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投稿日:2026年1月23日

消耗品コストダウンを進めた結果イベント準備が複雑化した事例

はじめに:消耗品コストダウンの落とし穴

製造業の現場において、消耗品のコストダウンは利益改善のための王道施策の一つです。
特に原材料や部品の価格上昇、人手不足が叫ばれる現在、些細なコスト削減も見逃せません。
しかし、コストだけに目が行き過ぎると、本来の現場作業や品質維持に思わぬ影響が及ぶことがあります。

例えば、イベントや一時的な生産ピーク時には、大量の消耗品準備や調達が必要になる場面も珍しくありません。
今回は「消耗品コストダウンを進めた結果、むしろ準備作業が複雑化した」実体験をもとに、現場目線で解決のヒントを探ります。

消耗品コストダウンとは何か?その推進背景

日常的な“消耗品”とは

製造現場で言う消耗品は、手袋やマスク、洗浄剤、清掃用ウエスなどの「毎日使っては捨てるモノ」や、工具の修繕部材、検査用具など多岐にわたります。
これらにかかる年間の費用は、見えるものだけでも数千万円単位になる場合もあります。

なぜコストダウンが求められるのか

生産コストのうち消耗品費用は一般的に「変動費」として比較的手を付けやすい分野です。
購買部門や現場の管理職は「安く、無駄なく消耗品を調達せよ」という無言のプレッシャーを受けています。

また近年ではSDGsや環境意識の高まりもあり「使い捨てを減らす」「再利用可能なものに切り替える」などの動きも強まっています。

調達購買部門と現場運用部門の狭間で

コストダウン活動は多くの場合、調達購買部門主導で行われます。
一方で現場では「品質」「安全」「作業性」が最優先されるため、安価な消耗品が現場の役割に合致しないケースも少なくありません。

この溝が埋まらないと、本来なら効率化が進むべき現場オペレーションにむしろ複雑さや不便さが生じてしまうのです。

実際に起きた事例:イベント前夜の“混乱”

背景:年に一度の生産応援イベント

私が工場長を務めていたある工場では、年に一回だけ通常の一日生産量を2〜3倍に引き上げる「増産応援イベント」を実施していました。
繁忙期前の需要に応じて大規模な生産体制を組むのですが、同時に通常以上の消耗品を一挙に準備する必要がありました。

コストダウン推進案の“導入”

購買部門はコスト削減のため、通常より安価なA社製の手袋やウエスを採用。
さらに「無駄遣い防止」の観点から、消耗品ストッカー(鍵付きの棚)を導入し、現場担当者が“必要個数だけ”受け取れる運用に変更しました。

調達コストはたしかに1割以上削減でき、年度計画達成への大きな貢献策だと評価されました。

結果:イベント準備作業の複雑化

ところがイベント前日、現場では次のような事態が起きました。

– 新しい手袋が「サイズが合わない」「手がベタつく」などの苦情が多発
– 手袋・ウエスの受け取りにストッカー担当を呼ぶ必要があり、分単位で現場の作業が止まる
– 想定数以上に手袋交換が必要になり、途中で在庫切れ
– イベント当日に急きょ追加発注→購買部門・サプライヤと二重三重の調整が発生

その結果、前年よりもイベント準備時間・管理コストが増加し、現場と購買部門の間に不協和音さえ生まれました。

なぜ複雑化したのか?昭和的思考と現場リアリティ

安価・慎重すぎる調達=現場の柔軟性が失われる

調達購買部門は「購入単価の安さ」と「いかに無駄を排除するか」に力点を置きがちです。
これは昭和の高度成長期から現代にも残る企業文化の名残りです。

しかし、現場では「異なる条件・緊急対応・イレギュラー対応」が日常茶飯事。
特にイベントのような変則生産では、平時のロットや消費実績が全く通用しません。
この“現場のゆらぎ”を見誤ると、一見効率化に見える運用がかえって整理と調整の手間を増やします。

現場の声を“可視化”しないと続かない

コストダウン実行の前提として、現場で実際に使ってみたときのフィードバックを軽視しやすい点も問題です。

– サイズ感や作業適合性は十分か
– 急ぎの時に取り寄せやすい運用設計か
– 臨機応変な融通がきく管理か

これら現場目線の小さな問題点が、積もり積もって「うちの現場には合わない」という反発につながっていきます。

属人的・アナログな調整、消えない“現場力”の功罪

今なお多くの工場現場では、ベテラン作業者や担当者の“勘と経験”で現場運用が成り立っています。
これは昭和から令和への移行期にある日本のアナログ産業の大きな特徴です。
多少の管理ミスや非効率は「みんなで何とかする」という文化ですが、これが調達の新方式と噛み合わない時、混乱だけが残ってしまいます。

本質的なコストダウン、準備工数削減のためのヒント

真の「コスト」の定義を広げる

消耗品コストダウンとは、本当は「購入単価の安さ」だけでなく、「管理や準備対応にかかる人件費」、「トラブルによる生産ロス」も含むべきです。

– 安く買えても手間が増える→本質的にはコスト増
– 管理を厳格にしても、臨機応変さを失えば現場の活力が削がれる

こうした隠れたコストをしっかり“見える化”し、現場・購買双方が合意できる基準を設けることが重要です。

現場ヒアリングと“小さな実験”のすすめ

コストダウン案を闇雲に押し付けず、次のようなアプローチを推奨します。

– 現場責任者や作業者に試作品を実際の現場で使ってもらう
– イベント時など負荷が高い場面こそ“試運転”し、課題を抽出する
– サプライヤーと直接コミュニケーションをとり、「現場にあったアレンジ」ができるかを探る

特にイベントや繁忙期には、小さく始めて現場反応を見る「パイロットテスト方式」が効果的です。

サプライヤー巻き込み型のサプライチェーン構築

サプライヤーを単なる価格競争の相手とせず、「現場に合った消耗品や納品方法は何か?」の視点で相談していくべきです。
サプライヤーは豊富な納入現場を見ているため、他社での成功事例や失敗事例も共有してもらえます。
また、自社独自のイベントや繁忙期事情を開示すれば、より柔軟な調達・納品方法も実現しやすくなります。

デジタル化で準備・調整の“見える化”

アナログ現場でもデジタルツールを使うことで、「消耗品の使用量予測」や「受け渡し履歴の自動集計」など、見える化・効率化は可能です。
ストッカーの鍵や手配の紙台帳を、廉価な電子管理に移すだけでも、化ける現場は多いものです。

まとめ:一人ひとりの“声”と現場最適の追求が未来を拓く

消耗品のコストダウンは「単価を叩く」以上に、本当の意味で現場作業がスムーズに流れてこそ意味があります。

– 作業者の“ちいさな声”を聴く文化
– サプライヤーを巻き込んだ共創型調達
– アナログとデジタルの良いところ取り
– 現場に合った「小さな実験」とそのフィードバック

これらを愚直に積み重ね、失敗から学び続けることが、結果的には全社の競争力につながります。

バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの考え方を知りたい方、そして現場で日々奮闘される皆様が、本記事を通じて「机上のコスト削減と現場リアリティの接点」を再発見し、持続的な成長のヒントを得られることを願っています。

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