の新しい未来を、ともに創っていきたいと強く願っています。

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