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睡眠改善を個人任せにした健康経営の限界

目次
はじめに:健康経営と睡眠の関係
近年、健康経営に取り組む企業が増えています。
生産性や離職率、社員の満足度を左右する要素として、「健康」は有力なテーマです。
なかでも、社員一人ひとりの「睡眠」に焦点を当てた施策は、身体的・精神的なパフォーマンス向上の要ともいえます。
しかし、多くの現場や経営者が睡眠改善を「個人の取り組み」に任せているのが現状です。
果たして、それで十分なのでしょうか。
昭和的な「自己管理主義」を脱し、組織として変革しない限り、企業の生産性・創造性向上には限界があります。
本記事では、製造現場で20年以上歩んできた体験と、現場目線の実践的な知見を交えながら、「睡眠改善を個人任せにした健康経営の限界」について深堀りします。
製造業に従事する皆さま、そして調達・購買やバイヤー職を志す方、サプライヤーとしてバイヤーと良好な関係を築きたい方にも役立つ内容をお届けします。
従来型の睡眠改善施策の実態
健康経営ブームと現場の温度差
健康経営という言葉は今やバズワードの一つです。
ですが、その波は製造業の現場ではどこまで浸透しているでしょうか。
多くの工場では「健康診断の実施」「ウォーキングキャンペーン」「禁煙指導」といった形式的な取り組みが目立ちます。
睡眠へのアプローチとなると、セミナーや睡眠日記の推進程度で、実効性のある取り組みは希少です。
現場感覚としても、「睡眠は自己管理」「ちゃんと寝ろ」と指摘して終わり。
つまり、削減コストや生産ノルマを追求する一方で、社員の休息や睡眠改善は本人の責任に丸投げされているのです。
なぜ睡眠改善は個人任せになるのか
昭和的な企業文化――つまり、「頑張っている姿勢が評価される」「ガマンは美徳」「長時間労働が普通」といった価値観が根強い業界ほど、睡眠を始めとする健康管理は「自己管理」として扱われがちです。
定時後や休日にも出社や対応を求められる風土では、「しっかり眠ることが悪」「寝ている=仕事熱心でない」とみなされることすらあります。
また、経営サイドが睡眠改善に投資する場合、「睡眠セミナー」など安価かつ簡易な施策にとどまり、現状の労働環境や働き方改善には踏み込みません。
結果として、「睡眠は本人が頑張るもの」となり、眠れない原因や構造的な問題が放置されます。
睡眠不足が製造現場にもたらすリスク
ヒューマンエラーと労災のリスク
製造現場で睡眠不足によるミス・事故がどれほど多いか、統計データでなくとも、実感している工場長・管理職は多いでしょう。
私自身も「あと5分早く気付けていれば」「ちょっとした見落としが…」という重大事例を何度も目にしました。
その多くが、実は前日夜勤明けで休めずシフトに入った、ストレスで眠れなかったといった背景を伴っています。
材料の取り違え、機械操作ミス、不注意による怪我や製品不良――一つひとつのミスが、会社の信頼や利益に大きく響きます。
生産性と現場の連携不足
調達・購買やサプライチェーン部門においても、睡眠不足は深刻な課題です。
バイヤーに求められる高い判断力、複数の取引先・工程との調整、価格交渉…すべてがクリアな頭脳とチームワークに支えられています。
睡眠が不足していると、意思決定の質が落ち、コミュニケーションや情報伝達もおろそかになりがちです。
結果、余計なコスト増や納期遅延、トラブルの長期化に繋がります。
睡眠不足の真の原因:個人のせいだけではない
労働環境の構造的な問題
「寝ていないのは自己責任」と切り捨てる前に、職場や組織構造に目を向ける必要があります。
・過度な残業・休日出勤
・突発対応や呼び出し
・夜勤や交替制勤務
・終わらない会議や資料作成
・シフトの急な変更
こうした現場事情は、個人の努力だけではどうにもなりません。
生産計画が不安定な中小製造業ほど、納期直前の「追い込み」で無理をさせがちです。
