調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年1月25日

CRMと実際の営業活動が乖離する場面

はじめに:CRMと営業活動の間に潜むギャップ

製造業を取り巻く環境がデジタル化の波に洗われる中、多くの企業が顧客管理システム、いわゆるCRM(Customer Relationship Management)を導入しています。

「業務効率化」や「標準化」、「顧客満足度向上」を目指して設計されたはずのCRMですが、実際の営業活動現場では、このCRMが本来の力を発揮できていないケースが多発しています。

特に昭和的なアナログ文化が色濃く残る製造業では、「現場感覚」と「システム運用」のギャップによって、思わぬ弊害が生まれているのです。

本記事では、現場で起こりがちなCRMと営業活動の乖離について、リアルな事例を交えながら掘り下げます。

また、その背景や根本原因、解決の糸口についても考察し、「使えるCRM」の浸透を阻む壁を乗り越えるためのポイントをご提案します。

CRMとは何か?製造業における期待と現実

製造業がCRMへ抱く期待は、「営業情報の一元管理」と「ノウハウ共有」の実現、そして「属人化からの脱却」です。

営業マンごとに顧客との関係性や商談進捗がバラバラになりやすい製造業では、CRMの活用によってそうした情報の集約と組織全体での活用を狙っています。

また、調達購買、生産管理、品質管理、サービス部門など、分断されがちな各機能部門もCRMを通じて連携が進むことが期待されます。

しかし実情として、多くの製造業現場では以下のような現象が見られます。

理想と現実のギャップ

– CRMへの「入力が目的化」し、現場の活動と乖離する
– “名刺管理ツール”になってしまい、ナレッジや人脈の共有に活かされない
– システムの使い方が複雑で、営業担当者が入力自体を後回しにする
– 「紙文化」「エクセル神話」が根強く、CRM運用が進まない
– 経営層・管理部門主導で現場の声が反映されない仕様に

最初は理想を掲げて導入したCRMも、現場での運用が定着しないばかりか、「あってもなくても変わらないツール」「面倒な負担」として敬遠されてしまう…。

一体なぜ、こんなにも「現場」と「CRM」は乖離してしまうのでしょうか。

なぜCRMは現場営業の実態と乖離するのか

1. 昭和型営業とデジタルのすれ違い

伝統的な製造業では、長年の「対面重視」「根回し・信頼の積み重ね」をベースに営業が成り立っています。

特に法人営業、購買担当者との人間関係づくり、工場や現場のネットワークが受注のカギとなる局面も多く、「ツールに載らない情報」に価値が宿る傾向が強いです。

このため、現場営業担当者は、CRMへの入力作業を「本当の仕事ではない」と認識することが少なくありません。

また、購買バイヤー担当者の本音や社風、緊急時の駆け引きなど、「空気」とも呼べる曖昧なノウハウは、CRMの定型フォームに収まりきらない場合が多いのです。

2. システム視点優先の設計、現場の自律性との対立

多くの企業では、CRMの導入プロジェクトが「経営企画」「情報システム部」「ITコンサル主導」で選定・設計されます。

このとき、「管理」「見える化」「KPI取得」といった経営層が欲する論理が前面に出る一方、実際にツールを日々利用する営業現場のリアルな声が埋もれてしまいがちです。

現場の使い勝手や手間、入力効率を軽視した設計になれば、「成果主義に見せかけた管理強化」へとシフトし、「現場の自律的な活動」を阻害する負担ツールになってしまいます。

3. 属人化と個人スキル信仰の根深さ

「〇〇さんがいなければ商談はまとまらない」「自分流のやり方が最善」という属人化文化が根付いていると、標準化やナレッジ共有を強く求めるCRMは現場に拒絶されます。

また、自分のノウハウをオープンにすると「競争優位が失われる」「評価が下がる」といった心理的抵抗も働きます。

そのため、「本音の営業ノウハウ」はCRMに入力されず、水面下の慣習が温存されつづけるという状態が続きます。

4. サイロ構造と現場・バックオフィスの断絶

製造業では営業、調達購買、生産管理、品質管理など、部門ごとに役割と情報が縦割り(サイロ化)しがちです。

CRMでオープンな情報共有を図ろうにも、「使う人」と「使われる人」の間に温度差や「情報を取られる」という被害者意識が生まれやすいのも特徴です。

現場で交わされている何気ない会話や、突発トラブル対応のナレッジが、CRM上でブラックボックス化してしまう典型パターンです。

現場目線で見る、CRM乖離がもたらす弊害

CRMと営業活動の乖離が進むことで、主に以下のような弊害が出現します。

1. 情報が経営判断に活かされなくなる

CRMが「実態反映しないデータベース」「実態とかけ離れた数字遊び」に堕ちてしまえば、経営層やマネジメント層の戦略的意思決定が誤った方向に導かれかねません。

「顧客の声」「現場の鋭いインサイト」を掴み損ね、市場ニーズの変化やリスクを見誤る危険性が高まります。

2. 属人化・ブラックボックス体質が助長される

システムに頼れないため、結局「できる営業」「現場に強い人材」に負荷が一極集中する構造が常態化します。

結果的に人材育成が進まない、組織学習が不十分になる、特定の社員が抜けた途端組織が機能不全に陥るリスクが残ります。

3. 真の顧客価値向上が実現しない

CRMが「データ管理ツール」に留まると、営業現場でリアルに起きている顧客の課題・活用現場の工夫などが埋もれがちです。

これでは顧客に対する新たな価値提案や、サプライヤーとしての差別化要素につながりません。

結果として「顧客視点のサービス」「現場がワクワクする改善提案」が企業文化として根付きません。

乖離を乗り越えるためのラテラルシンキング的提案

1. CRM設計・運用の段階で現場ダイブを徹底する

経営層や管理部門の「見える化志向」も大切ですが、それと同じくらい「現場の営業が日常的にどんな紙・エクセル・メールをどう利用しているか」「どんな泥臭い活動が商談成立に必要か」現場へのダイブ調査を徹底すべきです。

「なぜ入力が嫌なのか?」「どんな情報に本当に価値を感じているのか?」といったインサイトを拾うことで、本当に使われるCRM設計のヒントが見えてきます。

2. デジタル×アナログの“融合”を追求する

たとえば、現場で紙に記入したメモや営業日報をスマホで簡単に写真添付できる仕組み、現場の生の声を音声で記録・AIで議事録化するなど、「アナログの良さ」をデジタルと融合する仕組みに進化させる発想が必要です。

現場で起こる“気づき”や“工夫”を、手間をかけずに記録・共有できるしくみ設計こそが本質です。

3. CRMを“現場のため”のナレッジ基盤へシフトする

CRMを「管理・統制ツール」にとどめず、「現場営業自身が一番助かるナレッジ源」「後輩や他部門がヒントを得られるIdeabank」として再定義しましょう。

たとえば、
– 商談の裏話、調達先バイヤーの好みや価値観
– 特殊な交渉事例、トラブルから学んだノウハウ
– ジョークやユーモアを交えた“失敗談”や“学び”

など、ドキュメント外の現場知を自由記入・蓄積し、“現場発信型”の受け皿(CRM)へと再設計すれば、利用率と内実が劇的に向上します。

4. 評価指標の見直しと承認文化の醸成

単なる「入力数」「活動数」ではなく、一件一件の営業情報やノウハウの“質”や“現場目線の価値提供度”に着目した評価制度も有効です。

また、優れた現場知の共有、突発トラブルの見事な対応例、バイヤーとの難題解決の事例共有者を月間MVPとして社内表彰する仕掛けも、「現場の知恵をシェアする文化」づくりに役立ちます。

まとめ:両立できる「現場力」と「システム力」へ

CRMと現場営業の乖離は、決して一方通行の責任問題だけではありません。

管理部門・経営層の論理、現場のリアル、そして製造業独自の文化的背景を踏まえたうえで「現場に根付くしくみ」「リアルな知見が循環する場」として、CRMを再設計・リビルドする発想が不可欠です。

アナログな業界風土の強みを活かしつつ、デジタルツールの恩恵も享受するためには、相互理解と工夫を重ねていくしかありません。

製造業でバイヤーを目指す方も、サプライヤーの立場でバイヤーや営業の本音を知りたい方も、単なる“システム化”にとどまらない「現場目線の実践知」を手に入れる意識こそが、これからの競争力につながると考えています。

「現場力」と「システム力」の融合がもたらす新しい地平——それを私たち自身の手で切り拓いていきましょう。

ノウハウ集ダウンロード

製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが重要だと分かっていても、 「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」 そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、 どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを 一緒に整理するご相談を承っています。 まずは現状のお悩みをお聞かせください。

You cannot copy content of this page