シフト手当と引き換えに睡眠時間を削る慣行が根付き、「現場だから仕方ない」と解決が先送りになります。
管理職・バイヤー側の視点の欠如
調達部門のバイヤーや生産管理、品質管理の担当者は「どうしても納期が守れない」「トラブル対応で帰れない」といったプレッシャーから、自分の健康や睡眠を後回しにしがちです。
また、サプライヤーとの交渉でも「相手も同じぐらい働いているはず」と暗黙のガマン比べになる場合も多いものです。
これらは、「仕事の質は量をこなすことでしか担保できない」とする昭和的な発想から来ています。
管理職が自分自身の睡眠と健康に鈍感なままでは、部下や外部パートナーに配慮した労働環境をつくることは難しいでしょう。
業界全体を変えるために:組織としての睡眠戦略
ラテラルシンキングで考えるべきアプローチ
昭和的な自己責任論から一歩進むには、組織全体でひとり一人の睡眠を守る意識改革と、業務構造の再設計が不可欠です。
以下、現場で実践し結果を出した施策も交えながら、新しい地平線を切り拓くためのポイントを示します。
1. シフト設計の見直しと柔軟な勤務体制
夜勤や交替制現場では、単に「手当」をつけるだけでなく、シフト間インターバルを最低でも8時間以上空ける、連続夜勤回数に制限を設けるなど物理的に「寝られる仕組み」を優先します。
AIによる最適シフト生成も導入し、ベテランや体調不良の社員には個別対応も行いました。
2. 部署間連携とサプライヤー関係の変革
調達部門と製造現場、サプライヤーのコミュニケーションを週1回「調整会議」で可視化し、夜間・休日の緊急連絡を最小限にするルールを作りました。
バイヤーがサプライヤーに「無理をさせない」体制をつくることで、双方の睡眠を犠牲にしない信頼関係が築けます。
3. 管理職の意識改革とロールモデルづくり
経営層・工場長クラスが、あえて「今日は早めに帰宅します」「睡眠を大切にしています」と公言し、部下・若手社員にも「睡眠管理も仕事」と捉えさせる風土をつくりました。
その結果、翌朝の朝礼や現場会議の質が明らかに向上したという効果がありました。
4. 科学的データによる見える化・啓発
ウェアラブルデバイスやスマホアプリ等を使い、社員の睡眠状況を「匿名で」集計し、定期的に社内報でフィードバックしました。
個人任せにせず、部署単位・工程単位で睡眠状態を可視化したことで、「集団全体でどう改善すべきか」の議論が起こるようになりました。
個人ではなく、組織として睡眠を守る意義
睡眠は「本人の努力次第」と思われがちですが、実は職場の仕組みや働き方によって大きく左右されます。
昭和型の「やせ我慢」と自己責任論から脱却し、会社全体での「集団的睡眠向上戦略」を目指すことが、今後の製造業には不可欠です。
バイヤーや調達担当の方にとっても、自社だけでなくサプライチェーン全体の健全化が、安定調達や品質向上の礎となるでしょう。
サプライヤーの立場からも「バイヤーがこう考えている」「睡眠を守ることが取引先との信頼に繋がる」という視点があれば、持続的なビジネスが築けます。
まとめ:真の健康経営のために、昭和思考からの脱却を
睡眠改善が「個人任せ」「自己責任」で終わっている健康経営には、必ずや限界が訪れます。
現場でのヒューマンエラーや生産性低下、管理部門のトラブルやサプライヤーとの関係悪化――これらはすべて、睡眠不足から発生するリスクです。
これからの製造業では、現場、バイヤー、サプライヤーが一体となり、「全員で睡眠を守る」という新しい価値観を創出しなければなりません。
健康経営を名乗るなら、「本人任せ」「やせ我慢」の一歩先へ。
組織の仕組みと現場目線の知恵で、本当の意味で働く人が守られる社会を目指しましょう。
現場を知るあなたこそ、変革の第一歩を――その志が、業界をよりよい明日へ導くのです。
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